堕天使の愛

朱璃 翼

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前編

ルーメンの異変2

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 悪魔三人から話を聞くのはアルトゥスで、彼はまだ信じられないことからウィリディスを傍に置いている。リュツィフェールにはラピエールと過ごす時間が必要、と部屋に残して移動することにしたのだが、ストゥルティは気になることがある。

 それは、追いかける途中から口数が減っていったルーメンの様子だ。何度か問いかけてみたが、なんでもないと答えるだけ。

 なにもないはずがないのだ。どうしようかと思えば、アルトゥスが振り返る。

「お前らも休んでていいぞ。ここまで飛びっぱなしだったからな。さすがに未成年は疲れただろ」

 自分が信じられないからウィリディスは同行させるが、と言うから、少し考えてわかったと頷く。本来なら一緒にいるべきとわかっているのだが、ルーメンを休ませたいという気持ちが勝った。

 確かに、ずっと飛び続けるというのは未成年にはきつかったのかもしれない。ウィリディスは飛行能力が高いことから、自分達についてこられただけのこと。

 休ませたらいつものルーメンに戻るかもと思えたのだ。

「でしたら、こちらの部屋を使ってください。客間のひとつです」

 近くにあった客間を使っていいとリーネンが言えば、ありがとうとストゥルティは入っていく。

 室内に入ると、ルーメンはどこかふらふらと歩いていて、本当に飛び疲れだろうかと心配になる。もっと違う問題が起きているのではないか、と。

 怒りで魔の力を発現させていたこともあり、なにか異変が起きているのかもしれない。

(俺でも、成人してからだった。未成年の不安定な状態で起きたから、身体に負担がかかってるとかか?)

 言えないのは、本人が理解していないからかもしれないと思えば、困ったなと見る。どういった異変かわからなければ、動くこともできない。

「ルーメン、本当に大丈夫か?」

 ベッドへ横になる姿を見て、相当辛いのではないかと近寄る。今はなにが起きているのか聞かなければいけない。

 魔の血が起こす問題なら、自分でどうにかできるかもしれないと思っていたし、タイミング的には魔界にいるから手立てがあるかもしれないとも思う。

 今しかないのだ。このあとは地上へ戻るのだから。

「言わないと、さすがになにもわからねぇよ」

 ウィリディスやラピエールのことがあって、言いだせなくなったのかもしれない。実はずっと不調で、無理をさせていたのかもと反省するストゥルティ。

 どれだけ我慢させてしまったのか。頭を撫でながら、ルーメンが話してくれるのを待つ。

 なにかが限界に達してしまったのだろう。移動中に異変を感じていたが、本人が言わないなら問題ないと後回しにしてしまった。

 ごめんと頭を撫でながら呟けば、ルーメンが見上げる。どこか躊躇っているような、視線を泳がす姿に、話すことを迷っているのかと真っ直ぐに見た。

 なにがあっても大丈夫だと伝えるように見ていれば、手が伸びてくる。

「どうした?」

 不安なのかと手を握れば、そうではないと振り払い、ストゥルティの手を自分の胸へ持っていく。

 次の瞬間、すべてを察したストゥルティがハッとしたように見た。今感じているこれが原因で、ルーメンは体調が悪いのだと理解したのだ。

「いつからだ?」

「……魔界に向かう、途中から」

 小さく呟かれた言葉に、口数が減ったあのときかと自分の愚かさに拳を握り締める。ずっと一人で耐えさせてしまった。

 わかっていたら、と思うのだが、あの状態で話せるわけがない。自分だけが知ったとしても、アルトゥスには言えなかっただろう。

 リュツィフェールがやらかす前に、合流する必要があったから。

 ルーメンは身体が常に変化している状態となっていた。本人が望んで変化させているのではなく、勝手になってしまう現象だ。

 身体が不安定になり、常に男から女へ。女から男へと変わっていく。勝手になってしまうことから、本人にも負担がかかっていくため、長距離移動もあってルーメンは耐えられなかったのだろう。

 未成年の天使がたまになってしまう現象であり、原因はハッキリしている。

「悪い…俺がお前を女にしたり、男にしたりさせちまったからか」

 頻繁に身体を変化させることで、こうなってしまう天使が現れると言われていた。

 それほど例が多いわけではないことから、知識として知っていたが特には気にしていなかったストゥルティは、自分のせいだと反省する。

 二人の関係が変化した結果、抱くときだけ女に変わる行動が引き起こした事態だ。

(もっと早くに気付くべきだった)

 どこかで浮かれていたのだろう。自分にもそういった相手ができたこと。忌み子の自分には、現れないと思っていたからこそ。

 結果として、ルーメンを苦しめてしまった。

 一度こうなってしまうと、成人で性別が定まるまで治ることはない。治ったという話を聞いたことはなかった。

 つまり、ルーメンは二年ほどこの状態で耐えなければいけないということだ。長距離移動などできるわけがないと、ストゥルティの表情が険しくなる。

「ルティ…」

 険しい表情を見て、不安そうに見上げてくるルーメンに、ごめんと頭を撫でた。今一番不安なのはルーメンなのだから、自分がさらに不安を煽るわけにはいかない。

 隣へ横になると、安心させるように身体を抱きしめる。少しでも落ち着けるようにと思ったのだが、抱き締めたことで変化がありありと感じ取れてしまう。

 ここまで酷いのかと思ってしまったほど、身体は常に変化している。どこかで止まったりしないのか、と言いたくなった。

 これでは、ルーメンが休まらない。

(二年……耐えきれるだろうか)

 自分が支えなくてはいけないと強く抱きしめれば、ぎゅっとしがみついてくる。

「ルティ…俺…」

「大丈夫だ。落ち着くまで傍にいるからな」

 この先、二年も落ち着かないなど言えないと思うと同時に、言わないわけにはいかないとも思う。ずっと戦うのはルーメンなのだから。




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