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プロローグ
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「……様。もう少しの辛抱……。奥…。」
頭上から誰かの声が聞こえる。声の主は高い声質をしている事から如何やら女性の様だ。俺は少しずつ意識を覚醒していった。
(ん?何だろうか。女性の声が聞こえる…。知らない声だ。と言うか真っ暗な上なんだこの痛みは!?痛い痛い痛い!何なんだ、本当に。溺れる、助けてくれー!)
俺が居たのは何というか真っ暗な空間で天井や壁が少しだけ赤い色をしている。そして何より背中には水だと思うのだが浮いている。辺りを確認したいが何故だか身体が言うことを聞いてくれない。
「うぐぐぐ…。ひっふぅー!ひっふぅー!嗚呼ぁー!嗚呼ぁー!」
「オギャー!オギャー!オギャー!」
(いでー!いてぇー!いてぇーよ!)
もう1人別の女性の声が聞こえたが俺はそんな事を気にしている暇はなかった。何というか子供の頃感覚の狭い柵の間を無理矢理通った時の様な締め付けられる痛みが身体全身に走った。特に頭と首と肩は痛い。この痛みを少しでも早く楽になりたい俺は体を丸めて、大声を出して対応した。
「奥様!産まれましたぞ!ひっ!?こ、これは…紫髪の褐色肌…。忌み子じゃ、忌み子が産まれたのじゃ…。」
「はぁー、はぁー、はぁー。クレア、私の、私の赤ちゃんは?」
「すぅーはぁー…。マリアネア奥様…。お気を確かにして下さい…。この子がドゥンケル様です。」
「えっ!?こ、この子が…。あぁ…。」
クレアと呼ばれた女性は産婆であり、乳母でありマリアネアの侍女長だった。クレアはマリアネアに産まれたばかりの赤子をを見せる。しかし、赤子を見たマリアネアはまるで想定外だった様な表情を浮かべ絶句する。そして出産後の疲労と心労が合わさり気絶する。
「皆の者!奥様がお気を失ったぞ!奥様は出産後だから迅速な対応を行う様に!」
バタン!と扉が勢い良く開く音がした為にクレアは音の方を見る。1人の男性が顔を青くして焦燥し切った表情でクレアに問いかけた。この男性こそがジャック・スティ・フレアメアであり公爵家フレイメアの現当主である。
「クレア!マリアネアは、赤子は!」
「旦那様…。奥様とドゥンケル様はご無事です。奥様出産の疲れで休まれています。しかし、ドゥンケル様は…。」
「ドゥンケルが、どうしたのだ…?」
「此方を見て下さい…。」
「こ、この子は…。」
「その通りでございます。紫髪で褐色の肌…。奥様の青髪にも、旦那様の赤髪にも属さないご子息は忌み子に御座います…。」
ジャックは産まれたばかりのドゥンケルを見ると右手で顔を覆い、両膝が崩れるのを必死に堪えた。
「そんなぁ…。」
「いかが致しますか?まだ、ドゥンケル様が産まれたことは、この場にいる私達しか知りません。今ならまだ…。」
「クレア!分かっている…。しかし、この子は私達の子供だ。産まれたこの子に罪はない…。私は…マリアネアの所に行ってくる。」
クレアは自身の首が物理的に飛ばされるのを覚悟してジャックにドゥンケルを死産扱いにして殺害する事を提案しようとした。しかし、そんなクレアの言葉を遮りジャックはクレアに最後まで言わせなかった。クレアの言う事は正しい。伝統あるフレイメア家に忌み子が産まれた事実はあってはならない事だ。当主としては初めから居なかった事にしなければならないのだ。
しかし、忌み子が生きているからといって特に災害がある訳ではない。過去の勇者伝説に忌み子と呼ばれる特徴を持つ者が魔族に与していたのがキッカケで迫害を受けているだけなのだ。産まれたばかりのこの子に罪がない。罪なき者を罪人として処罰するのは代々法務省長官を務めてきたフレイメア当主としてもあってはならない事である。ジャックは悩んだ末にドゥンケルを生かす選択をした。
「かしこまりました。私はドゥンケル様を寝かせて来ます。旦那様もお気を確かにして下さいませ。」
「ありがとう…クレア…。暫くその子を頼む…。」
(ガァーっ。馬鹿じゃねぇの!体中の骨が痛いわ!それにしても、何処だ…此処?俺は…確か、震災で死んだ…んじゃねぇの?病院…?って訳ではねぇなぁ。それに忌み子とか、物騒な事が聞こえたぞ…。訳がわかんねぇ。ゔっ意識が…遠のく…。)
俺は全身に走った痛みが引いて来た為にようやく自分の状況の確認ができる様になった。しかし、確認しても情報が足らなすぎて、分からない事が分かったと言う状態だった。そして、肉体と精神の疲労とクレアにあやされている事で眠くなり、眠った。
頭上から誰かの声が聞こえる。声の主は高い声質をしている事から如何やら女性の様だ。俺は少しずつ意識を覚醒していった。
(ん?何だろうか。女性の声が聞こえる…。知らない声だ。と言うか真っ暗な上なんだこの痛みは!?痛い痛い痛い!何なんだ、本当に。溺れる、助けてくれー!)
俺が居たのは何というか真っ暗な空間で天井や壁が少しだけ赤い色をしている。そして何より背中には水だと思うのだが浮いている。辺りを確認したいが何故だか身体が言うことを聞いてくれない。
「うぐぐぐ…。ひっふぅー!ひっふぅー!嗚呼ぁー!嗚呼ぁー!」
「オギャー!オギャー!オギャー!」
(いでー!いてぇー!いてぇーよ!)
もう1人別の女性の声が聞こえたが俺はそんな事を気にしている暇はなかった。何というか子供の頃感覚の狭い柵の間を無理矢理通った時の様な締め付けられる痛みが身体全身に走った。特に頭と首と肩は痛い。この痛みを少しでも早く楽になりたい俺は体を丸めて、大声を出して対応した。
「奥様!産まれましたぞ!ひっ!?こ、これは…紫髪の褐色肌…。忌み子じゃ、忌み子が産まれたのじゃ…。」
「はぁー、はぁー、はぁー。クレア、私の、私の赤ちゃんは?」
「すぅーはぁー…。マリアネア奥様…。お気を確かにして下さい…。この子がドゥンケル様です。」
「えっ!?こ、この子が…。あぁ…。」
クレアと呼ばれた女性は産婆であり、乳母でありマリアネアの侍女長だった。クレアはマリアネアに産まれたばかりの赤子をを見せる。しかし、赤子を見たマリアネアはまるで想定外だった様な表情を浮かべ絶句する。そして出産後の疲労と心労が合わさり気絶する。
「皆の者!奥様がお気を失ったぞ!奥様は出産後だから迅速な対応を行う様に!」
バタン!と扉が勢い良く開く音がした為にクレアは音の方を見る。1人の男性が顔を青くして焦燥し切った表情でクレアに問いかけた。この男性こそがジャック・スティ・フレアメアであり公爵家フレイメアの現当主である。
「クレア!マリアネアは、赤子は!」
「旦那様…。奥様とドゥンケル様はご無事です。奥様出産の疲れで休まれています。しかし、ドゥンケル様は…。」
「ドゥンケルが、どうしたのだ…?」
「此方を見て下さい…。」
「こ、この子は…。」
「その通りでございます。紫髪で褐色の肌…。奥様の青髪にも、旦那様の赤髪にも属さないご子息は忌み子に御座います…。」
ジャックは産まれたばかりのドゥンケルを見ると右手で顔を覆い、両膝が崩れるのを必死に堪えた。
「そんなぁ…。」
「いかが致しますか?まだ、ドゥンケル様が産まれたことは、この場にいる私達しか知りません。今ならまだ…。」
「クレア!分かっている…。しかし、この子は私達の子供だ。産まれたこの子に罪はない…。私は…マリアネアの所に行ってくる。」
クレアは自身の首が物理的に飛ばされるのを覚悟してジャックにドゥンケルを死産扱いにして殺害する事を提案しようとした。しかし、そんなクレアの言葉を遮りジャックはクレアに最後まで言わせなかった。クレアの言う事は正しい。伝統あるフレイメア家に忌み子が産まれた事実はあってはならない事だ。当主としては初めから居なかった事にしなければならないのだ。
しかし、忌み子が生きているからといって特に災害がある訳ではない。過去の勇者伝説に忌み子と呼ばれる特徴を持つ者が魔族に与していたのがキッカケで迫害を受けているだけなのだ。産まれたばかりのこの子に罪がない。罪なき者を罪人として処罰するのは代々法務省長官を務めてきたフレイメア当主としてもあってはならない事である。ジャックは悩んだ末にドゥンケルを生かす選択をした。
「かしこまりました。私はドゥンケル様を寝かせて来ます。旦那様もお気を確かにして下さいませ。」
「ありがとう…クレア…。暫くその子を頼む…。」
(ガァーっ。馬鹿じゃねぇの!体中の骨が痛いわ!それにしても、何処だ…此処?俺は…確か、震災で死んだ…んじゃねぇの?病院…?って訳ではねぇなぁ。それに忌み子とか、物騒な事が聞こえたぞ…。訳がわかんねぇ。ゔっ意識が…遠のく…。)
俺は全身に走った痛みが引いて来た為にようやく自分の状況の確認ができる様になった。しかし、確認しても情報が足らなすぎて、分からない事が分かったと言う状態だった。そして、肉体と精神の疲労とクレアにあやされている事で眠くなり、眠った。
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