69 / 69
前編
ルーメンの異変2
しおりを挟む悪魔三人から話を聞くのはアルトゥスで、彼はまだ信じられないことからウィリディスを傍に置いている。リュツィフェールにはラピエールと過ごす時間が必要、と部屋に残して移動することにしたのだが、ストゥルティは気になることがある。
それは、追いかける途中から口数が減っていったルーメンの様子だ。何度か問いかけてみたが、なんでもないと答えるだけ。
なにもないはずがないのだ。どうしようかと思えば、アルトゥスが振り返る。
「お前らも休んでていいぞ。ここまで飛びっぱなしだったからな。さすがに未成年は疲れただろ」
自分が信じられないからウィリディスは同行させるが、と言うから、少し考えてわかったと頷く。本来なら一緒にいるべきとわかっているのだが、ルーメンを休ませたいという気持ちが勝った。
確かに、ずっと飛び続けるというのは未成年にはきつかったのかもしれない。ウィリディスは飛行能力が高いことから、自分達についてこられただけのこと。
休ませたらいつものルーメンに戻るかもと思えたのだ。
「でしたら、こちらの部屋を使ってください。客間のひとつです」
近くにあった客間を使っていいとリーネンが言えば、ありがとうとストゥルティは入っていく。
室内に入ると、ルーメンはどこかふらふらと歩いていて、本当に飛び疲れだろうかと心配になる。もっと違う問題が起きているのではないか、と。
怒りで魔の力を発現させていたこともあり、なにか異変が起きているのかもしれない。
(俺でも、成人してからだった。未成年の不安定な状態で起きたから、身体に負担がかかってるとかか?)
言えないのは、本人が理解していないからかもしれないと思えば、困ったなと見る。どういった異変かわからなければ、動くこともできない。
「ルーメン、本当に大丈夫か?」
ベッドへ横になる姿を見て、相当辛いのではないかと近寄る。今はなにが起きているのか聞かなければいけない。
魔の血が起こす問題なら、自分でどうにかできるかもしれないと思っていたし、タイミング的には魔界にいるから手立てがあるかもしれないとも思う。
今しかないのだ。このあとは地上へ戻るのだから。
「言わないと、さすがになにもわからねぇよ」
ウィリディスやラピエールのことがあって、言いだせなくなったのかもしれない。実はずっと不調で、無理をさせていたのかもと反省するストゥルティ。
どれだけ我慢させてしまったのか。頭を撫でながら、ルーメンが話してくれるのを待つ。
なにかが限界に達してしまったのだろう。移動中に異変を感じていたが、本人が言わないなら問題ないと後回しにしてしまった。
ごめんと頭を撫でながら呟けば、ルーメンが見上げる。どこか躊躇っているような、視線を泳がす姿に、話すことを迷っているのかと真っ直ぐに見た。
なにがあっても大丈夫だと伝えるように見ていれば、手が伸びてくる。
「どうした?」
不安なのかと手を握れば、そうではないと振り払い、ストゥルティの手を自分の胸へ持っていく。
次の瞬間、すべてを察したストゥルティがハッとしたように見た。今感じているこれが原因で、ルーメンは体調が悪いのだと理解したのだ。
「いつからだ?」
「……魔界に向かう、途中から」
小さく呟かれた言葉に、口数が減ったあのときかと自分の愚かさに拳を握り締める。ずっと一人で耐えさせてしまった。
わかっていたら、と思うのだが、あの状態で話せるわけがない。自分だけが知ったとしても、アルトゥスには言えなかっただろう。
リュツィフェールがやらかす前に、合流する必要があったから。
ルーメンは身体が常に変化している状態となっていた。本人が望んで変化させているのではなく、勝手になってしまう現象だ。
身体が不安定になり、常に男から女へ。女から男へと変わっていく。勝手になってしまうことから、本人にも負担がかかっていくため、長距離移動もあってルーメンは耐えられなかったのだろう。
未成年の天使がたまになってしまう現象であり、原因はハッキリしている。
「悪い…俺がお前を女にしたり、男にしたりさせちまったからか」
頻繁に身体を変化させることで、こうなってしまう天使が現れると言われていた。
それほど例が多いわけではないことから、知識として知っていたが特には気にしていなかったストゥルティは、自分のせいだと反省する。
二人の関係が変化した結果、抱くときだけ女に変わる行動が引き起こした事態だ。
(もっと早くに気付くべきだった)
どこかで浮かれていたのだろう。自分にもそういった相手ができたこと。忌み子の自分には、現れないと思っていたからこそ。
結果として、ルーメンを苦しめてしまった。
一度こうなってしまうと、成人で性別が定まるまで治ることはない。治ったという話を聞いたことはなかった。
つまり、ルーメンは二年ほどこの状態で耐えなければいけないということだ。長距離移動などできるわけがないと、ストゥルティの表情が険しくなる。
「ルティ…」
険しい表情を見て、不安そうに見上げてくるルーメンに、ごめんと頭を撫でた。今一番不安なのはルーメンなのだから、自分がさらに不安を煽るわけにはいかない。
隣へ横になると、安心させるように身体を抱きしめる。少しでも落ち着けるようにと思ったのだが、抱き締めたことで変化がありありと感じ取れてしまう。
ここまで酷いのかと思ってしまったほど、身体は常に変化している。どこかで止まったりしないのか、と言いたくなった。
これでは、ルーメンが休まらない。
(二年……耐えきれるだろうか)
自分が支えなくてはいけないと強く抱きしめれば、ぎゅっとしがみついてくる。
「ルティ…俺…」
「大丈夫だ。落ち着くまで傍にいるからな」
この先、二年も落ち着かないなど言えないと思うと同時に、言わないわけにはいかないとも思う。ずっと戦うのはルーメンなのだから。
.
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言
夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので……
短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
このお話は小説家になろう様にも掲載しています。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる