鬼とドラゴン

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ケンカ

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 森を抜けたヴァンは従兄弟の家に向かった。カンヘルの事は言えないまでも、何となくグルナイユの様子を見ておきたかったのだ。腕の契約印は服の袖を下ろして隠すことにした。

 木製の門を押して敷地に入ると、庭でしゃがみ込んでいるグルナイユの姿を確認することができた。

「やぁ、グル」

 ヴァンが声をかけると麦わら帽子を被ったグルナイユが顔を上げた。首にかけた手ぬぐいで汗を拭きながら返事をする。

「これはこれは、ヴァン様。昨日は大変お世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ。ところで、何をしていたの?」

 まるで庭仕事をするような格好のグルナイユにヴァンが問いかける。

「草むしりでございますよ。カエデ様より仰せつかったのでございます」

 家事をする戦力が増えたことに嬉々とするカエデの姿が目に浮かぶようだった。

「まったく、カエデさんったらしょうがないなぁ。グルはお客さんなのにね?」
「いえいえ、小生は嬉しく思っているのです。カエデ様は小生を客人ではなく、家族の一員のように扱って下さっているのですから」

「そうよ。グルちゃんはもうウチの家族の一員よ」

 いつの間にか縁側に出てきていたカエデが言う。

「もちろん、ヴァンちゃん、あなたもね」
「ありがとう。カエデさん」
「二人とも、お母さんって呼んでくれてもいいのよ?」
 カエデがイタズラっぽく笑った。


 縁側に座り、グルナイユの話を聞く。昨日この家に来てからの事を話してくれた。暖かく迎え入れてくれたことがとても嬉しかったようだ。ただ、不満もあるらしく、それはアランと同室であるという事らしかった。

「ところでヴァン様、今日はどういったご用件だったのです?」

 一通り喋ったところでグルナイユの質問であった。

「いや、グルがどうしているかなぁって思ってね。様子を見に来たんだよ」
「左様でございましたか。それはどうもありがとうございます」

 一瞬カンヘルの事を伝えてしまおうかとヴァンは考えたが、やめておいた。カンヘルにとっても、グルナイユにとっても今は黙っていた方が良いという結論だった。

「それじゃ、グルも元気みたいだし、僕はそろそろ帰るよ」
「お気をつけてお帰りくださいませ」

 門まで行ったところで、ヴァンはカエデに呼び止められた。

「また来てね。お義父さんにもよろしくね」
「はい」

「あっ、そうそう。さっきね、アランが帰ってきたんだけど、すぐにヴァンちゃんの家に行っちゃった。家に来ているって言うヒマもなかったわ。なんか怒っているみたいだったけど、何か心あたりある?」

 なぜアランが怒っているのかヴァンにはわからなかった。しかし、その怒りの矛先は自分であろうなと何となく思った。

「身に覚えはないです」
「もし、ケンカになったらボコボコにしちゃっていいからね」

 ヴァンは苦笑する。

「もしそうなったら頑張ります」
「応援してるわ!」

 ガッツポーズで激励するカエデに別れを告げてヴァンは帰宅した。
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