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前編
失われた記憶と悪夢
しおりを挟む夢の中で、いつも襲われたときのことを見るウィリディス。悪魔の手が身体を弄び、嫌悪感に襲われ続ける。
「やめ…ろっ…ハァハァ…やめっ…」
触るなと叫び続けても、夢の中に救いはやってこない。散々に身体を撫でまわされ、女の部分を弄られる。
「くっ…あっ…」
なにかを擦りつけられ、いつも挿れられる寸前で目が覚めるのだ。まるで狙ったような目覚めが、ウィリディスを救ってくれる。
だから気付かなかった。この夢がただの夢ではないということに。本人も、周囲も気付くことができなかったのだ。
「あっ…あぁ…」
この日も、夢の中で悪魔が襲いかかってくる。嫌な笑い方をしながら、いつものように身体を撫でまわす。
もう少し経てば目が覚めるとわかっていても、たとえ夢の中であっても不快だ。アルトゥス以外の男に触れられるのなんて、冗談じゃないと言いたくなる。
「あっ…くっ……」
今の自分にできるのは、相手を喜ばせないようにすることだけ。声を出さないように耐え続けるのだ。
少し前までなら、あっという間に崩れ落ちていたはずだ。しかし、今のウィリディスはアルトゥスと両想いになれたことで、簡単に精神面が崩れることはない。
このままでは落とせない。わかったからだろうか。悪魔も手段を変えることにした。
「くぅっ…」
『ククッ。毎晩抱かれる気分はどうだ?』
夢と思い込む愚か者に、現実を突きつけてやろうと話しかける。そうすることで、この夢がただの夢ではない、とウィリディスに知らせたのだ。
「どういう、意味だ…」
話しかけられるとは思わず、驚いたように見上げる。
ニヤリと笑った悪魔の目が、赤く輝きながら獲物を捕らえた瞬間だった。このまま落としてやると、覆いかぶさる。
『直接抱きに行こうにも、邪魔な天使がずっと傍にいる。しかも、約束の入り口がほとんど抑えられてしまった』
楽園に入るための入り口が、使えなくなってしまったとぼやくように言う悪魔。なにを言っているのだ、とウィリディスは気持ちが揺らぐ。
それでは、自分達は主のために捧げられた天使ではなく、悪魔に捧げられたということではないのか。
信じたくない、と感情が揺らぎだす。主に捧げられたということも不快だったが、それでも最高神の子を産むというのを名誉だと言うのは、まだ理解できていた。
自分達の気持ちを無視していることを除けば、確かに名誉あることなのだ。
だが、楽園の真実が悪魔に捧げられるということだったとしたら、無機質な護衛や世話係に納得できてしまう。
「くっ…はっ…あっ…」
今までと違う動きを始めた悪魔に、これは夢であって夢ではない。夢の中で自分はずっと悪魔に襲われていたのだと知る。
『未成年の天使は…本当に無防備だな。そして、成人して日が浅い天使は、悪魔を知らなすぎる』
このような手があるなど、考えもしなかったのだろうと笑いながら女の部分を弄り続ける悪魔。
『お前はまだ、誰にも抱かれていない。俺は、誰かに抱かれた天使には興味がなくてな。まぁ、最終的には両方欲しいんだが』
耳元で囁かれた言葉に、ウィリディスは目を見開く。どれだけ想っていても、アルトゥスは成人前に手を出したくないという考えだった。
けれど、リュツィフェールはそうではない。ラピエールは抱かれたのだと知り、激しく感情が揺らぐ。
羨ましいと思ってしまう。好きな人に抱いてもらえたことが。抱いてもらいたいと思ってしまった。アルトゥスに、自分も抱かれたいと。
約束はしてくれたが、身体が回復しないウィリディスは、いつ抱いてもらえるのかわからない。
『あの天使が、そんなに羨ましいか……』
「くっ…あっ…やめっ…やめろっ…」
指を入れられ、このままだとやばいと暴れる。夢だが夢ではないとわかれば、今まで途中で目が覚めていたのも悪魔がやっていたことだろう。
ばらしたということは、この悪魔は最後までやる気なのだ。
『やめていいのか?』
急になにを言いだすのかと睨みつける。当然のことだろう。誰が悪魔にやられて喜ぶと言うのか。
『目の前にいるのは…誰だ?』
「誰って…」
そんなの決まっているだろうと噛みつきそうになり、ウィリディスは言葉を失う。目の前にいるのは悪魔だ。
ずっと話しかけてきている、この悪魔がいるだけ。
夢の中に悪魔以外が出てきたことはない。いつも同じ悪魔に身体を撫でまわされる。助けてと願ったところで、他の誰かがいることはないのだ。
「アル…トゥス……」
違う。絶対に違うとわかっていても、目の前にいるのはアルトゥスだと思ってしまった。
『本当に…未成年の天使は無防備だな……この程度の術にかかるなど』
怪しく光る悪魔の瞳。しっかりと目が合い、簡単に幻を見せることができたのだ。
もちろん、ラピエールが抱かれたという情報を流したのも、ここがただの夢ではないと気付かせたのも、ウィリディスを落とすため。
アルトゥスと想いを重ねたことで気持ちが強くなったから、この状態では術にかけられない。揺らげばかけやすくなる。
「あぁぁぁっ!」
このときを待っていた、と笑いながら挿れる悪魔。まずは夢の中。非現実でこの天使を手に入れよう。最終的には、現実で手に入れるのだ。
「あぁっ…んっ…はっ…」
完全に術へハマってしまったウィリディスは、なにも考えることができずに快楽を受け入れてしまう。
なにしろ、アルトゥスという幻に抱かれているのだ。拒絶するわけがない。
『完全に捕らえた。次は、もう一人の天使か』
あちらを手に入れるときが楽しみだ、と笑いながら、悪魔はウィリディスを抱き続けた。
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