BLINDFOLD

雲乃みい

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第五夜 性少年の嫉妬

第12話

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 GWがあけてまたいつもの毎日が始まって、温泉旅行のことでよく実優ちゃんと話したりした。
 松原とはよくどこか出掛けているみたいだけど優斗さんも一緒っていうのが、いままでにないことだからすごくテンションがあがってるみたいだった。
 大人二人が仕事で忙しくて疲れてるから旅館でゆっくりするのをメインに、でも旅行を満喫したいっていうのもあるから旅館へ行くまでの間にある観光スポットをチェックして予定を立てていった。
 せっかく行くんだったら――ちゃんと楽しくしたい。
 俺もできるだけテンション上げるようにしてあっという間にやってきた旅行当日。
「……大丈夫、捺くん?」
 俺は寝不足と疲れでテンションが落ちていた。
「だ、大丈夫ー!」
 朝の8時に出発した車の中。
 運転はまず松原で助手席に実優ちゃん、後ろに俺と優斗さんで座っていた。
 シートにもたれて目をしばたたかせてる俺を優斗さんが心配そうに見つめてくる。
 実優ちゃんも助手席から同じく心配してくれてるから、
「全然平気!」
 ってガッツポーズ。
「2時間近くドライブなんだから寝てればいい」
 そう言ったのはハンドルを握る松原で、「そうだね。寝てていいよ」って優斗さんも言ってくる。
「うん。まぁ眠くなったら」
 なんて笑うけど、ぶっちゃけ眠かった。
 あー、よりによって旅行当日に寝不足な俺。
 なんでかというと従兄のマサ兄が開いているバーできのう貸し切りパーティがあって、人出が足りないからどうしてもって言われて手伝ったからだ。
 そんなに遅くならないはずだったのに、異様に盛りあがったパーティのせいであっというまに午前様。
 片付けはしなくていいって言われたけどマサ兄だけに任せるのも気の毒だったから付き合って、そんで家に帰りついたのは朝の4時だった。
 それからシャワー浴びて寝ようとしたら、朝帰りのねーちゃんに捕まった。
 ケンカしてきたらしい彼氏の愚痴を延々聞かされたけど途中から記憶はない。
 気づいたらリビングのソファーで寝てて、起きたのは迎えがきたときだった。
 体力には自信あるほうだったけど昨日は結構酒も飲まされたしこき使われたし数時間の睡眠じゃ疲れは取れてなかった。
 高速に乗ってスムーズに走る車の振動に気合入れてもうとうとしてしまう。
 本当ならお菓子食いながら喋りまくるはずだったのに、って思ってる間にも意識は遠のいていってふらっとしたら頭を撫でられた。
 ハッとして目を開けると優斗さんの肩に頭を乗せてしまってたみたいで慌てて離れた。
「ごめん」
 目を擦りながら言うと、優斗さんが苦笑する。
「なんで謝るの」
「だって、せっかくの旅行なのに」
「だからいまのうちに休んでおけばいいよ。最初の目的地までは時間かかるんだから、ね?」
 優斗さんは俺の頭から肩に手をすべらせて引き寄せた。
 自然と肩じゃなくて優斗さんの脚に横にさせられる。
 それはいわゆる膝枕。
 二人っきりならともかく前には松原も実優ちゃんもいるから、また慌てて離れようとした。
 だけど頭を押さえるように撫でられてそのまま寝かされる。
「いいから寝てなさい」
 諭すように優しく言われて髪の毛を撫でてくる。
 前の二人が明らかに俺達のことを一瞬ちらり見て笑いあっているのが見えたからすっげぇ恥ずかしかったけど、結局目を閉じていつのまにか寝てしまっていた。
「捺くん、着いたよ」
 優斗さんの声に起こされて目覚めたらもう温泉地についていた。
 俺が膝占領してたせいで途中休憩もできなかった優斗さんに謝って、大丈夫だよって慰められて、車から降りた。
 実優ちゃんと松原にも謝って俺達が向かったのは公園。
 公園っていっても植物園とかクラフトハウスなんかがいろいろ入ってる。
 そこのカフェで昼食取ってから散策開始だ。
 クラフトハウスで吹きガラス体験ができるっていうから俺と実優ちゃんでチャレンジしたり。
「――へたくそ」
「がんばれー」
 スタッフさんにアシストしてもらいながら実優ちゃんがチャレンジしてるんだけど、あたりまえだけど初心者だからなかなか綺麗にはガラスを膨らませられないでいる。
 松原がため息混じりに言って、俺はとりあえず応援。
 必死で頬を膨らませてガラスに息を吹き込んでる実優ちゃんは可愛い。
 優斗さんはそんな実優ちゃんを楽しそうに眺めてるし。
「……難しい」
 体験を終えた実優ちゃんが疲れた顔で呟くと、松原が鼻で笑う。
「お前はもともと不器用だからな」
「不器用じゃないよ! 器用だよ! ね!?」
 必死な実優ちゃんに俺と優斗さんで笑って頷いて、次に俺が吹きガラスにチャレンジした。
 熱く溶けたガラスを膨らませるのは見てるだけでも難しそうだったけどやっぱり難しい。
 ガラスの縁を広げるのもすげぇ大変だったけど、優斗さんも手伝ってくれてなんとか実優ちゃんよりは形になったグラスができた。
 グラスは冷やさなきゃいけないらしいから明日帰りに受け取ることにした。
 そのあとは植物園見たり、薔薇園見たり。
 正直来るまでは面白いのか疑問だったけど、優斗さんと一緒ならなんでも楽しいってことがわかった。
「綺麗だね」
 たくさんのいろんな薔薇が植えられた庭を実優ちゃんたちとは別行動で優斗さんと二人で歩く。
「うん。俺こんなに薔薇の種類があるなんて知らなかったな」
 普段花屋さんとか通り過ぎるだけだし、興味もなかったし。
 でもこうやって一面に咲いているのを見るとやっぱり綺麗だなすげぇなって思える。
 つーか好きな人と一緒だとこういうの見て回るのも新鮮で楽しい。……って本当に俺乙女思考だな。
 内心苦笑しつつ、薔薇以外にも園内にはいろんな植物があって結構詳しい優斗さんに話を聞きながら見て回った。
 40分くらい二人見て回ってから、最初にランチしたカフェで実優ちゃんたちと合流した。
「ね、捺くん、アイス食べない?」
「アイス?」
「うん! ほら、種類たくさんあるの!」
 実優ちゃんが指さす先を見たら数種類のソフトクリームの写真。
「食べる食べる」
 なんかすっげぇ暑いし、喉も乾いてたらか実優ちゃんと一緒に買いに行く。
 松原はいらないって言って喫煙スペースで煙草吸って、優斗さんは俺達のあとについてきてた。
「ゆーにーちゃんも買う?」
「そうだな……。捺くんはなんにする?」
「え? えー……なんにしよう?」
「薔薇ソフトとか美味しそうじゃない?」
「……薔薇って何味?」
「薔薇味? じゃあこれは? 紫陽花ソフトだって」
「……」
 紫陽花って味すんの。
 って思わずツッコミたかったけど、たぶん「紫陽花の味」って言われそうだったから黙っておいた。
 そんな実優ちゃんとのやりとりを見ていた優斗さんが可笑しそうに笑ってて、目が合うと少し首を傾けてどうすると訊かれた。
「うーん……」
 迷う俺の横で実優ちゃんは薔薇ソフトに決めたらしく、さっそく注文してる。
「バニラにしようかなー」
「ここまで来て?」
「えー……じゃあ紫陽花?」
「なにごとも冒険っていうしね? 俺も食べてみたいな」
「……じゃあ、半分個する?」
「する」
 目を細めて即答する優斗さんに、じゃあ紫陽花にするって言って注文した。



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