GHOST HUNTER

火取閃光

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第1章 造形士

1-9 受け継がれる遺品

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 大霊窟である光明洞へ向かう為に聖十字教会に在籍している長瀬浜神社の同業者に向けて遊専の学生手帳を見せる。

 俺達は[遊専の特進科所属]と言うエンターテイメントを学ぶ表の学科コースには無い進学科とも意味合いが取れる学生手帳を所持している。

 これによって遊専の表向きの学生なのか? それとも怪異関係者である裏向きの学生なのかを証明してくれる為のモノだ。

 長瀬浜の同業者からの確認が終わり大霊窟のある地下室に通じる隠し扉へ案内される。階段を降りた先には結界が施された入り口があり低級怪異が外へ出られない様にしていた。

 今日は休日の日中。本来なら俺達以外の遊専所属の学生達や聖十字教会所属の社会人などが探索の為に準備したりする空間なのだが今日は空いている様だ。

 真は準備運動や柔軟を念入りに行うと持って来た鞄の中からあるモノを取り出した。それは彼の武器だった。

「まこ……その腰に付けている物ってまさかっ……!」

「うん。ボクの新しい武器"霊銃,,さ。そうは言ってもつい先日から練習したばかりであんまり精度が良く無いんだけどね……。勝兄様みたいにはいかないや……」

 真は苦笑いをしながら2丁のハンドガンを寛へ見せる。1つは普通に火薬を使う拳銃でグロック19。そして、もう1つはグロックよりも小さい霊銃だった。

 真の持つグロックと霊銃は彼女の兄でだった勝のお下がりであり遺品でもあった。神楽坂勝はかつて日本が誇る銃の名手として有名だったが、とある怪異と戦い行方不明となりその出血量と期間から死亡認定された経緯がある。

 グロックや他の銃、それ等に使う実弾達は聖十字教会や俺達が通う遊専でも購入が可能だ。少し値段はするが学生割も効いているので買えない額では無い。

 実弾には通常の物と刻印弾と言う術式を刻んで威力増強の2つが売られている。ある程度の弱さなら通常弾でも怪異は倒せる。しかし、刻印弾であれば一定以上の力ある怪異を屠れる威力を出せるのだ。

 それに対して霊銃はグロックの様な実銃に比べて割と安価な値段だ。銃弾も火薬を使って放つ訳では無く霊光弾と言う予め霊力保存と放出の術式を刻印された専用の弾に霊力を込めて打ち出す仕組みだ。

 その為、実銃の問題点でもある弾のリロードや弾詰まり、実弾の購入費用などが掛からない点が学生に受けている。

 しかし、その威力は所持者の霊力に依存している為に霊銃自体も安価なモノではそこまで高い威力が出せない事が難点であった。

「なるほどな……。確か真は神楽坂の秘術で俺と契約したから保有している霊力リソースのほとんどを占有しちまっているんだよな……?」

「うん……。前までは複数の霊具装備と自前の霊力による肉体強化で戦っていたんだけど今じゃそのほとんどは装備出来ないくらいに霊力が減っちゃったんだ……。

 まぁ、でも後悔は無いよ? 元々両親からも"自分が心の底から契約したいって思った怪異と契約しなさい,,って言われていたし。でも、前回の半魚人戦で確信したんだ。

 ボクは自分が思った以上に弱くなっているって……。前までのボクならあれくらいの敵なら秋雨流格闘術・波動拳の一発で倒せた筈なんだ。そこで考えたのが二丁拳銃(これ)なんだ。

 霊力は短期間でそう簡単に上がる訳じゃない。だから、簡単に攻撃威力が上がり苦手だった遠距離攻撃も克服出来る銃を選んだんだよ。

 そして、その内に霊力がそれなりに戻って前と同じ戦い方になっても銃経験があればボクはもっと強くなれる。そう思うんだ」

 この前、土御門景政に言われた様に寛と契約する前の真は大人顔負け所の話では無く強かったと言われる程に有名だったらしい。

 土御門景政は天才だと言われる。しかし、神楽坂真は神童だと言われ羨望と恐怖の眼差しを受けていたと彼女の父である茂から聞いていた事をふと思い出す。

「そっか……。強くなる事へ貪欲なのは俺だけじゃ無いんだな……。俺ももっと精進しなくちゃなっ……!!」

「あっ、後多分ヒロには効かないと思うけど今日は試しで刻印弾(コッチ)使うから反動でフレンドリーファイアしちゃったら……ごめんね!」

「えぇ……。まぁ、霊光弾(ソッチ)じゃ無ければ多分大丈夫な気がする。どんとこいよ」

「うん! それじゃ、そろそろ行こっか」

 俺達は光明洞への探索を開始した。霊窟の中は山中の洞窟感があるのかと思えばそんな事は無い。普通にコンクリート製の道や壁が広がっておりまるで迷路の様な造りだった。

 道幅はそこまで広く無い。車道にある車線1.5本分くらいで個人で探索するには十分だが複数人で探索するにはちょっと狭いくらいに不便だった。

 俺達は黙々と探索を進める。幸い壁には篝火の様な灯が施されておりそこで燃える炎を見ていると俺はなんだか寒気を感じた。

「ヒロ、早速のお出ましだよ」

「分かっている。アレが鬼蛙か……」

「2匹居るから片方はヒロに任せるね」

「おうよっ……! 行くゼェ……! 血液(しんたい)操作・部分変化ーー疾風爪刃(しっぷうそうじん)っ……!!」

『ゲゲッ!? ゲエェ……』

『ゲギャッ……!!』

 寒気と言うか霊力を感じた段階から既に両手の爪を鋭く大きく変化していた。疾風爪刃は勢い良く飛び出してから相手を切り裂く様な攻撃だ。

 俺が担当した鬼蛙は首を切り裂かれそこから霊力が溢れ出て段々と消えた。そして、もう一方が寛へ攻撃しようとした時に真の霊銃が淡く光った。

「敵はヒロだけじゃないよ。充填(チャージ)……敵影確認(ロックオン)……発射(ファイア)ッ……!!」

『ゲギャッ!? ゲゲッ……!! ゲエェ……!?』

 音もなく放たれた淡く青い閃光の様な霊光弾が鬼蛙の頭部に当たる。しかし、1発目では仕留め切れず更に追加で頭部と胸部へ閃光を放ち鬼蛙は核導を残して消滅した。

「うーん……。発射までの予備動作がまだイメージしていたものよりも遅いか……。それに思ったほど反動が無いけど想像以上に威力も低いな……。

 命中精度はちょっと悪かったけど1匹仕留めるまでに2,3発は必要かな……? それとも敵の急所を見極めて放つ方が得策かな……?? 霊光弾(これ)は様練習だね……」

「おう! まこ、ナイスショット!」

「ふふっ。ありがとう。ヒロもナイスアタックだね!」

 お互いにグッと拳を突き出し合う様に健闘を讃えあう。鬼蛙は何処の霊窟でも初心者向けの雑魚怪異だが毎年舐めて掛かって大怪我をする学生が居るほど危険な存在だ。

 お互いに慣れていない戦闘技法での初めての実践経験。出だしはまずまずと言ったところだが寛はこの結果に少し不満気だった。

「おうよっ! でも、アレだな……。今回は鬼蛙(てき)が弱かったからある程度切り裂けたけど切れ味はもっと追求出来る気がするんだ。

 長さも今みたいにほぼ止まっている状態ならある程度確保出来る。でも、動きながら切り裂く瞬間に切れ味を保ったまま爪を伸ばすのはまだまだ慣れねぇな……」

「うーん……それなら、狼怪異と言う固定概念を一度外して切れ味が落ちても良い変化を追求してみるのはどう?」

「んあっ? だけど、それじゃ体当たりとあまり変わら無いし攻撃力が低下しないか……?」

 真の意見を正しく理解出来ているか分からないが言葉通りの意味だとそれは本末転倒だと首を傾げた。

「そう言う事じゃなくて。ヒロって人間だった時に秋雨流・刺突槍術が使えたじゃん? だから、攻撃の瞬間に槍の様な形状に変化させてみたら? って話だよ。

 ヒロはさ……事情が事情だから仕方ないけど狼って言う形状に意識が囚われすぎだよ。斬撃はもっと操作性に慣れてからでも遅くないと思うよ」

「あっ! そっか……そうだよなっ……!! 俺が狼型の怪異だからと言っても狼っぽい攻撃をする必要は無いのかっ……!! 

 それに俺の怪異としての本質は血液操作に特化した怪異であって何もしていない形状が狼型って事だよな……!! 自分の事なのにちょっと盲点だったわ……」

「そうだよ。それなら、別に前足の変化だけじゃ無くて尻尾とか頭とかを伸ばしたり操作したり出来て戦術の幅が増えると思うんだ」

「だよな……。先月から狼怪異(このカラダ)になって以来、人間的意識から狼怪異的意識へ切替を意識していたからそのまで頭が回らなかったわ……。アドバイス、ありがとうな」

「ううん。ヒロが、戦闘中に出来る事を増やせれば、ボクの戦術も一気に増えるんだ。ボク達は、一心同体さ。だから、気にしないでよ」

「おうっ! なら、今日はガンガン行くぜっ! 準備は良いかっ……!!」

「いいともーっ!」

 俺達は光明洞の探索と依頼がてら鬼蛙の討伐に勤しんだ。鬼蛙から出た核導は依頼分を除いて後で寛が食べられる様に纏めてしまった。
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