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42 女神フレイア
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「ヴァルド様が出かけているうちに、客間の掃除をしましょうか。その後はシドの部屋もしましょう」
昨日シドから話を聞いた私は、いつも通り仕事ができるほど回復していた。
今日はベリーとアールが二人とも家にいる。
そのため、念入りな掃除をするのにうってつけだと、二人に声をかけた。
「シド様の部屋が先じゃダメ? 今日ヴァルド様が帰ってくるの遅いと思うよ」
「そうなの?」
「今日は神合会議だって、ルニーさんが言ってたです!」
いつの間にそんな話をしていたんだろう。でも、それなら別にどちらの部屋を先に掃除しようが問題ない。
「そうなのね。じゃあ、シドの部屋からしましょうか?」
「うん!」
「はいなのです!」
元気のいい返事をした二人は、自分の背よりも高い掃除道具を抱えてシドの部屋へと駆けて行った。
◇◇◇
「ふう、やっと二部屋の掃除が終わったです!」
「ボク、ちょっと疲れちゃった」
「二人ともお疲れ様。ちょっと休憩しましょうか?」
シドとヴァルド様の部屋の掃除を済ませた私たちは、疲れを癒すため休憩を取ることにした。
私は二人に掃除協力のご褒美として、二人の好物のオレンジジュースを出した。
「おいしいのです~!」
「今日のは酸味が合って、今のボクにぴったりだよ」
「ふふっ、良かった」
こうして、私たちはとても平和な気持ちでゆったりと休憩をしていた。しかし、その平和は一瞬にして乱された。
「おい、誰か出て来ぬか!」
突然、女性の声が玄関の扉の外から聞こえた。
「ぼくが見に行ってくるです!」
「いや、ちょっと待って」
何だかとても嫌な予感がする。ヴァルド様が来たときとは違って、気軽に出てはいけないような。
「私たちには、対応しきれないかもしれないわ」
よし、居留守を使おう。そう思った時だった。
バタンっ――そんな大きな音を立てて、玄関が勝手に開かれた。
その突然の出来事に、私は本能的にアールとベリーを引き寄せるように抱き留め、そのまま玄関の方を見て息を呑んだ。
一目で恐怖を感じるほど、非常に怒った様子の女性が立っていた。言い表す表現が思いつかないほど、絶世の美女だった。
女性はそのまま建物内に足を踏み入れ、玄関から見える範囲をぐるりと見まわす。
そして私たちを見つけると、柳眉を顰めた。
「女?」
そう言うと、彼女は長い足を生かしてあっという間に私たちとの距離を詰め問うてきた。
「そなた、誰じゃ」
「わ、私は……」
名前を聞いているわけではなさそうだ。この場合、この家で働くメイドと言った方が無難だろうか。
――そもそも、この人は誰なのよ。
そんなことを考えていると、聞こえるはずの無い人物の声が聞こえてきた。
「こいつはただの使用人です」
その声が聞こえた方を見ると、信じられないことにシドが立っていた。
彼が私たちと女性のあいだに割って入ると、女性は顔を顰めて口を開いた。
「だが、女じゃ。私は浮気など許さぬぞ」
「浮気も何も、あなたと結婚する気はないです。それに、こいつはただの人間。そのうえ貧相な女ですし、相手に値しませんよ」
シドから放たれる言葉が、グサグサと心に刺さる。しかし、更なる言葉が私の胸を抉った。
「そもそも、こいつはもう少しで解雇する予定ですし」
「ほう?」
「もう解決したでしょう。行きますよ」
シドはそう言うと、私を終始蔑むように睨んでいた女性を連れて家から出て行った。
その瞬間、庇うように抱き寄せていたベリーとアールが、あまりの衝撃に茫然とする私に必死な声をかけてきた。
「オーロラ、シド様の言ったことは嘘だからね!?」
「オーロラさん、信じちゃダメなのですよ!」
「本当にシド様が辞めさせるなんて言ったら、ボクがちゃんと止めるから!」
そう、きっとシドが言っていたことは嘘だと思う。
だけど、嘘だと分かっていても言われた言葉に堪えずにはいられなかった。
「うん、ありがとう……」
励ましてくれる二人に何とか言葉を返す。
しかし、それ以上の言葉が出てこない私は、結局二人に心配をかけることになってしまった。
何と不甲斐ないことだろうか。
そう思いながら私はさきほどの出来事を忘れたくて、仕事をこれでもかと詰め込み一心不乱に働いた。
それからどれだけの時間が経っただろうか。
気付けば心配そうな顔をしたヴァルド様とルニーさんが、廊下の掃除をしていた私の前に姿を現した。
「あっ……ヴァルド様、ルニーさん。お帰りなさい」
「オーロラ、大丈夫かい? さっき双子たちから聞いたよ」
「フレイア様がここに来たんでしょ?」
ルニーさんが出したフレイアという名前に、思わず顔が暗くなってしまう。
そんな中、ヴァルド様は私に歩み寄りある提案をしてきた。
「ねえ……オーロラ。私といればつらい思いはさせないよ。シドとの契約が切れたら、本当に私のところに来ないか?」
「っ……」
「すぐに答えられないだろうが、考えてみてくれ」
ヴァルド様の言葉に驚き顔を上げると、隣のルニーさんがヴァルド様に賛同するように頷いた。
いったいどうするのが私にとって、そしてシドにとって正解なんだろうか。
考えても簡単に答えが出てこない問題に、私は再び頭を悩ませるのだった。
昨日シドから話を聞いた私は、いつも通り仕事ができるほど回復していた。
今日はベリーとアールが二人とも家にいる。
そのため、念入りな掃除をするのにうってつけだと、二人に声をかけた。
「シド様の部屋が先じゃダメ? 今日ヴァルド様が帰ってくるの遅いと思うよ」
「そうなの?」
「今日は神合会議だって、ルニーさんが言ってたです!」
いつの間にそんな話をしていたんだろう。でも、それなら別にどちらの部屋を先に掃除しようが問題ない。
「そうなのね。じゃあ、シドの部屋からしましょうか?」
「うん!」
「はいなのです!」
元気のいい返事をした二人は、自分の背よりも高い掃除道具を抱えてシドの部屋へと駆けて行った。
◇◇◇
「ふう、やっと二部屋の掃除が終わったです!」
「ボク、ちょっと疲れちゃった」
「二人ともお疲れ様。ちょっと休憩しましょうか?」
シドとヴァルド様の部屋の掃除を済ませた私たちは、疲れを癒すため休憩を取ることにした。
私は二人に掃除協力のご褒美として、二人の好物のオレンジジュースを出した。
「おいしいのです~!」
「今日のは酸味が合って、今のボクにぴったりだよ」
「ふふっ、良かった」
こうして、私たちはとても平和な気持ちでゆったりと休憩をしていた。しかし、その平和は一瞬にして乱された。
「おい、誰か出て来ぬか!」
突然、女性の声が玄関の扉の外から聞こえた。
「ぼくが見に行ってくるです!」
「いや、ちょっと待って」
何だかとても嫌な予感がする。ヴァルド様が来たときとは違って、気軽に出てはいけないような。
「私たちには、対応しきれないかもしれないわ」
よし、居留守を使おう。そう思った時だった。
バタンっ――そんな大きな音を立てて、玄関が勝手に開かれた。
その突然の出来事に、私は本能的にアールとベリーを引き寄せるように抱き留め、そのまま玄関の方を見て息を呑んだ。
一目で恐怖を感じるほど、非常に怒った様子の女性が立っていた。言い表す表現が思いつかないほど、絶世の美女だった。
女性はそのまま建物内に足を踏み入れ、玄関から見える範囲をぐるりと見まわす。
そして私たちを見つけると、柳眉を顰めた。
「女?」
そう言うと、彼女は長い足を生かしてあっという間に私たちとの距離を詰め問うてきた。
「そなた、誰じゃ」
「わ、私は……」
名前を聞いているわけではなさそうだ。この場合、この家で働くメイドと言った方が無難だろうか。
――そもそも、この人は誰なのよ。
そんなことを考えていると、聞こえるはずの無い人物の声が聞こえてきた。
「こいつはただの使用人です」
その声が聞こえた方を見ると、信じられないことにシドが立っていた。
彼が私たちと女性のあいだに割って入ると、女性は顔を顰めて口を開いた。
「だが、女じゃ。私は浮気など許さぬぞ」
「浮気も何も、あなたと結婚する気はないです。それに、こいつはただの人間。そのうえ貧相な女ですし、相手に値しませんよ」
シドから放たれる言葉が、グサグサと心に刺さる。しかし、更なる言葉が私の胸を抉った。
「そもそも、こいつはもう少しで解雇する予定ですし」
「ほう?」
「もう解決したでしょう。行きますよ」
シドはそう言うと、私を終始蔑むように睨んでいた女性を連れて家から出て行った。
その瞬間、庇うように抱き寄せていたベリーとアールが、あまりの衝撃に茫然とする私に必死な声をかけてきた。
「オーロラ、シド様の言ったことは嘘だからね!?」
「オーロラさん、信じちゃダメなのですよ!」
「本当にシド様が辞めさせるなんて言ったら、ボクがちゃんと止めるから!」
そう、きっとシドが言っていたことは嘘だと思う。
だけど、嘘だと分かっていても言われた言葉に堪えずにはいられなかった。
「うん、ありがとう……」
励ましてくれる二人に何とか言葉を返す。
しかし、それ以上の言葉が出てこない私は、結局二人に心配をかけることになってしまった。
何と不甲斐ないことだろうか。
そう思いながら私はさきほどの出来事を忘れたくて、仕事をこれでもかと詰め込み一心不乱に働いた。
それからどれだけの時間が経っただろうか。
気付けば心配そうな顔をしたヴァルド様とルニーさんが、廊下の掃除をしていた私の前に姿を現した。
「あっ……ヴァルド様、ルニーさん。お帰りなさい」
「オーロラ、大丈夫かい? さっき双子たちから聞いたよ」
「フレイア様がここに来たんでしょ?」
ルニーさんが出したフレイアという名前に、思わず顔が暗くなってしまう。
そんな中、ヴァルド様は私に歩み寄りある提案をしてきた。
「ねえ……オーロラ。私といればつらい思いはさせないよ。シドとの契約が切れたら、本当に私のところに来ないか?」
「っ……」
「すぐに答えられないだろうが、考えてみてくれ」
ヴァルド様の言葉に驚き顔を上げると、隣のルニーさんがヴァルド様に賛同するように頷いた。
いったいどうするのが私にとって、そしてシドにとって正解なんだろうか。
考えても簡単に答えが出てこない問題に、私は再び頭を悩ませるのだった。
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