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前編
ストゥルティとルーメン3
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スッキリしたストゥルティはルーメンを抱えて湯に浸かり、身体を温めてから風呂を出た。身体を拭いて着替えると、どこかムッとしたように見る。
「男に戻ってるし」
まだ身体を拭いているルーメンの身体は、少しは丸みを帯びた男の身体に戻っていた。あっさりと戻ってしまう身体は、性別の決まっていない未成年ならではだ。
これだから、と不貞腐れるストゥルティを見て、困ったような表情を浮かべるのはルーメン。そのようなことを言われたって、と思っている。
「ルティの前だけでいいって言ったじゃん」
さすがに、あの姿を他のメンバーには見せたくない。どれだけストゥルティが大丈夫と言っても、似合わないと思ってしまう。
笑われると思えば、無理だとルーメンは視線を逸らす。
「はぁ…あの二人は……いや、ラピエールとウィリディスが気になってるのか」
「まぁ……そうなんだけど……」
二人は気にしないだろうとわかっていても、どうしても勇気がでないのだと言われてしまえば、わかったと頷く。
今までそうやってきたのだから、簡単には変わらないだろう。こればかりは、気長に待とうと思うことにした。
一先ず、自分の前だけ見せられるようになるならいいかと思う。少しばかり、自分が特別なような気がして、嬉しかったりもした。
「順番が逆になったけどさ、俺と一緒になってくれる?」
抱いてから言うことじゃないとわかっているのだが、この気持ちには嘘がない。受け入れられないかも、と思っていたのが嘘のように、今は大切だと思っている。
「悪魔を追いかける勇ましいルーメンも、俺の前だけで見せてくれる女のルーメンも、どっちも好きだよ」
それは、結果としてルーメンがどちらを選んでも構わないという意味。どうしても似合わないという考えを捨てられなかったら、そのときは男になったルーメンでも一緒にいたい。
言葉を正確に察したルーメンが驚いたように見る。ストゥルティは男なのだから、それでいいのかと思ったのだ。
「どうせさ、俺達堕天使になるんだぜ。性別なんて気にしても仕方ねぇじゃん。それに、神は男と女でなければいけない、なんて決め事は作ってないし」
一応、天使としても決まりではない。仮にそのような決まりがあったとしても、自分達は堕天使になると決めたのだからどうでもいいことだ。
神の決めたことに従う必要など、どこにもないのだから、どちらになっても構わないとストゥルティは言い切った。
確かに、と頷くルーメン。自分は神のためにと楽園へ送り込まれた天使ではないし、神もそのような決まりは作っていない。
もっと言ってしまえば、仮に男と女でなければいけないという決まりがあったとして、性別を選ばないという選択肢もある。
珍しいことではあるのだが、未成年の天使は性別を選ばないということもできるのだから、最悪はそれでもいいかと思ってしまう。
少し気持ちが落ち着けば、答えなどひとつしかない。自分も彼に惹かれ始めていたところだ。
「俺、このまま変われないかもしれない。だから、女になれないかもだけど、ルティといたい」
なによりも、同じ悪魔とのハーフというのは助かることだと思う。一人ではなにかあったときに対処できないかもしれないが、二人ならどうにかできるだろう。
そういった意味でも心強いと思うのだ。
「ルーメンが男になったときのことも考えて、後ろも使えるようにした方がいいのか……」
「ルティ!」
ぼそりと呟かれた言葉に、顔を真っ赤にして殴り掛かるルーメン。なんてことを言うのだと思ったが、事実だと思ってから頭を振った。
なにを考えているのか、と思ったのだ。
「ほら、リュフェが作ったご飯でも食べよう」
用意してくれているはずだから、とストゥルティが言えば、なにも食べていなかったと思いだしたルーメンのお腹が鳴る。
お昼を食べる前に悪魔を追いかけて、逃した分も挽回するぞと穴を探し出した。そのまま今に至ることから、お腹が空いているのは当然のことだ。
「リュツィフェールのご飯、すっごく美味しい」
「そうだろ。たぶん、食材がいいから磨きがかかったんだろうな。ほら、俺達は忌み子だったからさ。まともな食材とか手に入らなくて」
それを工夫して食事にしてくれていたのがリュツィフェールだと自慢げに言う。
一体なにを食べていたのだろうかと思うと同時に、母親が受け入れてくれていた自分はいいほうだったのだと痛感する。
これでよく、自分を受け入れてくれたなとすら思ってしまった。
(俺とルティは、同じで同じじゃない)
少なくとも、母親と過ごしている時間は穏やかだったから。食事に困ったこともなかった。
もしかしたら、自分が知らない事実があるのかもしれないが、少なくとも母親は見せることがなかったのだ。その母親を、裏切ってしまったのかもしれないと、少しばかり落ち込む。
考えていることに気付いたのか、ストゥルティは優しく抱きしめた。堕天使になることから、会いに行くこともできないのだ。
「いいお母さんだったんだな」
「うん…。俺が悪魔とのハーフとわかれば、すごくいいお母さんだったってわかる。天使と悪魔の夫婦なんていないってことはさ、きっと無理矢理とかだったんだよな」
それでも、自分を嫌うことなく育ててくれていたということは、今考えればありがたいことだとわかる。
家出同然で出てきてしまったが、ルーメンは母親を嫌っていたわけではない。ただ、周囲から疎まれていた中でウィリディスだけが受け入れてくれていたことから、追いかけてしまっただけ。
「今度、ルーメンの母親のこと教えてくれよ。俺みたいなハーフを受け入れてくれた人なら、知りたいな」
もっと早く出会えていたら、挨拶ぐらいは行けたなと笑いながら言えば、ルーメンも会わせたかったと答えた。
(結果としては、きっといいことだったはず。周囲の奴らから嫌われてたし)
自分がいなくなったことで、母親もそういったのから冷たく見られなくなるはずだ。そんなことを考えながら食事を食べ始めてすぐ、アルノームが慌てたようにやってきた。
アルトゥスが悪魔を斬り捨てたこと。穴が使えなくなったことで、約束が違うと問題になってしまったと。
反逆者として通達が出回っているから、早く逃げろと言われたのだ。
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「男に戻ってるし」
まだ身体を拭いているルーメンの身体は、少しは丸みを帯びた男の身体に戻っていた。あっさりと戻ってしまう身体は、性別の決まっていない未成年ならではだ。
これだから、と不貞腐れるストゥルティを見て、困ったような表情を浮かべるのはルーメン。そのようなことを言われたって、と思っている。
「ルティの前だけでいいって言ったじゃん」
さすがに、あの姿を他のメンバーには見せたくない。どれだけストゥルティが大丈夫と言っても、似合わないと思ってしまう。
笑われると思えば、無理だとルーメンは視線を逸らす。
「はぁ…あの二人は……いや、ラピエールとウィリディスが気になってるのか」
「まぁ……そうなんだけど……」
二人は気にしないだろうとわかっていても、どうしても勇気がでないのだと言われてしまえば、わかったと頷く。
今までそうやってきたのだから、簡単には変わらないだろう。こればかりは、気長に待とうと思うことにした。
一先ず、自分の前だけ見せられるようになるならいいかと思う。少しばかり、自分が特別なような気がして、嬉しかったりもした。
「順番が逆になったけどさ、俺と一緒になってくれる?」
抱いてから言うことじゃないとわかっているのだが、この気持ちには嘘がない。受け入れられないかも、と思っていたのが嘘のように、今は大切だと思っている。
「悪魔を追いかける勇ましいルーメンも、俺の前だけで見せてくれる女のルーメンも、どっちも好きだよ」
それは、結果としてルーメンがどちらを選んでも構わないという意味。どうしても似合わないという考えを捨てられなかったら、そのときは男になったルーメンでも一緒にいたい。
言葉を正確に察したルーメンが驚いたように見る。ストゥルティは男なのだから、それでいいのかと思ったのだ。
「どうせさ、俺達堕天使になるんだぜ。性別なんて気にしても仕方ねぇじゃん。それに、神は男と女でなければいけない、なんて決め事は作ってないし」
一応、天使としても決まりではない。仮にそのような決まりがあったとしても、自分達は堕天使になると決めたのだからどうでもいいことだ。
神の決めたことに従う必要など、どこにもないのだから、どちらになっても構わないとストゥルティは言い切った。
確かに、と頷くルーメン。自分は神のためにと楽園へ送り込まれた天使ではないし、神もそのような決まりは作っていない。
もっと言ってしまえば、仮に男と女でなければいけないという決まりがあったとして、性別を選ばないという選択肢もある。
珍しいことではあるのだが、未成年の天使は性別を選ばないということもできるのだから、最悪はそれでもいいかと思ってしまう。
少し気持ちが落ち着けば、答えなどひとつしかない。自分も彼に惹かれ始めていたところだ。
「俺、このまま変われないかもしれない。だから、女になれないかもだけど、ルティといたい」
なによりも、同じ悪魔とのハーフというのは助かることだと思う。一人ではなにかあったときに対処できないかもしれないが、二人ならどうにかできるだろう。
そういった意味でも心強いと思うのだ。
「ルーメンが男になったときのことも考えて、後ろも使えるようにした方がいいのか……」
「ルティ!」
ぼそりと呟かれた言葉に、顔を真っ赤にして殴り掛かるルーメン。なんてことを言うのだと思ったが、事実だと思ってから頭を振った。
なにを考えているのか、と思ったのだ。
「ほら、リュフェが作ったご飯でも食べよう」
用意してくれているはずだから、とストゥルティが言えば、なにも食べていなかったと思いだしたルーメンのお腹が鳴る。
お昼を食べる前に悪魔を追いかけて、逃した分も挽回するぞと穴を探し出した。そのまま今に至ることから、お腹が空いているのは当然のことだ。
「リュツィフェールのご飯、すっごく美味しい」
「そうだろ。たぶん、食材がいいから磨きがかかったんだろうな。ほら、俺達は忌み子だったからさ。まともな食材とか手に入らなくて」
それを工夫して食事にしてくれていたのがリュツィフェールだと自慢げに言う。
一体なにを食べていたのだろうかと思うと同時に、母親が受け入れてくれていた自分はいいほうだったのだと痛感する。
これでよく、自分を受け入れてくれたなとすら思ってしまった。
(俺とルティは、同じで同じじゃない)
少なくとも、母親と過ごしている時間は穏やかだったから。食事に困ったこともなかった。
もしかしたら、自分が知らない事実があるのかもしれないが、少なくとも母親は見せることがなかったのだ。その母親を、裏切ってしまったのかもしれないと、少しばかり落ち込む。
考えていることに気付いたのか、ストゥルティは優しく抱きしめた。堕天使になることから、会いに行くこともできないのだ。
「いいお母さんだったんだな」
「うん…。俺が悪魔とのハーフとわかれば、すごくいいお母さんだったってわかる。天使と悪魔の夫婦なんていないってことはさ、きっと無理矢理とかだったんだよな」
それでも、自分を嫌うことなく育ててくれていたということは、今考えればありがたいことだとわかる。
家出同然で出てきてしまったが、ルーメンは母親を嫌っていたわけではない。ただ、周囲から疎まれていた中でウィリディスだけが受け入れてくれていたことから、追いかけてしまっただけ。
「今度、ルーメンの母親のこと教えてくれよ。俺みたいなハーフを受け入れてくれた人なら、知りたいな」
もっと早く出会えていたら、挨拶ぐらいは行けたなと笑いながら言えば、ルーメンも会わせたかったと答えた。
(結果としては、きっといいことだったはず。周囲の奴らから嫌われてたし)
自分がいなくなったことで、母親もそういったのから冷たく見られなくなるはずだ。そんなことを考えながら食事を食べ始めてすぐ、アルノームが慌てたようにやってきた。
アルトゥスが悪魔を斬り捨てたこと。穴が使えなくなったことで、約束が違うと問題になってしまったと。
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