俺の人生をめちゃくちゃにする人外サイコパス美形の魔性に、執着されています

フルーツ仙人

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番外 三十 マルチバース異世界編 猟師のダリオとバグ有テオドール

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 それから、ダリオは仕事道具の複合弓の調整を行った。
 ダリオは特に弓使いとして優れているわけではないが、ほとんど百発九十九中くらいには獲物を仕留められる。
 それも、複合弓のおかげで、これは普通の反り弓と違い、滑車を使った弓である。
 滑車の仕組みから、命中精度も高く、少ない力でより矢速を出せる形状を考え、試作したものだ。この複合弓にカミソリのようなブロードヘッドの矢じりを合わせれば、鹿などくらいなら容易く狩れるのである。
 おそらく、熊でも問題ないだろうなとは思っているが、試す気は起こらない。
 なお、この複合弓は、通常の弓よりも可動部が多く、大きなエネルギーが弓にかかるため、威力も命中度も高いが、空打ちはできないし、下手をすると壊れてしまう。
「設計図でも売り出せば、一山当てられそうな気もするなぁ」
 ダリオの独り言に、膝に懐いていたテオドールが、キュ? と振り返った。
「まぁ、売る気はねぇんだけどな」
 ダリオはテオドールに言い聞かせた。
 売ったところで、複合弓が獣に向けられるばかりとも思えず、悲惨なことになりそうな気もして、ダリオは人前でこの弓を使ったことがない。
 わざわざ、普通の反り弓を人前用に用意しているくらいである。
 ダリオの体感では、弓使いの名人よりも、複合弓で一年訓練した素人の方がたぶん精度高いだろうなぁと思われるのだ。
 特に魔力もいらないので、誰にでも使える。反り弓と違って、膂力もさほどいらない。
 それこそ、成人前の少女でも、やりようによっては熊を仕留められるだろう。
 世に出たらヤバい……と技術秘匿の方に舵を切ったため、相変わらずの貧乏ぐらしだ。
「俺、ものづくり向いてると思うんだけど、平和なやつで、まっとうにレート交換も搾取されず生計立てたいよなぁ……」
 愚痴と言うには苦笑いで、滑車と弦の位置が平行になるよう調整しながら、このくらいかと思った時だ。
 ドンドンドンドン!!
 物凄い乱暴なノックで、ただでさえ立て付けが悪いダリオの家は崩壊しそうになった。比喩ではない。
「開けろ!!」
 テオドールと複合弓を慌てて隠し、ダリオは「乱暴にしないでください! 今開けます!」と玄関ドアに向かう。
 もはやほとんど無理やりこじ開けるようにして、ドアが先に開かれる方が早かった。錆びついたボロ蝶番はぶっ飛んでしまい、どれだけ暴力的に開けられたのか見るだけでわかる。
 こういう怪異もいるから、もし化け物だったらダリオは震えていたところだが、声は日中ダリオをこづいて連行した騎士のものだったので、その点の心配はなかった。
 体格の良いダリオよりもなお栄養満点で上背のある騎士たちが、怖い顔でずかずか家の中に押し入ってきた。
 見るからに貧乏ぐらしの様子に、軽蔑するような下に見るようなそれを隠さず、居丈高に命令する。
「殿下が至急お前をお呼びだ。すぐについて来い!」
 ダリオはというと、テオドールが隠したバスケットの中から這い出て来ないかヒヤヒヤした。
 早く家から出た方がよいと思い、従順な態度で従う。
(テオ、モンスターだし、見つかったら殺されるかもしれねぇ。ぜったい出てこないでくれ。すぐ帰ってくるからな……)
 そう思い、下を向くようにして騎士たちの後に従ったダリオだが、まさかそれから長い間自宅に帰れないとはその時思っていなかった。
 というのも、連れて行かれた先で判明したのは、ダリオが″つがい様″だったからである。
 日中の王子の突然の発作は、ダリオが近くに来たため起きたらしい。
 そうして、呆然とするダリオを、アドルフ王子が手放さなかったからなのだった。
 
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