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15話 エリクサー
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私が昂る感情を露わにしたその瞬間、突然騎士団の訓練所周辺に雪が降り出した。冬でもないのにだ。
――ギル様、私しばらく力のコントロールが出来そうにないかも……。
ふと、ギル様を思い出し心の中で弱音を吐いていた。一方で魔導士であるカイルはこの異常気象に何かを察したのだろう。私に問いかけてきた。
「この雪、もしかしてクリスタの力か……? とりあえず落ち着けよ。どうしたんだよ。あんなにレアード様と……」
カイルは何も知らないから仕方が無いが、もう金輪際あの男の話は聞きたくない。だからこそ、今日を境にあの男の話をしないでもらうため、カイルに説明することにした。
「一度しか言わないから、今日以降私の前でそいつの名前を出さないで。あの男、私が試練から帰ってきた日に、教会で結婚式をしてたの」
そう告げると、カイルも騎士団長様も目を白黒させた。そして、カイルが驚いた勢いのまま尋ねてきた。
「そんなわけ……っ誰とだよ!?」
「私の妹とよ。いや、もう昨日で縁を切ったから他所の娘ね。次あいつらに会ったら、サンダーボルトで一撃よ。丸焦げにしてやるんだからっ……」
気を許したカイルがいるからだろう。つい語気が荒くなる。その一方で、カイルも騎士団長様も私の話を聞いて絶句していた。
――もう最低限の情報は伝えたから、この話は終わりで良いわよね。
これ以上このことについて考えたら、心が死んでしまうかもしれないもの……。
今一度話しを仕切り直そうと思い、私は2人に声をかけた。
「もうこの話は終わり! 私は騎士団長様に用事があって来たんです!」
そう言ったところ、カイルは怒った表情で、ちょっと用事が出来たわと言い、すくっと立ち上がった。
「クリスタ、後で魔塔に行ったとき、絶対に測定しとけよ!」
そう言うと、カイルはどこかへと走り去って行った。そのため、私は騎士団長様と2人きりになってしまった。
すると、騎士団長様がおもむろに来ていた上着を脱ぎ始めた。そして、脱いだその上着を私の肩にそっと掛け、声をかけてきた。
「ここにいては身体を冷やしてしまいます。とりあえず、場所を移しましょうか」
――確かに雪が降ってるし寒いからすぐに冷えそう。
というか、私が降らせてしまっている雪なんだけどね……。
そう思いながらも騎士団長様の意見に賛同し、場所を移動することにした。私は施設について知らないため、騎士団長様が進む道に従って歩みをすすめた。
すると、第3騎士団団長室と書かれた部屋の前へとたどり着いた。そして、騎士団長様はエスコートするように私を部屋の中へと誘った。
その後、促されるまま席に座っていると、騎士団長様はしれっと飲み物を出してくれた。その飲み物は、コーヒーでも紅茶でもなく、ココアだった。
――なぜココア?
まあ、研究の時は糖分が取りたくて好んで飲んでいるから大歓迎ではあるけど……。
久しぶりだから嬉しいななんて思っていると、騎士団長様が話しかけてきた。
「それで私にどのようなご用事でしょうか?」
「ココアありがとうございます。さあ、やっと本題に入れますね。騎士団長様!」
「エンディミオンと及び下さい。敬称も不要です」
――え? なぜ?
騎士団も魔導士も、組織内にいるときは身分の一切を無視するルールだから、そうしたいのかも。
でも敬称無しは無理だわ……。
「流石にルアン公爵家の方に敬称無しは無理です。エンディミオン卿ではだめですか?」
「……ダメじゃないです。お好きなようにお呼びくださいっ」
そう言うと、彼は恥じらう乙女のように頬をポッと赤く染めた。
――なぜ恥じらう!?
なんかちょっと気まずいじゃない。
予想外の反応に戸惑ったものの、私は話を続けることにした。
「エンディミオン卿が、試練前にこちらを渡してくれましたよね」
そう言って、カバンからハンカチを出して見せた。すると、そのハンカチを見たエンディミオン卿は華やぐような笑顔を見せた。
「っ……! 持っていてくださったのですか!」
そう言うと、嬉しそうに少し顔を赤らめている。
「私、この試練にこのハンカチが無かったら、絶対に帰って来られませんでした。エンディミオン卿のおかげで帰って来られたということで、直接お礼を言いたくて今日はこちらに参りました。本当にありがとうございます。このハンカチは家宝にいたします」
このハンカチが無かったら死んでいたし、ギル様とあんな出会いも無かった。ギル様が早くも恋しい。そう思えるのも、このハンカチのおかげ様様である。
そんな思いから、エンディミオン卿の感謝を告げたが、エンディミオン卿は固まったまま話さなくなった。
「エンディミオン卿?」
先ほどまで生き生きとしていたエンディミオン卿だったが、一点を見つめて突然黙り込んだため、心配になり彼の顔を覗き込んだ。
すると、エンディミオン卿は止められていた時間が再び動き出したかのように話し出した。
「嬉しさを噛み締めておりました……。実は、そのハンカチ私が刺繍したものなのです。そのハンカチがクリスタ様の為になったのなら、本当に良かったです」
――え!?
この今目の前にいる一国の騎士団長、しかも公爵家の令息が刺繍したと言うの!?
全く想像がつかないんだけど!?
あまりにも衝撃な事実を聞かされ、つい聞き返した。
「エンディミオン卿が自ら刺繍してくださったんですか?」
「はい。下手で不出来なのは承知ですが、クリスタ様には人生を救われましたので、何か恩返しができればと、クリスタ様の無事を願い、全身全霊をかけて縫いました」
恥じらった様子でそう告げるエンディミオン卿に、ついつい動揺してしまう。
――いや、重いし熱いしどうしたの?
しかも、私あなたのことを救った覚えなんて無いんですけど……。
色々思い返してみたが、エンディミオン卿のことを助けたという心当たりは一切無い。
これは考えても一生思い出すことは無いだろうと思い、お礼と共に単刀直入にエンディミオン卿に問うた。
「そっ、そこまでしてくださったんですね。ありがとうございます。ははっ……。ですが、私エンディミオン卿のことを救った心当たりが無くて……」
「いいえ。間違いなくあなたは私を2回救ってくださいました。あなたが居なければ、私は今こうしてここにいません。1度目は、あなたの開発したエリクサーのおかげです」
エリクサーそれは確かに私が開発した薬だ。大多数の人々に貢献できればと開発した薬はあったが、エンディミオン卿が言うエリクサーはその薬の上位互換バージョンである。
開発過程で偶然作り出すことができた奇跡の薬だ。だからこそ、エリクサーと大層な名前が付いた。
――上層部は私にエリクサーの被験者を匿秘にしていたけれど、エンディミオン卿だったの!?
あの薬は生きているのに眠り続けてしまう、いわば、植物人間状態の人を覚醒させる薬……。
エンディミオン卿がそんな状態だったなんて知らなかったわ……。
知らなかったエンディミオン卿の一面を知り驚いた。しかし、どうりでエンディミオン卿は社交界に現れた時に、突然現れたという印象が強かったのだと納得した。
――でも、2回……?
もう1つは何だろうと疑問に思ったが、もう1つの私があなたを助けたことは何ですか!? と尋ねるのは少々抵抗感があった。何だか恩着せがましい気がしたからだ。
そのため、とりあえず私が開発した薬がエンディミオン卿を助けたということだけを、今は噛み締めることにした。
――ギル様、私しばらく力のコントロールが出来そうにないかも……。
ふと、ギル様を思い出し心の中で弱音を吐いていた。一方で魔導士であるカイルはこの異常気象に何かを察したのだろう。私に問いかけてきた。
「この雪、もしかしてクリスタの力か……? とりあえず落ち着けよ。どうしたんだよ。あんなにレアード様と……」
カイルは何も知らないから仕方が無いが、もう金輪際あの男の話は聞きたくない。だからこそ、今日を境にあの男の話をしないでもらうため、カイルに説明することにした。
「一度しか言わないから、今日以降私の前でそいつの名前を出さないで。あの男、私が試練から帰ってきた日に、教会で結婚式をしてたの」
そう告げると、カイルも騎士団長様も目を白黒させた。そして、カイルが驚いた勢いのまま尋ねてきた。
「そんなわけ……っ誰とだよ!?」
「私の妹とよ。いや、もう昨日で縁を切ったから他所の娘ね。次あいつらに会ったら、サンダーボルトで一撃よ。丸焦げにしてやるんだからっ……」
気を許したカイルがいるからだろう。つい語気が荒くなる。その一方で、カイルも騎士団長様も私の話を聞いて絶句していた。
――もう最低限の情報は伝えたから、この話は終わりで良いわよね。
これ以上このことについて考えたら、心が死んでしまうかもしれないもの……。
今一度話しを仕切り直そうと思い、私は2人に声をかけた。
「もうこの話は終わり! 私は騎士団長様に用事があって来たんです!」
そう言ったところ、カイルは怒った表情で、ちょっと用事が出来たわと言い、すくっと立ち上がった。
「クリスタ、後で魔塔に行ったとき、絶対に測定しとけよ!」
そう言うと、カイルはどこかへと走り去って行った。そのため、私は騎士団長様と2人きりになってしまった。
すると、騎士団長様がおもむろに来ていた上着を脱ぎ始めた。そして、脱いだその上着を私の肩にそっと掛け、声をかけてきた。
「ここにいては身体を冷やしてしまいます。とりあえず、場所を移しましょうか」
――確かに雪が降ってるし寒いからすぐに冷えそう。
というか、私が降らせてしまっている雪なんだけどね……。
そう思いながらも騎士団長様の意見に賛同し、場所を移動することにした。私は施設について知らないため、騎士団長様が進む道に従って歩みをすすめた。
すると、第3騎士団団長室と書かれた部屋の前へとたどり着いた。そして、騎士団長様はエスコートするように私を部屋の中へと誘った。
その後、促されるまま席に座っていると、騎士団長様はしれっと飲み物を出してくれた。その飲み物は、コーヒーでも紅茶でもなく、ココアだった。
――なぜココア?
まあ、研究の時は糖分が取りたくて好んで飲んでいるから大歓迎ではあるけど……。
久しぶりだから嬉しいななんて思っていると、騎士団長様が話しかけてきた。
「それで私にどのようなご用事でしょうか?」
「ココアありがとうございます。さあ、やっと本題に入れますね。騎士団長様!」
「エンディミオンと及び下さい。敬称も不要です」
――え? なぜ?
騎士団も魔導士も、組織内にいるときは身分の一切を無視するルールだから、そうしたいのかも。
でも敬称無しは無理だわ……。
「流石にルアン公爵家の方に敬称無しは無理です。エンディミオン卿ではだめですか?」
「……ダメじゃないです。お好きなようにお呼びくださいっ」
そう言うと、彼は恥じらう乙女のように頬をポッと赤く染めた。
――なぜ恥じらう!?
なんかちょっと気まずいじゃない。
予想外の反応に戸惑ったものの、私は話を続けることにした。
「エンディミオン卿が、試練前にこちらを渡してくれましたよね」
そう言って、カバンからハンカチを出して見せた。すると、そのハンカチを見たエンディミオン卿は華やぐような笑顔を見せた。
「っ……! 持っていてくださったのですか!」
そう言うと、嬉しそうに少し顔を赤らめている。
「私、この試練にこのハンカチが無かったら、絶対に帰って来られませんでした。エンディミオン卿のおかげで帰って来られたということで、直接お礼を言いたくて今日はこちらに参りました。本当にありがとうございます。このハンカチは家宝にいたします」
このハンカチが無かったら死んでいたし、ギル様とあんな出会いも無かった。ギル様が早くも恋しい。そう思えるのも、このハンカチのおかげ様様である。
そんな思いから、エンディミオン卿の感謝を告げたが、エンディミオン卿は固まったまま話さなくなった。
「エンディミオン卿?」
先ほどまで生き生きとしていたエンディミオン卿だったが、一点を見つめて突然黙り込んだため、心配になり彼の顔を覗き込んだ。
すると、エンディミオン卿は止められていた時間が再び動き出したかのように話し出した。
「嬉しさを噛み締めておりました……。実は、そのハンカチ私が刺繍したものなのです。そのハンカチがクリスタ様の為になったのなら、本当に良かったです」
――え!?
この今目の前にいる一国の騎士団長、しかも公爵家の令息が刺繍したと言うの!?
全く想像がつかないんだけど!?
あまりにも衝撃な事実を聞かされ、つい聞き返した。
「エンディミオン卿が自ら刺繍してくださったんですか?」
「はい。下手で不出来なのは承知ですが、クリスタ様には人生を救われましたので、何か恩返しができればと、クリスタ様の無事を願い、全身全霊をかけて縫いました」
恥じらった様子でそう告げるエンディミオン卿に、ついつい動揺してしまう。
――いや、重いし熱いしどうしたの?
しかも、私あなたのことを救った覚えなんて無いんですけど……。
色々思い返してみたが、エンディミオン卿のことを助けたという心当たりは一切無い。
これは考えても一生思い出すことは無いだろうと思い、お礼と共に単刀直入にエンディミオン卿に問うた。
「そっ、そこまでしてくださったんですね。ありがとうございます。ははっ……。ですが、私エンディミオン卿のことを救った心当たりが無くて……」
「いいえ。間違いなくあなたは私を2回救ってくださいました。あなたが居なければ、私は今こうしてここにいません。1度目は、あなたの開発したエリクサーのおかげです」
エリクサーそれは確かに私が開発した薬だ。大多数の人々に貢献できればと開発した薬はあったが、エンディミオン卿が言うエリクサーはその薬の上位互換バージョンである。
開発過程で偶然作り出すことができた奇跡の薬だ。だからこそ、エリクサーと大層な名前が付いた。
――上層部は私にエリクサーの被験者を匿秘にしていたけれど、エンディミオン卿だったの!?
あの薬は生きているのに眠り続けてしまう、いわば、植物人間状態の人を覚醒させる薬……。
エンディミオン卿がそんな状態だったなんて知らなかったわ……。
知らなかったエンディミオン卿の一面を知り驚いた。しかし、どうりでエンディミオン卿は社交界に現れた時に、突然現れたという印象が強かったのだと納得した。
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