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令嬢からのプレッシャー
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「別に行きたくないんだけどなぁ~」と希美は独り言を言う。六本木希美は34歳、独身であり、彼氏もここ5年いない。でも希美は一人でいることのほうが好きだった。誰にも邪魔をされず、ペースを乱されることもなく、自分の好きな時に好きなことをする。人と一緒にいると相手のことを気にしなければならないのでめんどくさいのだ。
希美に協調性がないわけではない、職場でも最低限度のやり取りはできていると思うし、誰かとも揉めているわけでもない、よくも悪くも空気のような存在だ。いたらいたで、困らないが、いなくてもそれでも仕事は回る。
そんなふうに思われていることを希美は知っているので、職場ではできる限り無口でいるし、突然話しかけられるとどう返していいかわからなくなる。そんな希美にも数少ない話す相手と言う人が社内にいる。松岡莉緒だ。
松岡莉緒は希美と同じ34歳だが、2年前に結婚をして、社員からアルバイトになったのだが、長く仕事で一緒だったからだろう。今でも話す。莉緒はおとなしく、他人の生活にも干渉してこない。結婚生活に関しても聞かなければ話すことはないので、希美にとって居心地がいい相手なのだ。
莉緒と昼休みに、社員食堂で昼ご飯を食べていると、時田葉子がやってきた。葉子は社内でも噂好きで、おしゃべりで、おせっかいだ。面倒見がいいところはあるのだが、全員がうれしいわけではない。希美にとっては苦手な相手である。かといって、40歳を超えている葉子は希美にとって上司であり、おまけに社長の娘だ。無下にすることはできない。
どうせ、席を立とうとしても、お構いなしに話しかけてくるだろう。ほら、早速、こっちへきた。
「希美さん、莉緒さん、元気?」と葉子が声をかけてくる。希美はさっきも会っただろうと思ったが口には出さなかった。しぶしぶ希美は
「葉子さん、さっきも流石でしたね。課長にビシッと意見言ってすごいなぁって見てました」と言うと葉子は満更でもなさそうに
「ああいうときは、意見をしっかり言わないとだめなのよ。よく見てるわね希美さん」と微笑みながら言った。
そう思っているのはきっと葉子だけで、それを見ていた周りの反応は、面倒なことを起こさないでくれよというのが、共通認識だろう。その意見と言うのも、葉子が内容を理解できていないだけであり、葉子が理解できるまで何度も説明せよということものである。1回2回ならわかるが、だいたいそれ以上になるのであとで課長に直接聞けばいいのではと皆が思っているだろう。
まあ、社長の娘で、将来的には幹部になるであろう葉子に意見するのは課長も危険だと思っているのだろう。何も言わないことを言いことに、葉子はますますヒートアップしていくという悪循環が繰り返される。この人が幹部になった際には、果たして、この会社はどうなってしまうのだろうと心配にもなるがまぁ、どうせそのころには私もいないだろう。考えても仕方ない。
そんな葉子が
「結婚しても同じなのよ、旦那をうまく操縦する。それが夫婦仲が良くなる秘訣よ。それに家庭もうまく回るんだから。ねぇ、莉緒さん?」
と突然話を振られて莉緒は
「えっ、ええ、そう思います」と答えたが、莉緒の顔には、旦那さんが葉子さんをうまく操縦しているのではと書いてある。
私は吹き出しそうになるのを我慢しながら、
「さすが、葉子さんです」とおだてておく。
すると葉子は気分が良くなったのか、
「希美さんも早く結婚をしなさいよ。いいわよ、結婚も。今は、晩婚化っていわれているけど、やっぱり結婚はできるだけ早いほうがいいわよ」と言った。
自分だって、この前結婚したばかりなのに、自分のことは棚に上げて話すのか…と思うと苛立ちを覚えたが、この人に何を言っても無駄である。そう思い、適当に返事をしようとすると、莉緒が、
「結婚は縁もありますし、したい、したくないとかあるじゃないですか」と私が結婚することを希望していないことをやんわりと伝えようとするが、葉子は自分の意見に賛同しない莉緒を睨み、
「いいえ、そんなことありません。結婚はしたほうがいいに決まっています。あんただってそう思ったから結婚したんでしょ?」とまくしたてると莉緒は萎縮し、
「そうかもしれません、ただ、この人といたいと…」と話の途中で葉子は
「ほらごらんなさい、結婚することが幸せにつながるんですよ。そうなんだから、希美さんも早く、出会いを探しに行きなさい、そういえば今度、パーティがあるって聞いたわよ。そこにうちの会社からも何人か参加してもらうことになると思うから、私から父に伝えとくわ」と言うと、その場から去っていった。
私と莉緒はため息をつき、
「なんかごめんね、いろいろと巻き込んじゃって」と莉緒に謝ると莉緒が、
「気にしないで、大変ね、希美もあの人の下で働くの」と言い、苦笑いを浮かべる。
「上司は選べないからね…」と言うともう一度二人でため息をついた。
午後の勤務が始まると、葉子が近づいてきて、
「ごめんなさい、さっきの話だけど、行く人はもう決まっているらしくて、それでそのお詫びではないけど、今週の金曜日、会社の独身者を集めて、飲み会を開く予定なの、だから希美さんもそれに参加しなさい。せっかくなんだし、社内の交友を深めることも大事なのよ」と言い、嵐のように去っていった。
うちの会社で独身会と呼ばれるイベントだ。文字通り社内の独身者を集めて、くっつけさせようとする大変迷惑なイベントで、主催者はもちろん葉子であり、行くのは葉子と仲がいい中堅社員と何も知らない新人が1回か2回来るだけのイベントである。迷惑以外何物でもなく、希美も理由を付けて毎回断っていたが、今回ばかりは参加するしかないようで、もう一度深いため息をついた。
希美に協調性がないわけではない、職場でも最低限度のやり取りはできていると思うし、誰かとも揉めているわけでもない、よくも悪くも空気のような存在だ。いたらいたで、困らないが、いなくてもそれでも仕事は回る。
そんなふうに思われていることを希美は知っているので、職場ではできる限り無口でいるし、突然話しかけられるとどう返していいかわからなくなる。そんな希美にも数少ない話す相手と言う人が社内にいる。松岡莉緒だ。
松岡莉緒は希美と同じ34歳だが、2年前に結婚をして、社員からアルバイトになったのだが、長く仕事で一緒だったからだろう。今でも話す。莉緒はおとなしく、他人の生活にも干渉してこない。結婚生活に関しても聞かなければ話すことはないので、希美にとって居心地がいい相手なのだ。
莉緒と昼休みに、社員食堂で昼ご飯を食べていると、時田葉子がやってきた。葉子は社内でも噂好きで、おしゃべりで、おせっかいだ。面倒見がいいところはあるのだが、全員がうれしいわけではない。希美にとっては苦手な相手である。かといって、40歳を超えている葉子は希美にとって上司であり、おまけに社長の娘だ。無下にすることはできない。
どうせ、席を立とうとしても、お構いなしに話しかけてくるだろう。ほら、早速、こっちへきた。
「希美さん、莉緒さん、元気?」と葉子が声をかけてくる。希美はさっきも会っただろうと思ったが口には出さなかった。しぶしぶ希美は
「葉子さん、さっきも流石でしたね。課長にビシッと意見言ってすごいなぁって見てました」と言うと葉子は満更でもなさそうに
「ああいうときは、意見をしっかり言わないとだめなのよ。よく見てるわね希美さん」と微笑みながら言った。
そう思っているのはきっと葉子だけで、それを見ていた周りの反応は、面倒なことを起こさないでくれよというのが、共通認識だろう。その意見と言うのも、葉子が内容を理解できていないだけであり、葉子が理解できるまで何度も説明せよということものである。1回2回ならわかるが、だいたいそれ以上になるのであとで課長に直接聞けばいいのではと皆が思っているだろう。
まあ、社長の娘で、将来的には幹部になるであろう葉子に意見するのは課長も危険だと思っているのだろう。何も言わないことを言いことに、葉子はますますヒートアップしていくという悪循環が繰り返される。この人が幹部になった際には、果たして、この会社はどうなってしまうのだろうと心配にもなるがまぁ、どうせそのころには私もいないだろう。考えても仕方ない。
そんな葉子が
「結婚しても同じなのよ、旦那をうまく操縦する。それが夫婦仲が良くなる秘訣よ。それに家庭もうまく回るんだから。ねぇ、莉緒さん?」
と突然話を振られて莉緒は
「えっ、ええ、そう思います」と答えたが、莉緒の顔には、旦那さんが葉子さんをうまく操縦しているのではと書いてある。
私は吹き出しそうになるのを我慢しながら、
「さすが、葉子さんです」とおだてておく。
すると葉子は気分が良くなったのか、
「希美さんも早く結婚をしなさいよ。いいわよ、結婚も。今は、晩婚化っていわれているけど、やっぱり結婚はできるだけ早いほうがいいわよ」と言った。
自分だって、この前結婚したばかりなのに、自分のことは棚に上げて話すのか…と思うと苛立ちを覚えたが、この人に何を言っても無駄である。そう思い、適当に返事をしようとすると、莉緒が、
「結婚は縁もありますし、したい、したくないとかあるじゃないですか」と私が結婚することを希望していないことをやんわりと伝えようとするが、葉子は自分の意見に賛同しない莉緒を睨み、
「いいえ、そんなことありません。結婚はしたほうがいいに決まっています。あんただってそう思ったから結婚したんでしょ?」とまくしたてると莉緒は萎縮し、
「そうかもしれません、ただ、この人といたいと…」と話の途中で葉子は
「ほらごらんなさい、結婚することが幸せにつながるんですよ。そうなんだから、希美さんも早く、出会いを探しに行きなさい、そういえば今度、パーティがあるって聞いたわよ。そこにうちの会社からも何人か参加してもらうことになると思うから、私から父に伝えとくわ」と言うと、その場から去っていった。
私と莉緒はため息をつき、
「なんかごめんね、いろいろと巻き込んじゃって」と莉緒に謝ると莉緒が、
「気にしないで、大変ね、希美もあの人の下で働くの」と言い、苦笑いを浮かべる。
「上司は選べないからね…」と言うともう一度二人でため息をついた。
午後の勤務が始まると、葉子が近づいてきて、
「ごめんなさい、さっきの話だけど、行く人はもう決まっているらしくて、それでそのお詫びではないけど、今週の金曜日、会社の独身者を集めて、飲み会を開く予定なの、だから希美さんもそれに参加しなさい。せっかくなんだし、社内の交友を深めることも大事なのよ」と言い、嵐のように去っていった。
うちの会社で独身会と呼ばれるイベントだ。文字通り社内の独身者を集めて、くっつけさせようとする大変迷惑なイベントで、主催者はもちろん葉子であり、行くのは葉子と仲がいい中堅社員と何も知らない新人が1回か2回来るだけのイベントである。迷惑以外何物でもなく、希美も理由を付けて毎回断っていたが、今回ばかりは参加するしかないようで、もう一度深いため息をついた。
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