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前編
鬼ごっこ
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遅めの昼食を食べると、少しばかり休息をしてから部屋割りを決めた。
今までは二人で一室を使っていたのだが、三人が一緒に暮らすということで、部屋割りを決めようとストゥルティが提案したのだ。
その上で、今まで通り一緒に寝ればいいと。
「真ん中はリュフェにしようぜ」
護衛も兼ねてなら、一番安心できるとストゥルティが言うと、渋い表情を見せる。
「俺は端でいい」
真ん中が嫌いだと言うから、仕方ないと諦めた。どこにいても、彼が一番強いことに変わりはないのだ。ならばいいかと思えた。
元々、隅にいたい奴だということはわかっていただけに、ここはなにも言えない。
「じゃあ、アルトゥスが真ん中だ」
自分は弱いと思っているだけに、真ん中を使うとは決して言わないストゥルティ。
しょうがない奴だな、と笑いながらアルトゥスが了承すれば、どことなくホッとしている様子。
「二人もどっち使うか決めろよな」
残りは両サイドだが、どちらを使っても同じだと気持ちは楽になる。
実際はどこを使っても同じなのだが、気持ち的な問題だ。
二人がどちらを使うかを話す中、自分達もどちらを使おうかと話しだす。
彼の性格からして、静かな部屋がいいだろうから奥かな、とか考えていた辺りで、ウィリディスが声をかけた。
「なぁ、リュツィフェールがラピエールの隣きてくれね?」
「えっ…」
慌てたようにウィリディスの服を掴むラピエール。なにを言いだすのかと思っているのだ。
確かに気になっているが、それだけのこと。恋などではないと思っていた。
「わかった。なら、奥はストゥルティだな」
ラピエールが手前だと聞けば、あっさりと言う。仕事と割り切っているのだろうか、と少しだけ心配になったストゥルティ。
「いいのか?」
だからこっそりと聞いてみれば、構わないと答える。そこに偽りはなく、本当に気にしていないようだからホッとした。
屋敷自体、他には誰もいない。だから手前でも気にしないのかと思うことにする。
(それとも、手前の方がなにかあったら動きやすいとかかな)
奥は行き止まりなだけに、なにかあって侵入者が来た際は、手前の方がすぐに止められるかも、と考え直す。
自分達はここへ警護に来ているのだ。遊びに来ているわけでも、知人に会いに来ているわけでもない。お泊り会ではないのだ。
あまりにも楽しくて、それを忘れそうになっていたと気付く。
(そうだ。主のためにいる天使を護る。それが俺達の仕事だ)
主から直々に受けた仕事なのだ。遊び気分でおろそかにすることは許されない。
「そこまで気を張るなよ。護るのも仕事かもしれないが、相手をするのも仕事だと思っておけばいいだろ。これでふざけても問題ない」
ニヤリと笑いながらアルトゥスが言えば、普段通りでいいのだと言われているみたいで笑う。
さすがに、仕事として遊ぶというのは出来ないが、やることをやっていれば遊んでもいい、とは思えそうだと考えた。
ここは基本的に誰もいないのだから、もう少し気楽でいいかと思い直す。
「とりあえず、荷物置こう。後のことはそれから考えればいいだろ」
二人も部屋の移動をしているなら、荷物を運ぶ手伝いをしなくてはいけない。リュツィフェールが言えば、アルトゥスとストゥルティは動き出した。
再びリビングへ集まる五人。集まってみて、なにをしようと思う。
警護という仕事を受けて来たわけだが、なにかない限りはそう仕事もない。警戒はしていなければいけないが、それ以外はどうするべきか。
来たばかりの自分達でこうなのだから、ずっとここにいる二人は退屈だろう。
三人ともが思ったことだった。
楽園へ入れることは大変名誉なことだと言われているが、本当にそうなのだろうか。本人達は、実は地獄なのではないのかと思う。
(籠の中の鳥だな)
これでは籠の中の鳥だ。リュツィフェールは、楽園の事実を突きつけられたような気分だった。
「いつもはなにしてたんだ?」
いつも通りにしていいと言ってみたところで、特にないのだろうなとも思う。ここには娯楽のようなものはなにもない。
「なにも……」
それに対し、二人は忍び込んでくる友人がいるなど言えないことから、なにもしてないと言う。
「ただぼーっと空を見るとか…そんなんだよな」
「なにもないからね」
あっさりと言うから、マジか、とアルトゥスの声が漏れた。
「耐えらんねぇー!」
そんなのは耐えられないとアルトゥスが叫ぶ。彼はジッとしてることが苦手なのだ
いつもならなにか言ったかもしれないが、さすがにこればかりは同意だというように、リュツィフェールも頷く。これは自分でも耐えられないと。
だからといって、なにか起きてくれなどとも言えない。それはつまり、ここを誰かが襲うということになるからだ。
護ることが仕事とはいえ、だから襲ってくれとは言えない。なにもないほうがいいに決まっているのだから。
「あぁぁぁぁぁ! ルティ! なにか考えろ!」
しかし、いつまでもこの状態を耐えられるわけもなく、アルトゥスが限界だと叫びだす。
「なにかって、ここなにもないんだろ。だったら……鬼ごっこでもする?」
これならなにもなくてもできるけど、と真顔で言うから滑り落ちるアルトゥス。
確かになにもなくてもできるのだが、それは子供がやることだろと言いたい。
「お前なぁ…」
他になにかないのかと言おうとしたが、そこでウィリディスが言った。
「懐かしいなぁ……やるか」
「うん」
えっ、と思ったのは一瞬。ラピエールが同意すればそれは決定だ。
・
今までは二人で一室を使っていたのだが、三人が一緒に暮らすということで、部屋割りを決めようとストゥルティが提案したのだ。
その上で、今まで通り一緒に寝ればいいと。
「真ん中はリュフェにしようぜ」
護衛も兼ねてなら、一番安心できるとストゥルティが言うと、渋い表情を見せる。
「俺は端でいい」
真ん中が嫌いだと言うから、仕方ないと諦めた。どこにいても、彼が一番強いことに変わりはないのだ。ならばいいかと思えた。
元々、隅にいたい奴だということはわかっていただけに、ここはなにも言えない。
「じゃあ、アルトゥスが真ん中だ」
自分は弱いと思っているだけに、真ん中を使うとは決して言わないストゥルティ。
しょうがない奴だな、と笑いながらアルトゥスが了承すれば、どことなくホッとしている様子。
「二人もどっち使うか決めろよな」
残りは両サイドだが、どちらを使っても同じだと気持ちは楽になる。
実際はどこを使っても同じなのだが、気持ち的な問題だ。
二人がどちらを使うかを話す中、自分達もどちらを使おうかと話しだす。
彼の性格からして、静かな部屋がいいだろうから奥かな、とか考えていた辺りで、ウィリディスが声をかけた。
「なぁ、リュツィフェールがラピエールの隣きてくれね?」
「えっ…」
慌てたようにウィリディスの服を掴むラピエール。なにを言いだすのかと思っているのだ。
確かに気になっているが、それだけのこと。恋などではないと思っていた。
「わかった。なら、奥はストゥルティだな」
ラピエールが手前だと聞けば、あっさりと言う。仕事と割り切っているのだろうか、と少しだけ心配になったストゥルティ。
「いいのか?」
だからこっそりと聞いてみれば、構わないと答える。そこに偽りはなく、本当に気にしていないようだからホッとした。
屋敷自体、他には誰もいない。だから手前でも気にしないのかと思うことにする。
(それとも、手前の方がなにかあったら動きやすいとかかな)
奥は行き止まりなだけに、なにかあって侵入者が来た際は、手前の方がすぐに止められるかも、と考え直す。
自分達はここへ警護に来ているのだ。遊びに来ているわけでも、知人に会いに来ているわけでもない。お泊り会ではないのだ。
あまりにも楽しくて、それを忘れそうになっていたと気付く。
(そうだ。主のためにいる天使を護る。それが俺達の仕事だ)
主から直々に受けた仕事なのだ。遊び気分でおろそかにすることは許されない。
「そこまで気を張るなよ。護るのも仕事かもしれないが、相手をするのも仕事だと思っておけばいいだろ。これでふざけても問題ない」
ニヤリと笑いながらアルトゥスが言えば、普段通りでいいのだと言われているみたいで笑う。
さすがに、仕事として遊ぶというのは出来ないが、やることをやっていれば遊んでもいい、とは思えそうだと考えた。
ここは基本的に誰もいないのだから、もう少し気楽でいいかと思い直す。
「とりあえず、荷物置こう。後のことはそれから考えればいいだろ」
二人も部屋の移動をしているなら、荷物を運ぶ手伝いをしなくてはいけない。リュツィフェールが言えば、アルトゥスとストゥルティは動き出した。
再びリビングへ集まる五人。集まってみて、なにをしようと思う。
警護という仕事を受けて来たわけだが、なにかない限りはそう仕事もない。警戒はしていなければいけないが、それ以外はどうするべきか。
来たばかりの自分達でこうなのだから、ずっとここにいる二人は退屈だろう。
三人ともが思ったことだった。
楽園へ入れることは大変名誉なことだと言われているが、本当にそうなのだろうか。本人達は、実は地獄なのではないのかと思う。
(籠の中の鳥だな)
これでは籠の中の鳥だ。リュツィフェールは、楽園の事実を突きつけられたような気分だった。
「いつもはなにしてたんだ?」
いつも通りにしていいと言ってみたところで、特にないのだろうなとも思う。ここには娯楽のようなものはなにもない。
「なにも……」
それに対し、二人は忍び込んでくる友人がいるなど言えないことから、なにもしてないと言う。
「ただぼーっと空を見るとか…そんなんだよな」
「なにもないからね」
あっさりと言うから、マジか、とアルトゥスの声が漏れた。
「耐えらんねぇー!」
そんなのは耐えられないとアルトゥスが叫ぶ。彼はジッとしてることが苦手なのだ
いつもならなにか言ったかもしれないが、さすがにこればかりは同意だというように、リュツィフェールも頷く。これは自分でも耐えられないと。
だからといって、なにか起きてくれなどとも言えない。それはつまり、ここを誰かが襲うということになるからだ。
護ることが仕事とはいえ、だから襲ってくれとは言えない。なにもないほうがいいに決まっているのだから。
「あぁぁぁぁぁ! ルティ! なにか考えろ!」
しかし、いつまでもこの状態を耐えられるわけもなく、アルトゥスが限界だと叫びだす。
「なにかって、ここなにもないんだろ。だったら……鬼ごっこでもする?」
これならなにもなくてもできるけど、と真顔で言うから滑り落ちるアルトゥス。
確かになにもなくてもできるのだが、それは子供がやることだろと言いたい。
「お前なぁ…」
他になにかないのかと言おうとしたが、そこでウィリディスが言った。
「懐かしいなぁ……やるか」
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えっ、と思ったのは一瞬。ラピエールが同意すればそれは決定だ。
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