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前編
異変2
しおりを挟む気が付けばベッドに寝かされていたウィリディスは、なぜと思いながら起き上がる。確かラピエールとお風呂に入ろうとしていたはず、と思いだす。
「あ、気が付いた?」
「ラピ? 風呂…」
入ろうとしてたよな、と確認すれば、キョトンと首を傾げる、なにを言っているのだろうかと。
「入ったじゃん。どうしたの? 今日のウィリディス、なんか変だよ」
入ったと言われ、なにを言っているのかと言いたくなったのはラウィリディスの方だ。けれど、触れた髪がまだ濡れている。
間違いなくお風呂には入ったようだとわかれば、なぜ忘れてしまったのかと思う。言われた通り、今日の自分はなにかがおかしいと思ってしまった。
「少し休んだら? たぶん、環境とか変わって疲れたんだよ」
色々あったし、と言われれば、そうかもしれないと思う。新しい護衛が来るとなってから、今までにない経験をしている日々だった。
そこから再びなにもない生活に戻ったことで、どこか気が抜けたのかもしれない。少し寝れば、いつも通りの自分に戻るだろう。
横になってチラリと見上げる。それだけで察したようにラピエールが笑う。
「仕方ないなぁ。ウィリディスは寂しがりだからね」
一緒に寝ようと視線だけで言われ、笑いながら布団へ潜り込む。そういえば、リュツィフェール達がいなくなってからも一人で寝ていたな、と思う。
ずっと二人で寝ていたのに、一人で寝るようになったことから、そのままになっていたのだ。それほど待たないだろうけど、それまで一緒に寝ようかなと笑う。
「ねぇ、明日からも一緒に寝ようか」
「俺が一人じゃ寝られねぇみたいじゃん」
拗ねたように言われれば、そうじゃんと笑い飛ばす。初めて楽園に来た日も、枕を持って一緒に寝ようとやって来ただろ、と言われれば、恥ずかしくなったのか布団で顔を隠す。
忘れてくれ、と無言のアピールをされたが、ラピエールは笑うだけ。
「迎えに来たら、アルに言っちゃおうかな」
「やめろよ」
そんな話をするなと膨れると、二人は笑い声を上げた。このまま、迎えがくるまで過ごせると信じながら、眠りにつく。
『失敗したな』
「あっ…くっ…」
悪魔の手がウィリディスの身体を撫でまわす。すっかりと自分の手駒となっている幼い天使は、力が弱いことを除けば悪くないと思っているのだ。
『あと少しで、あの天使も手に入れることができたというのに』
なぜあと一歩というところで自我を取り戻しかけてしまったのか。まだ完全に手駒となったわけではないのかもしれない。
弱い天使だからこそ、簡単だと思っていただけに、自分の計算ミスだなと胸へしゃぶりつく。
「んんっ…あっ…」
吸いついて来る悪魔に、甘い吐息を漏らす。術にハマってしまった幼い天使は、己を愛する天使と思っていると思えば笑えてくる。
「ハァハァ…あっ…あぁっ…」
『フフフフ。お前の中は居心地がいいから、私は嫌いじゃないがな。だが、あの天使は手に入れたい』
相性がいいのかもしれないと囁きかければ、うっとりとした眼差しに悪魔はニヤリと笑った。
夢の中とはいえ、すでにこの天使は手中に収めている。現実で手にするための土台作りをしている段階だが、それもあと少しだと思っていた。
キスをして舌を絡めとると、恋人との行為と思っているウィリディスは積極的に応えていく。結果どのようなことが起きているのかなど、本人は気付いていない。
「んっ…んんっ……」
長いキスに酔いしれているが、それが原因で力を奪われているなどわからないウィリディスが、もっとと求めるように悪魔の舌と絡めにいけば、悪魔はごちそうさまと離れる。
『どうしてほしい?』
もう一人の天使を手に入れるのには失敗したが、自分へ積極的に力を捧げてくれる幼い天使が気に入っていた。その礼ぐらいはしてやろうと、珍しくも思ったのだ。
「太いの、欲しい…」
『どこに?』
「俺の中、早くっ」
限界だから、早く欲しいとねだるウィリディスは、夢の中では快楽を求めることしかできない。自分でなにかを考えることはできず、ただ悪魔の与える快楽を受け入れ、求めるだけ。
「あぁあぁっ!」
力強く挿れられたものに、やっときたと悦ぶ。ずっと待っていたものが与えられ、ただただ悦ぶ姿は未成年の天使ではなく、快楽を知った大人の女性に見えなくもなかった。
夢だが夢ではない。身体に刻まれた快楽は現実であり、悪魔に襲われている自覚がないウィリディスは、幻のアルトゥスとの行為に溺れている。
「あぁっ…はっ…くっ…」
積極的に求め、さらなる深みにハマっていく幼い天使は、抜け出せないところまで堕ちていた。
「あぁぁっ…奥っ…奥がぁっ」
激しく責め立てられ、限界を訴えるウィリディスの身体。強く締め付けられ、悪魔はニヤリと笑う。そろそろいいだろうと思ったのだ。
『受け取るがいい……魔の力を』
「熱いっ…ハァハァ……」
うっとりと感じているウィリディスだが、実際には悪魔から力を抜かれ、悪魔の力を注ぎこまれている。身体と心を蝕んていく悪魔の力に、少しずつ壊れていく。
それこそ、アルトゥスと再会したときには完全に壊れ、誰もわからない状態になるほどだった。
「アルトゥスっ…もっとして…」
しかし、何度も言うようだが本人は悪魔に襲われている自覚がない。だからこそ、自分からもっととねだり、さらに染まっていく。
最悪なことにも、悪循環となっていた。
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