堕天使の愛

朱璃 翼

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前編

堕天宣告

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 急に集められた一同。動けないウィリディスの元にラピエールを付かせ、しっかりと結界を張ったリュツィフェール。

 どうしたのか、と不思議そうに見るストゥルティとルーメン。強制的に引き離されて機嫌の悪いアルトゥス。

 早くしろと鋭い視線が訴えていて、正直なところルーメンは逃げ出したいほどだ。

「俺は、堕天する」

「なっ…」

 突然の堕天宣告に、言葉を失うのはストゥルティ。堕天使になるということは、主に反逆する、または反逆行為をするということだ。

 急にどうしたのかと視線を向ける。説明してくれというように。

「ラピエールを…ここに置いておくわけにはいかない。だから、連れ出す。これは完全に反逆行為になるだろ」

 だから堕天使になると言われれば、それまで不機嫌にしていたアルトゥスが表情を変える。

 ここに置いておけないということは、ウィリディスも同じではないのかと、真剣な表情を浮かべた。同意するように頷く姿に、そうかと小さく呟く。

「なら、俺もついていく」

 リュツィフェールがこう判断するほど、楽園は安全ではないということになる。そのような場に、ウィリディスを置いておけないのは当然のことだ。

 二人の間で言葉以上のやり取りが行われると、見守っているだけのストゥルティが説明をしてくれとリュツィフェールを見る。

 自分には事情がわからないと伝えれば、同じように知りたいとルーメンも言う。ウィリディスが関わるなら、知りたいのだと。

「知れば巻き込まれる。それでも聞くか? 天界にはいられないぞ」

 楽園は形式上、最高神である主のためにある。ここにいる天使は、主のための天使。ある意味で、主に献上された天使となるのだ。

 連れ出せば罪人となり、主のものに手を出せば反逆の扱いだろう。堕天使になるしか道がなく、天界にいることはできない。

「構わない。俺は、ずっとリュフェとアルトゥスと過ごしてきた。これからも、ずっと二人といる。帰る場所なんてないし、ここに一人でいたってしょうがねぇじゃん」

 置いていくなよ、と言われれば、リュツィフェールとアルトゥスがハッとしたように息を呑む。

 ここ最近、ずっと自分達の大切な天使にばかり時間を費やしていたが、ストゥルティには他に居場所がないのだ。

 置いていけるわけがない。彼は連れていかなくてはいけないと思い直す。

 そうなってくると、こちらだとルーメンへ視線が向く。

「ウィリディスが関わることなら、俺は知りたい。家出当然で出てきちまったし、今更帰れなくても困らない」

 そりゃ、母親は心配してるかもしれないが、と小さく呟く。それでも、母親よりもウィリディスが大事なのだ。

 今はそれしか言えないと言われれば、アルトゥスがため息をつく。

 目の前にいる天使は、間違いなく自分の生まれを知らない。知らないが、周囲は知っていたのではないか。

 だとしたら、周囲はこの幼い天使を蔑んでいた可能性がある。そんな中で、ウィリディスだけが支えだったのかもしれない。

「仕方ねぇ。ついでに見てやるさ」

 なにかあった際、ストゥルティだけでは無理となれば、自分がルーメンも見るとアルトゥスが言った。

 ウィリディスに必要な存在である以上、保護するのは自分だと思ったのだろう。なるべくストゥルティに見てもらいたいと視線を向ければ、わかっていると頷く。

 二人より劣るが、それでも頼るつもりはないと思っているのだ。自分の身は自分で護るし、ルーメンも受け持つと。

 全員の覚悟が決まれば、まずは現状だとリュツィフェールが話しだす。

「アルノームが楽園について調べ上げた。おそらくだが、主の宮殿で働く者はこの事情を把握していると思われる」

 知らないのは、護衛に任命されたばかりの自分達だけだろう。もしかしたら、任命の際に本来は説明されたのかもしれない。

 けれど、されなかった。自分達も排除したかったから。

「この楽園は、名目上は主の子を産む天使を集めている。主に献上されたという扱いだ」

 だが、実際には主に献上されているわけではない。主の子を産むための天使ではなかったのだ。

「本来の役割は、悪魔に捧げること。楽園にいる天使は、悪魔に好き勝手していいという意味だ」

「なっ…ふざけんじゃねぇ! 生贄だっていうことか!」

 どうして悪魔とそういうことになっているのかわらないが、なにかがあって協定が交わされている。楽園に天使を用意するから、他には手を出すなという協定が。

「わざと、悪魔が入りやすいようになっているらしい。つまり、穴だらけということだ」

 悪魔にとっては、とリュツィフェールが言えば、向こうの移動手段に関係があるのかとストゥルティが考え込む。

 根本的に見直さなくてはいけないな、と言うから、リュツィフェールも頼むと言う。わかれば対策は取れるが、見つけるのはストゥルティの方が早い。

「ストゥルティが見つけてくれれば、俺がすべて対応する。それまでは、絶対に結界を維持しろ。どんなときでも、あの二人だけにするな」

 二人には戦う力がないのだ。もしも二人だけのときに襲われれば、今度こそ壊れてしまうかもしれない。

「あと、念のためにルーメンも一人にはなるな。お前は未成年だから、この楽園にいる以上は狙われるかもしれない」

 楽園は未成年の天使しかいない場所。つまり、未成年のうちに襲われて死んでいるのか、成人した天使は問答無用で悪魔に渡されているのかだ。

「確認したところ、ラピエールが来た当初にいた天使は、成人と同時に襲われて自害したらしい。以降、楽園から刃物が消えたということだったから、自害はそれが初めてなのだろうが」

 ここにいるだけで、悪魔には襲っていいという対象になっている可能性が高いと言われれば、ストゥルティが傍にいると断言した。

「俺達はこの成りだからな。勘違いはされねぇもんな」

 さすがに男を襲う趣味はないだろ、と笑いながら言うアルトゥスに、そうだなと返すリュツィフェール。



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