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前編
共同生活開始2
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ガックリとうなだれるアルトゥスを離すと、まずは掃除道具はどこかと問いかけてくる。
けれど、二人がそれを知っているわけがない。
「だから、この状態なんだな」
ため息をつきながら屋敷の中を探し回る。
本来なら、掃除や料理などをする者がいたはず。いつかは主の伴侶となる天使に、そのような真似をされるわけがないからだ。
けれど、なにかがあって二人がすべてを追い出してしまった。
結果として、どこになにがあるのかもわからない状態になってしまったのだろう。
(まったく掃除をしていないわけじゃないから、可能な限りでやっていたのか)
それとも、誰かが強制的に清掃だけしに来ていたのかもしれない。と考えてから、それならもっときれいかと思い直した。
この状態からして、おそらく最低限の掃除をしているだけなのだ。自分達が生活できればそれでいいといったところ。
(もしかしたら、掃除の仕方を知らないだけか)
なにもしなくていいのが楽園だ。知らない可能性もあるな、と思った辺りで目当ての掃除道具を見つけ出した。
その後は言うまでもなく、全員で大掃除となった。ラピエールとウィリディスも巻き込んでだ。
さすがにこんなことをさせてもいいのかと、ストゥルティはハラハラしながら掃除をしていた。誰かに見られたら、怒られるのではないのか。
なにせ、楽園の天使は主と同じという扱いなのだ。
「ラピエール、さぼるな!」
「はーい」
それなのに、完全にこき使っている。容赦なく掃除させているのだ。
これは神に掃除をさせているのと変わらない。なんてことをさせているのか、と叱りを受けて当然のこと。
「ウィリディス! まだそこに埃がある!」
「お、おう…」
頼むから誰もこないでくれ、と願うことしかストゥルティにはできなかった。見られたら首が飛ぶかもしれないと。
(あ、でも……リュツィフェールなら、それすらどうにでもできるかもしれないか)
六枚の翼を持つだけあって、彼の強さは計り知れないと知っている。付き合いはそれなりに長いが、本気になった姿を見たことがないのだ。
掃除の鬼と化したリュツィフェールに、もうなにも言うまいとストゥルティは決める。彼の場合、なにかあってもどうにかするだろうと。
むしろ、どうにかしてくれという気持ちの方が強い。
「アルトゥス! 掃除した端から汚すな!」
「えっ…アハハ。わりぃわりぃ」
別に汚しているわけではないのだが、なにを汚しているように見えているのか。
不思議そうにウィリディスは見ている。なにかごみでも落としたのだろうかと。
「なぁ……リュツィフェールって、もしかしなくてもすっげぇきれい好き?」
「まぁ、な…」
こっそりとストゥルティに問いかければ、なんともいえない表情で答える。
もしかしなくても、とてつもなくきれい好きなのがリュツィフェールなのだ。埃ひとつ許さないほどに。
(一緒に暮らしてたとき、苦労したもんな)
左程長くはないが、一時ひとつ屋根の下で暮らしていたことがある。
そのときもこのような感じで、とにかく掃除ばかりしていた記憶しかない。お陰で掃除は得意になったかもしれない。
雑巾を片手に掃除している姿は、なぜか生き生きとしている二人。
「ウィリディス、やっぱ楽しくなったね!」
「そうだな」
そんな二人を見ていると、まぁ悪くないのかと思う。二人が楽しんでいるなら、やらせていることはまずいかもしれないが、すべて悪いわけではないと思えるのだ。
「アルトゥスー!」
「うわっ……ちょっ…ぎゃぁぁぁぁぁ!」
どうやらリュツィフェールが満足する働きではなかったよう。
気付けば羽交い絞めにされているアルトゥスに、二人とも笑い転げる。
(こんなんで、大丈夫なのだろうか)
本気で心配になってきたストゥルティ。主から直に頼まれた仕事だというのに、仕事をしているようには見えない。
自分でもそう思うのだから、誰かが見たら同じように思うだろう。お前ら、なに遊んでいるんだと言われでもしたら、返す言葉もない。
「安心しろよ。ここ、誰もこねぇって」
「僕達が追い出したからね」
そんな考えに気付いたのか、二人は笑いながら言った。だから問題ないと。
「ふぅ…」
無駄に広い屋敷。部屋数などは多くないのに、なぜこんなに広いのかと言いたくなったほどだったが、なんとか掃除が終わった。
一息ついた頃には、すでに昼も過ぎていて。
「お腹空いた…」
「だな。飯にしようぜ」
ラピエールとウィリディスは空腹を感じていた。同意するようにストゥルティも頷けば、三人の視線はリュツィフェールへ向けられる。
なにせ、この掃除はすべて彼が主導権を握っているのだ。彼がまだ汚いと判断したら、おそらくご飯はまだ先になるだろう。
「リュツィフェール…もう勘弁しろって…」
視線の先では、掃除ではなく力仕事のすべてをやらされたアルトゥスがへばっていた。
いくらなんでも、力仕事を一人でやるのは疲れるというもの。
「最後にこれをやったらいいぞ」
この棚を戻すので最後だと言うから、なにか言いたげに見たのは一瞬のこと。すぐさま了承したと動き出す。
これ以上は怒らせないようにしようと思ったのだ。力関係で言えば、自分より彼の方が強いとわかっている。今は逆らえないという判断だ。
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けれど、二人がそれを知っているわけがない。
「だから、この状態なんだな」
ため息をつきながら屋敷の中を探し回る。
本来なら、掃除や料理などをする者がいたはず。いつかは主の伴侶となる天使に、そのような真似をされるわけがないからだ。
けれど、なにかがあって二人がすべてを追い出してしまった。
結果として、どこになにがあるのかもわからない状態になってしまったのだろう。
(まったく掃除をしていないわけじゃないから、可能な限りでやっていたのか)
それとも、誰かが強制的に清掃だけしに来ていたのかもしれない。と考えてから、それならもっときれいかと思い直した。
この状態からして、おそらく最低限の掃除をしているだけなのだ。自分達が生活できればそれでいいといったところ。
(もしかしたら、掃除の仕方を知らないだけか)
なにもしなくていいのが楽園だ。知らない可能性もあるな、と思った辺りで目当ての掃除道具を見つけ出した。
その後は言うまでもなく、全員で大掃除となった。ラピエールとウィリディスも巻き込んでだ。
さすがにこんなことをさせてもいいのかと、ストゥルティはハラハラしながら掃除をしていた。誰かに見られたら、怒られるのではないのか。
なにせ、楽園の天使は主と同じという扱いなのだ。
「ラピエール、さぼるな!」
「はーい」
それなのに、完全にこき使っている。容赦なく掃除させているのだ。
これは神に掃除をさせているのと変わらない。なんてことをさせているのか、と叱りを受けて当然のこと。
「ウィリディス! まだそこに埃がある!」
「お、おう…」
頼むから誰もこないでくれ、と願うことしかストゥルティにはできなかった。見られたら首が飛ぶかもしれないと。
(あ、でも……リュツィフェールなら、それすらどうにでもできるかもしれないか)
六枚の翼を持つだけあって、彼の強さは計り知れないと知っている。付き合いはそれなりに長いが、本気になった姿を見たことがないのだ。
掃除の鬼と化したリュツィフェールに、もうなにも言うまいとストゥルティは決める。彼の場合、なにかあってもどうにかするだろうと。
むしろ、どうにかしてくれという気持ちの方が強い。
「アルトゥス! 掃除した端から汚すな!」
「えっ…アハハ。わりぃわりぃ」
別に汚しているわけではないのだが、なにを汚しているように見えているのか。
不思議そうにウィリディスは見ている。なにかごみでも落としたのだろうかと。
「なぁ……リュツィフェールって、もしかしなくてもすっげぇきれい好き?」
「まぁ、な…」
こっそりとストゥルティに問いかければ、なんともいえない表情で答える。
もしかしなくても、とてつもなくきれい好きなのがリュツィフェールなのだ。埃ひとつ許さないほどに。
(一緒に暮らしてたとき、苦労したもんな)
左程長くはないが、一時ひとつ屋根の下で暮らしていたことがある。
そのときもこのような感じで、とにかく掃除ばかりしていた記憶しかない。お陰で掃除は得意になったかもしれない。
雑巾を片手に掃除している姿は、なぜか生き生きとしている二人。
「ウィリディス、やっぱ楽しくなったね!」
「そうだな」
そんな二人を見ていると、まぁ悪くないのかと思う。二人が楽しんでいるなら、やらせていることはまずいかもしれないが、すべて悪いわけではないと思えるのだ。
「アルトゥスー!」
「うわっ……ちょっ…ぎゃぁぁぁぁぁ!」
どうやらリュツィフェールが満足する働きではなかったよう。
気付けば羽交い絞めにされているアルトゥスに、二人とも笑い転げる。
(こんなんで、大丈夫なのだろうか)
本気で心配になってきたストゥルティ。主から直に頼まれた仕事だというのに、仕事をしているようには見えない。
自分でもそう思うのだから、誰かが見たら同じように思うだろう。お前ら、なに遊んでいるんだと言われでもしたら、返す言葉もない。
「安心しろよ。ここ、誰もこねぇって」
「僕達が追い出したからね」
そんな考えに気付いたのか、二人は笑いながら言った。だから問題ないと。
「ふぅ…」
無駄に広い屋敷。部屋数などは多くないのに、なぜこんなに広いのかと言いたくなったほどだったが、なんとか掃除が終わった。
一息ついた頃には、すでに昼も過ぎていて。
「お腹空いた…」
「だな。飯にしようぜ」
ラピエールとウィリディスは空腹を感じていた。同意するようにストゥルティも頷けば、三人の視線はリュツィフェールへ向けられる。
なにせ、この掃除はすべて彼が主導権を握っているのだ。彼がまだ汚いと判断したら、おそらくご飯はまだ先になるだろう。
「リュツィフェール…もう勘弁しろって…」
視線の先では、掃除ではなく力仕事のすべてをやらされたアルトゥスがへばっていた。
いくらなんでも、力仕事を一人でやるのは疲れるというもの。
「最後にこれをやったらいいぞ」
この棚を戻すので最後だと言うから、なにか言いたげに見たのは一瞬のこと。すぐさま了承したと動き出す。
これ以上は怒らせないようにしようと思ったのだ。力関係で言えば、自分より彼の方が強いとわかっている。今は逆らえないという判断だ。
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