BLINDFOLD

雲乃みい

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第六夜 それは、まるで

第9話

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 頭上で花火の上がる音。
 風にのって微かに喧騒もまぎれて聞こえてくる。
「……んっ」
 誘うように舌の表面や裏筋を舐め、吸い上げればすぐに捺くんも舌を動かしだした。
 せっかくの花火なのに俺のエゴだけで台無しにしてしまっている。
 ただの友人から電話があっただけ、それだけだ。別にそれを捺くんが知ったからといって、これからの時間がなんら変わるわけでもない。
折り返し電話かメールかして、それで終わるだけの話だ。
 別にそれを俺が邪魔する必要なんてない。
 なのに――自己嫌悪が沸くのに、旅行先でまであの青年の名前を捺くんの口から聞きたくないと思ってしまう。
 俺だけ見ていればいいのに、とよこしまな独占欲が沸いてしまう。
 角度を変えて深めていくキスの合間、窓ガラスに映る花火の光のかけらが見えた。
 捺くんには花火が見えているだろうか。
 夏の熱気をそのまま移すように熱く疼きだすのを感じながら汗ばむ捺くんの身体に手を滑らせた。
「……優…斗さん……どうしたの……急に」
 ほんの少し上がった呼吸。
 ほんの少し潤んだ目。
「……急にシたくなった」
 窓ガラス一枚隔ててテーブルの上で小さくライトを点滅させている捺くんの携帯が目障りだ、なんて言える筈がない。
 くだらなさすぎる嫉妬。
 だけれど全部が全部それだけじゃなく、胸の内に巣食う暗いものは俺を焦らせる。
「花火見てただけなのに?」
 おかしそうに笑う捺くんに、そうだよ、と笑いながらまたその唇を食んだ。
 いつかは離れなければいけない日がくるのか、とか。
 こうしてあと何度旅行に行けるんだろうか、とか。
 なんでだろう、クロくんの存在を感じると――急かされているような気がする。
 タイムリミットはもうすぐだと言われているような気がしてしまう。
「……っん」
 捺くんの将来を慮っているのに、こうして彼の身体に唇を寄せ、独占しようとしている。
 ひどく矛盾していると理解しているのに――結局俺はきっと手放すことはできないだろう。
 だけど、でも、だけど――。
 思考だけが空回るように巡る。
 それを振り払うように膝をつき、捺くんのズボンを寛がせると取りだした半身に舌を這わせた。
「っ、ちょ、優斗さんっ」
 焦って身体を引こうとした捺くんだけれど後ろは窓で動くことはできない。
「花火見てていいよ」
 視線を上げて言えば、捺くんは少し困ったような顔をしたけれど拒否はしなかった。
 窓に背をもたれかけたまま跪く俺の髪に手を差し入れ緩く掴む。
 俺を見下ろす目が欲に濡れ、その頬が朱にそまっていくのを見ながらどんどん硬度を増していく捺くんのものを口に含んで舌を絡めていく。
 花火が上がる音に紛れて捺くんの熱い吐息と掠れた声が落ちてくる。
 なにをしているんだろう、俺は。
 そう思うが一旦事をはじめてしまえば熱に溺れてしまうのは一瞬。
 咥内で大きくなった捺くんのものから滲みだす先走りを吸い上げ、舐め上げて、その行為に没頭する。
 響く打ち上げ花火の音が連打で、激しくなっていた。
 きっともうすぐ終わりなんだろう。
「……ゆ、とさん……っ」
 ぐっと俺の髪を掴む捺くんの手の力が強くなる。
 花火と夏の匂い、熱い空気。
 だけど俺が感じるのは捺くんの荒くなった呼吸と卑猥に響く水音。
「……ッ、も、やば……いっ……て」
 限界を知らせる掠れて低くなった声に、脈打つ熱い塊を絶頂へと追いやるためにきつく吸い上げながら手で扱く。
 そうして少しして捺くんの呻く声が聞こえ口の中に熱いものが吐き出された。
「……っは」
 同時にひと際大きな花火の上がる音が響き渡った。ラストだったんだろう、歓声も大きく聞こえてきた。
 射精したことで脱力した捺くんを片手で支えて一緒に立ち上がる。もう片手にそっと口内にたまったものを吐き出す。
 「……中……入らないの?」
 呼吸を整えながら捺くんが俺の手に視線を落とし、部屋へと流す。
「どっちでもいいよ」
 捺くんの唇を舐める。
 欲の残滓が舌に残っていてついてしまったのか、無意識に自分の唇をぺろっと舐めた捺くんは「マズっ」と呟いて嫌そうな顔をした。
 それに笑いながらキスを落とし舌を差し込む。舌を絡み合わせ、俺が舌で味わった捺くんの白濁の残りをわけるように擦りつけた。
「っん……」
 イヤそうだった割に積極的に舌を動かし、甘噛みしてくる捺くんの腰を引き寄せ白濁のついた手を後ろへと滑り込ませた。白濁を後孔に擦りつけて中へと塗りこみながら指をさしこむ。
「ッ……ふ……っあ」
 ぎゅっと捺くんが俺に抱きついてきてゆっくりと埋めた指を動かした。
 ――本当になにをしているんだろう。
 窓ガラス一枚。開けて一歩入れば部屋だというのに、わざわざこんなところで、なにをしているんだろう。
 快楽を与えるために指を動かしながら、自分の愚かさに自嘲して、やっぱり部屋に入ろうかと思った。
「ゆうと……さんっ……」
 なのに、やっぱり捺くんはあっという間に俺を堕としてしまう。
 "もっと"―――。
 と、ねだる捺くんに嫉妬だとか独占欲だとかそんなものはどうでもよくなって、ただひたすら熱に溺れてしまった。
 外だとか、一歩入れば部屋だとか関係ないことだと俺達は馬鹿みたいにその場で抱きあった。
 立ったまま捺くんの膝を片手で抱え上げて、捺くん自身の白濁と先走りとで濡らした後孔に欲棒をうずめて擦りあげて。
 まるでセックスを覚えたてのような、盛りのついた猫のような、そんな無我夢中さで声を押し殺しながらも身体を痙攣させている捺くんを突きあげた。
 やっぱり、本当になんど抱きあったって足りない、飽きない。
 汗ばんだ首筋に吸いついて、汗ごと舐めて吸い上げて赤い痕を残して。
 お互いが白濁を吐き出したときには汗まみれでのぼせそうなくらい暑くてたまらなかった。





「……っ…あっちぃ」
「ほんと暑いね」
 さっきまでの熱が冷めていけば残った熱は暑さだけ。
 汗をぬぐいながら、ふたり荒い息を吐いて顔を見合わせる。
「優斗さん、俺発見した」
 真面目な顔で捺くんが俺を見つめてきて「なに?」と訊きながら手を伸ばしてすでに氷が溶け切ったグラスを取った。
 捺くんに渡すと、先に飲んでいいよと返されて一口二口飲んで、また渡す。
 ごくごくと喉を鳴らしながら捺くんは一気に半分ほど飲んでまた真面目な顔で口を開いた。
「真夏で外でヤんのって体力消耗しすぎてヤバイと思う!」
 昼間だったら熱中症なってる!と、力説する捺くんに思わず吹き出してしまう。
「確かに、暑かったね。でも気持ちよかったよ」
「俺だってめちゃくちゃ気持ちよかったよ?」
 すぐに捺くんは笑って、キスしてきた。
 触れ合うだけの音を立ててするバードキス。
 でも何回もそうしていたら舌を絡めたくなってくる。
 唇を舐めたら、舐め返され、舌を絡めようとしたら離れていってしまった。
「続きは部屋でね」
 苦笑した捺くんが俺の手をとってようやく部屋に入った。
 「あー! 涼しいっ」
よく冷えた室温にホッとして――すっかり行為に夢中になって忘れていた携帯の存在を思い出す。
 テーブルへと視線を向けようとしたら手を引っ張られた。
「ね、風呂入ろうよ。汗流したいし、それに、ほらアレもアレだし」
「……アレ?」
 自然と捺くんを見て首を傾げる。
 汗を流したいのは俺も一緒だけれど、アレもアレってなんだろう?
 怪訝にする俺の前で捺くんはほんの少し顔を赤らめて、俺の耳元に唇を寄せる。
 ひそひそと、内緒話をするように俺達しかいないのに小声で話してくる捺くん。
「えっと……だから、その中出ししたから……一応出さなきゃいけないし」
「……」
「あ、いや、別にそのままでもいいんだよ? あの、別に俺は優斗さんのなら……って、わっ!!」
 本当にこの子はどれだけ翻弄してくれるんだろう。
 普段は快感に従順で俺を意図的に誘うけど、こうやって照れくさそうに無意識で俺を誘うときもある。
 その全部に惑わされて、さっきシたばかりだというのにまた繋がりたくなる。
 捺くんの身体を引き寄せてベッドに倒れ込んで深いキスを繰り返しした。
「ゆうとさん……、風呂は……っ」
「もう一回シてからね」
 エアコンのおかげで汗は引いていくけれど身体の芯はまだ熱いまま。服を脱ぎ捨て肌と肌を重ね合わせていった。
 それから俺達は旅先だというのに加減もできず、何度も抱きあい続けてしまった。





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