堕天使の愛

朱璃 翼

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前編

共同生活開始3

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 棚を移動したあと、終わったと大の字になる姿を見ながら、リュツィフェールが呆れたように見る。

「まったく…情けない。こう見えても強いから、警護は安心していい」

 顔合わせのときといい、こんな姿ばかりを見せている気がして、警護は問題ないと言う。

 実力だけはある。そこで、わざと実力だけと言うからストゥルティは笑った。

「大丈夫。リュフェがいれば問題ないから。アルトゥスはね、実力だけしか当てにしちゃだめ」

「おい! なに言ってんだよルティ!」

 抗議するように怒鳴れば、ストゥルティは笑うだけ。怒鳴っているだけで、彼が本気で怒っているわけではないからだ。

 本気で怒っていたら、今頃は黒焦げになっている。アルトゥスは火を使うことが得意だから。

「ほら、飯にしよう。食えないものとかあるか?」

 作ると言われてしまえば、ラピエールとウィリディスが驚いたように見る。

「俺達、一人で暮らしてるからな。一通りのことは出来るさ」

 そうしなければ生きていけなかった、とはさすがに言えなかった。

 簡単なものならすぐに作れると、リュツィフェールが厨房へ向かう。

「ルティも強いの?」

 待っている間、二人はストゥルティを捕まえて質問責めにしようと決めたようだ。

「俺? この二人に比べたら弱いよ」

 なんで警護に選ばれたんだろう、とぼやくように言うが、三枚羽根の辺り普通ではないはずだと、籠の中の鳥でもわかる。

 それとも、能力と翼は関係ないのだろうか。

「あー、それが気になる感じ?」

「あ、うん」

 察したストゥルティが、翼のことかと苦笑いを浮かべる。

「強いから三枚羽根なのかと思ってたぜ」

 天使の間では、翼の枚数が実力だと思っているのが当たり前。原因として、翼の多い天使は強い天使が多いからだ。

「俺の場合、たぶん血の問題かな」

「家系的なものか? そっか…必ず強いってわけじゃねぇのか」

 もしもそうなら、と思っていた。ここから連れ出してくれるかもしれないと。

(あいつなら……)

 必ずここから連れ出してくれる。そう思いたかったのだ。

「ルティだって十分強い。それに翼が関係してるかは、さすがにわからないが」

 だから安心しろとリュツィフェールが言う。その手には簡単に作ったというお昼が。

「誰かがバカでかい力を持ってるから、強いとか思えねぇんだろ」

 食事の匂いに誘われ、寝転んでいたアルトゥスがやってくれば、なるほどと二人は頷く。

 翼の枚数に力が関係するなら、リュツィフェールがこの中で一番強いことになる。一緒にいれば、自分が弱いと思ってしまうかもしれない。

「俺から見れば、アルトゥスも同じだけど…」

「ん? そうか?」

 それほどでもないだろ、と言うから、彼もリュツィフェールといることで、普通とは感覚が違うのかもと思うことにした。

「とりあえず、飯にしよう」

 お腹が空いたと言えば、何事もないかのように座るアルトゥス。

 この中で唯一、己がもつ力に関してなにも気にしないのがアルトゥスだった。

 そのため、この会話を内心複雑な気分でしていたリュツィフェールやストゥルティと違い、世間話のようにしか思っていない。

 並べられた食事は、パンにハムや野菜を挟んだものにスープ。それだけだが、二人にとってはすごいものだと思えた。

「大丈夫だったか?」

 散々にこき使ったリュツィフェールが、今更のように掃除のことを問いかけてくるから、ラピエールは笑う。

「大丈夫だよ。掃除なんて初めてしたから、楽しかった」

「俺も、楽しかったな。必要最低限しかやらなかったし」

 この一言で、なぜ埃だらけだったのか理解する。

 ウィリディスだけが掃除をしていたからだ。一人では必要最低限しかできなくて当たり前というもの。

「これからは毎日するぞ」

 当然のことだと言えば、抗議するように声を上げたのはストゥルティだ。

「人手が足りませーん」

 さすがにこの広い屋敷を毎日は大変だと訴えてみたが、リュツィフェールが一睨みで黙らせる。

 その姿を見ながら、ラピエールとウィリディスは顔を見合わせて笑った。なにもかもが楽しくて仕方ないのだ。これほどに刺激的な一日は、今まで過ごしたことがなかったから。

 これなら、これからの日々も期待できると思ったほどだった。







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