【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!

綺咲 潔

文字の大きさ
10 / 77

10話 裏切りのウェディング

しおりを挟む
 レアード様に会い行くため乗り込んだ馬車から、私は晴れ晴れとした気持ちで車窓を眺めていた。

――ああ、見知った街の風景よ。
 ギル様との別れは寂しかったけれど、やっぱりここが私の住む国だわ!

 たった3日間しか離れていなかったが、その3日間だけで帰って来られた奇跡と相まって街が輝いて見える。

 生きて帰って来たんだと実感しながら街の景色を見ていると、安心感と達成感で胸がいっぱいだ。

「うふふっ! 本当に私帰って来たのね!」

 嬉しさのあまり、馬車の中でついつい独り言ちてしまう。

「はあ、早くレアード様に会いたいわ! きっと驚くに違いないもの。どんな顔をするのかしら? 楽しみだわっ!」

 レアード様の反応を想像するだけで、ドキドキして胸がときめく。そうこうしているうちに、馬車が魔塔と家のちょうど中間ほどの距離にある教会の前に差し掛かった。

 その教会の前には、新郎新婦が出てくる教会の扉が開くのを、今か今かと待っている参列者が集まっていた。かなり少ない数の参列者だが、皆準備が整い階段に沿うように列になって待機している。

「あら? 誰か結婚式をしているのね。こうして帰って来られたから、私ももうすぐレアード様と! うふふふっ」

 これからの未来を妄想して、つい笑顔がこぼれる。しかし、あることに気が付いた。

「あれ? あの子どこかで見たような……。いったいどこで見たのかしら?」

 参列者の中に、見知った顔を見つけたのだ。よくよく見てみると、2人が見たことのある人物だった。

 両手で足りるほどの参列者しか見えないのに、見たことがある顔が2人もいるのは凄い確率だと思う。

「誰か知り合いの結婚式なのかしら……?」

 私は頭の中で、結婚する予定がある知人を検索する。しかし、結婚式をする段階までに至っている人は引っかからなかった。

――分からないわね。
 そうなると私の知らない人の可能性が高いわね。

 そう思った瞬間、教会の扉が開いて新郎新婦の姿が見えた。

――どんな人達が結婚式を挙げているのかしら!

 そんな野次馬心から、新郎新婦を見るべく目を凝らすように教会の扉へと目を向けた。

 すると、そこには思いもよらぬ人物が立っていた。

「……レアード、様? と……アイ……ラ?」

 私は急いで馬車の窓を開け、御者ぎょしゃに叫んだ。

「ごめんなさい……! ちょっと急用を思い出して……っすみませんが、ここで下ろしてください……!」

 突然の呼びかけであったが、御者はすぐに馬車を停めてくれた。お釣りは要らないと御者に多めに支払い、私は急いで教会へと向かった。

 馬車は教会から少し通り過ぎていたため、私は一点を見つめながら教会へと歩みを進めた。一瞬だけだったため、もしかしたら見間違いの可能性もなくはない。

――まさかそんな訳ないわよね!
 どうか、どうか見間違いであってちょうだい……!
 だってこんなことあっていい訳ないもの!

 一縷の望みを賭けながら、1歩また1歩と足を進めた。どうか見間違いであってくれと願いながら。

 しかし、私のその望みが叶うことは無かった。

――何でレアード様とアイラがタキシードとウェディングドレスを着てるの!?
 何で2人が参列者に手を振っているの……?
 何で2人がそこに立って笑ってるの……。

 ショックと怒りの感情が一瞬にして身体中を駆け巡った。すると、そんな私の心境と呼応するように、一気に空が曇り出した。

 だが、そんなことを気にする余裕なんてない。こうして、ただひたすらに彼らの方へ進んで行くと、とうとう継母と目が合った。

「ひゃあ……!」

 気の抜けたような声で、こちらを見た継母が悲鳴を上げる。まるで、生き返った死人を見たような反応だ。

 その間抜けな継母の悲鳴に反応し、レアード様とアイラもこちらを見た。

「お義母様どうされ/お母様どうされ……っぎゃあ――――――!!!!!!」

 そう言って、こちらを向いた2人は私の存在に気付き叫び声を上げた。

 それと同時に一気に天候が変動し、綺麗に晴れていた空からはゴロゴロと音が鳴り出し、雨が降り始めた。そして私は、新郎新婦と完全に対峙した。

「……あなたたち、これは一体どういうことなの」
「いや、これは……」
「どういうことか説明しろって言っているのよ……!!!!!!!!!!」

 怒りに任せて叫んだ瞬間、私と2人の目の前に、ドカンピシャーンと凄まじい音を立てて雷が落ちる。この雷を皮切りに、結婚式場周辺にはいくつもの雷が落ち始めた。

 そんな天候に恐れ戦き、人々は逃げ惑いながら蜘蛛の子を散らすように新郎新婦と継母を残してどこかへと逃げて行った。新郎新婦と継母は雨に打たれたまま、腰を抜かして震えている。

「それで、一体どういうことなのよ。これは」

 そう言うと、レアード様が口を開いた。

「これは、その、これは……!」

 口を開いたは良いものの、これはという言葉から先が喋れない様子である。

「黙っていたら何も分からない……! あなたたち、いつからなの!?」

 そう叫ぶと、怒りと連動したように、一際大きな雷が強烈な稲光を放ちすぐ近くに落ちた。3人はひえっっと情けない悲鳴をあげている。

――話しを聞こうにも、これじゃ埒が明かないわ。

 そう思いながら、ふと継母の装飾品に目をやったところ、ゾッとするほどの嫌な予感が脳内を駆け巡った。

「その装飾品……」

 継母はすぐに察したのだろう。急いで弁明を始めた。

「これは、ちょっと素敵だったから借りたのよ。ごめんなさい。ほら、すぐに外すわ」

 雨に濡れて滑りやすいうえ、震えが止まらない手を使い、継母は手間取りながら首元のネックレスを外した。

 その瞬間、私は浮遊魔法を用い、急いで継母の手から母の形見であるネックレスを取り返した。

 そして、母の形見以外にも違和感を覚えた装飾品について尋ねた。

「どうしたのよ。その指輪にイヤリングにブローチに髪飾りは……?」

 すると、継母は完全に動揺した様子で説明を始めた。

「これは、あなたのお父様が私にくれた――」
「いいえ、そんなわけないわ。その指輪、少なくともお父様が送ったものではないはずよ。だって、すべて最新のデザインじゃない」

 私の魔導士学校の同級生には、アクセサリーの物持ちを良くするために、ちょっとした保護魔法を付与する専門の仕事をしている友人がいる。

 その子に会ったときに、今の流行や最新のデザインなどを何度も見せてもらった。だからこそ、間違えるわけが無かった。

 嘘がばれて窮地に立たされたと気付いた今の継母からは、いつもの偉そうで冷たく厳しい様子は一切見られない。

 そう思っていると、継母はなりふり構っていられないといった様子で謝り出した。

「ごめんなさい! 本当のことを言ったら、あなたに怒られると思ったから……!」
「言い訳は結構よ。嘘しか言わないあなたから聞くことは何もない。それに怒られると思ったですって? なら、望み通りにしてあげるわ」

 パチンと指を鳴らし、継母が装着していたアクセサリーすべて、3人の目の前に浮かばせた。

「インフェルノ」

 そう呟き、それらの装飾品を3人の目の前で、見せしめのように一瞬にして燃やし尽くした。そして次に、裏切りの張本人である新郎新婦に視線を移し睨みつけた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら
恋愛
「どうしてよりによって、18歳で破滅する悪役令嬢に生まれてしまったのかしら」  こうなったら引きこもってフラグ回避に全力を尽くす!  そう決意したリアナは、聖女候補という肩書きを使って世界樹の塔に引きこもっていた。そしていつしか、聖女と呼ばれるように……。  うまくいっていると思っていたのに、呪いに倒れた聖騎士様を見過ごすことができなくて肩代わりしたのは「18歳までしか生きられない呪い」  これまさか、悪役令嬢の隠し破滅フラグ?!  18歳の破滅ルートに足を踏み入れてしまった悪役令嬢が聖騎士と攻略対象のはずの兄に溺愛されるところから物語は動き出す。 小説家になろうにも掲載しています。

「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました~私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前?今更言われても、もう遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢フィーア・エメラインは、地味で効果が現れるのに時間がかかる「大地の浄化」の力を持っていたため、派手な治癒魔法を使う異母妹リシアンの嫉妬により、「偽聖女」として断罪され、魔物汚染が深刻な獣人族の国へ追放される。 絶望的な状況の中、フィーアは「冷酷な牙」と恐れられる最強の獣人王ガゼルと出会い、「国の安寧のために力を提供する」という愛のない契約結婚を結ぶ。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...