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【ハッピーBL】
嫌いなアイツを倒す唯一の方法
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神々の時代────
若く美しい神ミルベルは、宿敵・ルカを倒すため、父神ハーダンから秘術を授かる。
それはミルベルの腹に埋められ、発動させるには腹の奥に対象を招き入れなくてはならない。
つまり、セックスだ。
「なぜ私が奴と契らなければならないのです!」
「だって二人は昔付き合ってたでしょ?」
目的を果たすため元カレを誘惑しなきゃいけなくなったツンデレと、倒される気は全然ない曲者が元鞘に収まる話。
【キーワード】
ファンタジー / 神✕神 / ツンデレ受け / 溺愛攻め / 元鞘
◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆
「最終手段じゃ。ミルベル、奴をその身でもって誘惑せよ」
最高神ハーダンのやれやれと言いたげな困り顔に、ミルベルは怒りを通り越して呆然とした。
なにやら用があると呼び出され、用件を聞く前になにかの術を掛けられ、それからこの物言いだ。
まずなんの話か聞かせろ。
ミルベルが噛みつきそうな顔で睨んでいるのに気づいたハーダンが、またしてもやれやれと疲れた様子で口を開く。
「ミルベル。おぬしに任せた『ルカ』の討伐、進捗は芳しくないようじゃな」
「っそれは……はい……ですが私は必ずあれを亡き者にし、」
「あぁいいんじゃ。おぬしがあれにとどめを刺せないことはもうわかっておる。おぬしは優しい子じゃからな」
「しかし……!」
結局言い返せず、ミルベルは唇を噛んで俯いた。
数多の神が支えるこの地において、ミルベルもまた神として生まれた。
光を司り、生きとし生けるものすべてに愛されるべしと生まれたミルベルは、望まれるままに優しく活発な青年へと成長した。
ミルベルは自身を愛するすべてのものを愛していたが、例外もいた。
それがルカだ。
ルカも同じく神だが、力は目の前の最高神ハーダンに匹敵するほどと言われる格の高い存在。
強い自己を持っていて、誰にも物怖じせず意見する、下々を差別せず教え導いてくれるルカを、かつてはミルベルも慕っていた。
しかし、いつしかルカは神々に争いの火種を撒き散らすようになってしまった。
「このままではルカのせいで我ら神が分断される。そうなれば他の種族や地界の者たちが黙っておらぬだろう。やがて戦火は人間たちへも降りかかる。今のうちに奴を止めねばならん」
「ですから、私が奴を討ちます!」
「あぁ、ミルベル、愛しい息子よ。他の追手と比べ、おぬしが最もルカを追い詰めたことに間違いはない。じゃからおぬしを置いて他に奴を倒せるものはおらぬと、わしは確信しておる」
「では……!」
「あぁ。先程掛けた術は、ルカを倒すための方策じゃ。その力を使えば確実に奴の力を削ぎ、神の時代の終焉という未来を跳ね除けることができよう。ついては、使い方を教える」
ルカを誘惑し、その腹の中へと誘い込め。
「…………は?」
「聞こえなかったか? いや聞こえていてその反応か。まぁ無理もない」
ハーダンは三度目のやれやれ顔をした。
愛する父だが、その被害者ヅラを見ていると手が出そうになる。
「おぬしの腹に術を仕込んだ。奴がおぬしの腹の奥に触れれば術が発動して、力を吸い取ることができる」
「いや……え? それは、私がアイツと契るということですか?」
「うん、まぁそういうことじゃな」
「な、なぜそんな……他に方法があるはずです!」
「他の方法は全部試して、それでも逃げられておるのじゃろ、ミルベルや。その術は我らに残された最後の手段。外界の空気に触れると弱まってしまうから、おぬしの肉の身に隠すしかないのじゃ」
「し、しかし……私があんなのと契るなんて!」
「そうは言ってもおぬし、昔ルカと付き合っておったろ?」
ミルベルは崩れ落ちた。
誰にも知られていないと思っていたことが最高神に、よりによって父親にバレていた。
気の迷いだった。
長い神の生でたった一年ほどの付き合いであったから、誰にも知られていないと思っていた。まさかあいつ吹聴してないだろうな。それを他者に確かめることなど怖くてできないが。
打ちひしがれる息子を前に、ハーダンは告げる。
「ま、そういうことじゃから、頼むぞミルベル。奴のことじゃ、おぬしがヨリを戻したいと言えば飛んでくるじゃろうて」
「……いえ、私と彼はすでに決別しましたので……」
「まぁまぁ。爺に騙されたと思って連絡してみよ」
のんびり手を振る最高神の前から辞去し、ミルベルはふらふらと自宅へ帰った。
「どうして、わたしが、アイツにまた、くそ、どうして……」
ぶつぶつ恨み言を呟いても何にもならず、気すら晴れない。
術を掛けられたという腹に触れてみたが何も感じられなかった。
空気に触れてはならない術だと言っていたが、果たしてそんな繊細な術がかの狡猾な神を斃しうるのだろうか。それに術式に触れさせるだけなら他にも手段があったのではないか。例えば口の中とか。
こんな仮定を考えるだけ無駄だ。
わかっているのに、これからのことを考えると憂鬱すぎて、少しでも先延ばしにしたくなってしまう。
「……はぁ」
考えても愚痴ってもどうしようもない。
いよいよ腹をくくり、ミルベルは手のひらに力を集中させる。
現れたのは光り輝く小さな鳥だ。
「お行き。アイツのところへ」
情を交わす間柄だったほんのわずかの期間、ミルベルとルカはこの術で連絡を取り合っていた。
彼がそれを覚えていれば。
忘れていたらそのときは、こんな術に頼らずとも奴を倒せるのだと今度こそ覚悟を決めるまで。
いやどっちかといえば忘れていてほしい。
そんなミルベルの淡い願いは、こつんと鳴った窓によって砕かれた。
「……ルカ」
「よう、ミルベル。懐かしい鳥が呼びに来たから、来てやったぜ」
にんまりと弧を描く両眼は狡猾そうな深緑色。
夜風にたなびく髪は闇色で、光の加減で紫にも見えることを知っている。
するりと窓から入ってきた男は長身にしなやかな筋肉を纏い、本人曰く「流行の最先端」だという独特の衣服に身を包んでいる。
陽の光を集めたような白銀髪に薄青の瞳のミルベルとは、何もかも正反対の存在。
「……はぁ……来たのか」
「おいおい、呼んだのはそっちだろうにご挨拶だな。というか今日は襲いかかってこないのか?」
「そういうのはやめだ。しばらくは」
「ふーん。どういう風の吹き回しかね」
大方爺の差し金だろうけど、と呟きながらミルベルのベッドに遠慮なく腰掛ける男は、この呼び出しが主神の奸計と察しているのにここへ来たことになる。
いつだってそうだ。ミルベルは本気でルカを倒そうとしているのに、ルカはミルベルの襲撃も児戯のようにいなして、いつだって倒されてくれない。
こうなったらもうミルベルには、ハーダン神の方法で行くしか手は残されていない。
ミルベルはぎこちない動きで部屋を横切り、ルカのすぐ横に座った。
「ん? めずらしいな、おまえが寄ってくるなんて」
馴れ馴れしく肩を抱かれても抵抗しない。
いつもなら触れられそうになるたび激しく振り払って切りつけていたものを、大人しくされるがままのミルベルに、ルカは本気で目を丸くした。
肩に回した手を光り輝く髪に伸ばしても嫌がられない。
そのまま毛先を弄ぶようにしても、背骨をなぞるように撫でても、ミルベルは動かなかった。
それどころか、上目遣いに潤んだ瞳で「ルカ……」などと舌足らずに呼ぶものだから。
「ふーん。なんとなく読めたが、俺は無抵抗の獲物も遠慮なく狩るタイプなんでね」
「な、何、わっ」
ベッドに押し倒され、ミルベルは目を白黒させた。
ミルベルにしてみれば押し倒されるような心当たりなどない。
ただカチコチに固まって、どう誘惑すればいいか悩みながらルカを見上げ、ただ名を呼んだだけのつもりだった。
まさか自分の父が刻んだ術が、被術者の性的魅力を底上げする機能があるなどと想像するはずもない。
「おいルカっ、何をする!」
「何って、ナニだろ? そのために呼んだんじゃないのか?」
「そ、そうだが、」
「ふーん、やっぱりそうだったのか。清楚な光の化身がずいぶんと大胆なことで」
「ち、ちが、っ、んぅ!?」
シーツに押し付けられたまま唇を塞がれ、ミルベルは思わず抵抗を忘れた。
キスするときは目を閉じること────。
目の前の男に散々教え込まれたくせが自然と出て、うっとりと瞼を下ろしたミルベルをルカが見逃すはずはなかった。
「んっ、ぁ、やだ、ルカ……っ」
「何が嫌なんだ。ここを触られること? それともこっちか?」
「あぁっ」
するすると上着をはだけられ、胸元に触れられる。
そこには期待に震え立つ薄桃色の粒があった。
彼に触られるだけで条件反射のように反応してしまうようになったのはいつからだろう。
乳暈をゆっくりとなぞり、かりかり爪を立てるだけの指は決定的な刺激を与えてくれない。
むず痒くて、ミルベルは体を揺らした。
それはルカにしてみれば、続きをねだっているようにしか見えなかった。
「仕方ないな、ほら」
「あ、や! むねだめぇ」
「ダメじゃねーだろ。気持ちいな?」
「んんぅ……っ」
先端をくにくにとつままれるだけでむずむずした気持ちよさがこみ上げる。
もう何年もこうした触れ合いとは無縁だったというのに、昔の男に触れられただけでこうだ。
自分が情けなくて、ミルベルは涙目になってしまった。
「おぉどうした、ミルベル。痛かったか?」
「痛くは、ないが……うぅ……」
「かわいいミルベル、どうせ今日も爺に呼び出されて嫌なこと言われたんだろう? ミルベルは一生懸命がんばってるのに、ひどい爺だ。よしよし」
「うー……っ」
昔のように頭を撫でられ甘やかされて、思わずその胸に顔をうずめてしまった。
ハーダンに言われたことは問題じゃない。
いつまでも結果を出せない自分が不甲斐なかった。
それを敵であるルカに慰められ、なぜか涙が引っ込むどころか溢れてしまう自分がよくわからなくなってしまっただけだ。
それでもベッドの上で抱きしめられていると、だんだん落ち着いてきた。
あぁルカのにおいだ、とそう感じた瞬間、腹の奥がきゅんと疼いてミルベルは顔をしかめる。
「どうした? ミル」
「なんでもない……ヤりたいならさっさとしろ」
「おいおい、散々な言い草だな。おまえが俺を呼んだってのに。それに、ミルがしたくないとき俺が無理強いしたことがあったか?」
「……」
そういえばこいつは妙に紳士的なところがあって、ミルベルがどうしても気が向かなかったり、調子がすぐれないときに何かを強いることはしなかった。
そういうところも好きだった。
なぜ自分と彼は、決別することになってしまったのだっけ……。
「ミルベル」
名を呼ばれると、まるで強制力のある命令のようにミルベルは従ってしまう。
糸で釣られるみたいに視線を絡めてしまうし、指先で示された唇に自らキスを捧げてしまうのだ。
絡めた足は、互いの昂ぶりをしっかりと感じ合う。
「ん……るか」
「いい子だ。こっちも思い出せるか?」
「あっ……」
いつのまにか一糸まとわぬ姿にされていた下肢を撫で回され、隠された場所にルカの指が潜り込む。
ルカ以外にこんなことをする相手などいなかった。
それを見透かされているような物言いが悔しいし、恥ずかしいのに、拒絶しようという気が起きない。
最高神から強いられた任務も、仕込まれたいかがわしい術も関係なしに、ただのミルベルがただルカを求めているような錯覚に陥る。
「久しぶりだからきついな。力を抜けるか、ミル?」
「ぅ、ん」
仰向けのまま自ら足を抱えて、ミルベルはルカを手伝った。
ほぐす行為の合間に気持ちいいところに触れられるたび、立ち上がり涙をこぼす花芯を扱かれるたび、甘い啼き声が漏れてしまう。
だから、やっとルカの指が抜けていったときはもはや安堵してしまったほどだ。
何度抱かれても彼の丁寧な愛撫に慣れることはなかった。
「ここまで抵抗ナシか。さぁて、あの爺はどこに罠を仕掛けてんだ? まさかこの奥か?」
「……あっ、ぁ、あ」
「まぁ罠とわかってて乗っちまう俺も俺だが」
指なんかとは比べ物にならない長大なものが、ずぶずぶと後孔に沈められる。
快楽に溶けていた思考が急激に鮮明になり、ミルベルは焦った。
そうだ、この腹には術が仕掛けられている。
このままではルカは。
「だめ、るか、奥だめ……っ」
「あ? ここまできて引き下がれるわけないだろ」
「でもダメなんだ、奥には、ぁあっ!」
ぐ、ぐっと確かめるように突き込まれた楔が、ミルベルの最奥を穿つ。
「ひ……っ」
一瞬頭が真っ白になって、触れられてもいないのに陰茎が白濁を吐き出してしまった。
気持ちよくなっている場合じゃないのに。
「ルカ、ぬいて、おねがい」
必死にルカの腹を押して追い出そうとするミルベルを、ルカは不敵な笑みで見下ろした。
「だ~め。久しぶりなんだ、じっくり味わわせろよ」
「だって、そしたらルカが……っ」
「なに、俺の心配? 大丈夫、俺はそんなヤワじゃない。知ってるだろ?」
泣きそうなミルベルの瞼に唇を落として、緑の双眸を細める男に不覚にも胸を打たれる。
飄々として掴みどころのない神。
強い力を持っているのに隠して、口の上手さと狡猾さ、逃げ足の速さで最高神とも対等に渡り合う。
本当は、ミルベルが勝てる相手じゃないことなど最初からわかっていた。
ただ別の誰かに討たれるくらいなら、自分が彼にとどめを刺す役割を負いたいと、そう思っただけだった。
結局ミルベルは今も昔も、ルカを追いかけてばかり。
「落ち着いたか? そろそろ動くぞ」
「あ、まっ、あぁぁっ!」
ミルベルの内側が馴染むのを待っていたルカが力強く律動し始める。
腹の奥で何かが発動している。
力を吸い取ろうと、自ら熱源に絡みついている。
それがまるでルカを求めてやまない自分の気持ちの表れのように感じられて混乱する。
制御できない波に翻弄され、ミルベルは押し流されることしかできない。
自分で決めたことなのに怖くて。
彼を失うのが恐ろしい。
思わず伸ばした手を、ルカはしっかりと握ってくれた。
「ルカ、るか、ぁ、いく、いっちゃう、────っ!」
「あぁ、俺も……っ」
咥え込んだものがびくびくと暴れて、熱くたぎる欲が叩きつけられる。
見開いた目は涙に濡れて滲んでいたけれど、ミルベルは必死に瞼を押し上げ見つめた。
愛した男の最期を姿を。
自分が斃す彼のことを。
「ふぅ……相変わらず最高だったぜ、ミルベル」
「……」
「なぁ、これはヨリ戻すってことでいいんだよな? 愛してるぜ、俺のミル……」
「────ん?」
汗ばんだ額にキスしてくる鬱陶しい男を押し除け、ミルベルは首を傾げた。
「どうしたミル?」
「ルカ。なぜ死なない?」
「あ?」
最後までしっかり出し切った男は満足げにミルベルから出ていき、その代わりのように横に寝そべってミルベルの髪を撫でている。
抜け出ていくときに「あぁっ」と蕩けた声が出てしまったが、今はそれどころじゃない。
「痛いとかつらいとか、消滅しそうとかないのか……?」
「ない。むしろ調子がすこぶるいい。ずっとお預け食らってたものをやっと食えたからだな」
「……」
男らしいルカの指に巻き取られる己の髪の毛を見つめながら、ミルベルにとっては至極当然な問いを発したが、ルカはけろりとしているし、術の効果がどうなっているかなどはミルベルにはわからない。
ルカの手をぺちんと払って起き上がる。
腹に手をやると、情交の痕跡ははっきりと感じ取れたし、最中には術の発動も感じた。
しかしルカの身に異常は見受けられない。
「この腹に触れて、なんともないのか?」
「ん? 前と同じで良い具合だったぜ。久しぶりだからきつかったが、途中で俺のこと思い出してナカがこう、懐いてきたところが最高だった」
「そ、そういう意味ではない! ばか!」
「いてっ。なんだよ」
あまりに恥ずかしい返事に殴りつけてしまったが、そんな問題じゃない。
ピンピンしているルカに仕方なく事情を説明した。
すると彼は途中から、笑いを堪えきれないとばかりにニヤニヤし始めた。
「何がおかしい」
「いやぁ、言われてみればちょい怠いかも? と思って考えてみたが、たしかに術は発動してたっぽいな」
「なんだと! 異常はないと言ったではないか!」
「あぁ。ちょっと神の力を吸い取られた。ただしほんのちょこっとな」
ミルベルは唖然とする。
神の力を吸い取るすべなど聞いたことがない。
それが本当ならこの腹には、たしかに神殺しを実現できる唯一の手段が仕込まれているのだろう。
「この俺を怠くさせるくらい力を吸い取れるなんてすげぇ術だ、さすがは主神様だな。ミルベルが好き好き大好きって搾り取ろうとしてきたから、油断して吸われすぎた。この調子なら本当に俺を倒せるかもな」
途中またものすごく恥ずかしいことを言われたが、今はそれどころじゃない。
「本当か! 本当に倒せるのか!?」
「あぁ。毎日四回中出しするとして、ざっと百五十年くらいか。力を失くした神は只人でも討てる。あとはどうとでもすりゃいい」
「……え? 毎日? ひゃく、ごじゅうねん?」
「おー。さすがに四回以上はミルベルが耐えられないだろうから、それくらいが妥当だな。回数減らせばもっとかかるぞ」
「な、な……」
そんなのは「倒せる手段」とは言わないのではないか。もはや寿命ではないのか。
シーツの上にがっくりと崩れ落ちたミルベルを、ルカは愛おしそうに撫でる。
その手が徐々に妖しく蠢き出し、ミルベルはぴくりと体を揺らして、とても良い笑顔の男を見た。
「んじゃ、さっそく二回目ヤりますか」
「は?」
素早くくるりと体がひっくり返され、うつ伏せの尻にルカの手がかかる。
「さっきは揉んでやれなかったから」などと言いながら尻肉を揉みしだかれ、未だ敏感な体はびくびく跳ねてしまう。
「うぁっ、やめ、ひっ」
「ほら、一日四回だぞ。俺のこと倒したいんだろ?」
「そ、だけど、やだぁ……四回もなんて、しんじゃう……」
「神はそう簡単に死なないから今まで苦労してきたんだろ、ミル。それに俺が四回イく頃にはおまえは倍イってるだろうから大丈夫だ」
「どこがだいじょぶだ、ぁ、あぁっ!」
ほころんだままの後孔はルカの侵入を拒むことなく、むしろ歓迎するかのように蠢く。
ミルベルは使命のせいで拒み切ることができないまま、ルカがきっちり四回分満足するまで揺さぶられ続けたのだった。
敵対していた主神ハーダンと神ルカの対立は、あるときからどの文献にも示されなくなる。
一説には、ルカはハーダンの策略に嵌って死んだとされる。
また別説には、ハーダンの息子ミルベルが身をもってルカを抑え込んだのだとされている。
どちらにしろ、危惧されていた神々の終末戦争は回避され、その後も長く平和な時代が続いたことは文献を検めずとも知られる事実である。
また後世、ハーダンの息子ミルベルには光や慈愛といった権能のほかに、夫婦円満や復縁を司る神であるとの解釈が加えられたという。
若く美しい神ミルベルは、宿敵・ルカを倒すため、父神ハーダンから秘術を授かる。
それはミルベルの腹に埋められ、発動させるには腹の奥に対象を招き入れなくてはならない。
つまり、セックスだ。
「なぜ私が奴と契らなければならないのです!」
「だって二人は昔付き合ってたでしょ?」
目的を果たすため元カレを誘惑しなきゃいけなくなったツンデレと、倒される気は全然ない曲者が元鞘に収まる話。
【キーワード】
ファンタジー / 神✕神 / ツンデレ受け / 溺愛攻め / 元鞘
◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆
「最終手段じゃ。ミルベル、奴をその身でもって誘惑せよ」
最高神ハーダンのやれやれと言いたげな困り顔に、ミルベルは怒りを通り越して呆然とした。
なにやら用があると呼び出され、用件を聞く前になにかの術を掛けられ、それからこの物言いだ。
まずなんの話か聞かせろ。
ミルベルが噛みつきそうな顔で睨んでいるのに気づいたハーダンが、またしてもやれやれと疲れた様子で口を開く。
「ミルベル。おぬしに任せた『ルカ』の討伐、進捗は芳しくないようじゃな」
「っそれは……はい……ですが私は必ずあれを亡き者にし、」
「あぁいいんじゃ。おぬしがあれにとどめを刺せないことはもうわかっておる。おぬしは優しい子じゃからな」
「しかし……!」
結局言い返せず、ミルベルは唇を噛んで俯いた。
数多の神が支えるこの地において、ミルベルもまた神として生まれた。
光を司り、生きとし生けるものすべてに愛されるべしと生まれたミルベルは、望まれるままに優しく活発な青年へと成長した。
ミルベルは自身を愛するすべてのものを愛していたが、例外もいた。
それがルカだ。
ルカも同じく神だが、力は目の前の最高神ハーダンに匹敵するほどと言われる格の高い存在。
強い自己を持っていて、誰にも物怖じせず意見する、下々を差別せず教え導いてくれるルカを、かつてはミルベルも慕っていた。
しかし、いつしかルカは神々に争いの火種を撒き散らすようになってしまった。
「このままではルカのせいで我ら神が分断される。そうなれば他の種族や地界の者たちが黙っておらぬだろう。やがて戦火は人間たちへも降りかかる。今のうちに奴を止めねばならん」
「ですから、私が奴を討ちます!」
「あぁ、ミルベル、愛しい息子よ。他の追手と比べ、おぬしが最もルカを追い詰めたことに間違いはない。じゃからおぬしを置いて他に奴を倒せるものはおらぬと、わしは確信しておる」
「では……!」
「あぁ。先程掛けた術は、ルカを倒すための方策じゃ。その力を使えば確実に奴の力を削ぎ、神の時代の終焉という未来を跳ね除けることができよう。ついては、使い方を教える」
ルカを誘惑し、その腹の中へと誘い込め。
「…………は?」
「聞こえなかったか? いや聞こえていてその反応か。まぁ無理もない」
ハーダンは三度目のやれやれ顔をした。
愛する父だが、その被害者ヅラを見ていると手が出そうになる。
「おぬしの腹に術を仕込んだ。奴がおぬしの腹の奥に触れれば術が発動して、力を吸い取ることができる」
「いや……え? それは、私がアイツと契るということですか?」
「うん、まぁそういうことじゃな」
「な、なぜそんな……他に方法があるはずです!」
「他の方法は全部試して、それでも逃げられておるのじゃろ、ミルベルや。その術は我らに残された最後の手段。外界の空気に触れると弱まってしまうから、おぬしの肉の身に隠すしかないのじゃ」
「し、しかし……私があんなのと契るなんて!」
「そうは言ってもおぬし、昔ルカと付き合っておったろ?」
ミルベルは崩れ落ちた。
誰にも知られていないと思っていたことが最高神に、よりによって父親にバレていた。
気の迷いだった。
長い神の生でたった一年ほどの付き合いであったから、誰にも知られていないと思っていた。まさかあいつ吹聴してないだろうな。それを他者に確かめることなど怖くてできないが。
打ちひしがれる息子を前に、ハーダンは告げる。
「ま、そういうことじゃから、頼むぞミルベル。奴のことじゃ、おぬしがヨリを戻したいと言えば飛んでくるじゃろうて」
「……いえ、私と彼はすでに決別しましたので……」
「まぁまぁ。爺に騙されたと思って連絡してみよ」
のんびり手を振る最高神の前から辞去し、ミルベルはふらふらと自宅へ帰った。
「どうして、わたしが、アイツにまた、くそ、どうして……」
ぶつぶつ恨み言を呟いても何にもならず、気すら晴れない。
術を掛けられたという腹に触れてみたが何も感じられなかった。
空気に触れてはならない術だと言っていたが、果たしてそんな繊細な術がかの狡猾な神を斃しうるのだろうか。それに術式に触れさせるだけなら他にも手段があったのではないか。例えば口の中とか。
こんな仮定を考えるだけ無駄だ。
わかっているのに、これからのことを考えると憂鬱すぎて、少しでも先延ばしにしたくなってしまう。
「……はぁ」
考えても愚痴ってもどうしようもない。
いよいよ腹をくくり、ミルベルは手のひらに力を集中させる。
現れたのは光り輝く小さな鳥だ。
「お行き。アイツのところへ」
情を交わす間柄だったほんのわずかの期間、ミルベルとルカはこの術で連絡を取り合っていた。
彼がそれを覚えていれば。
忘れていたらそのときは、こんな術に頼らずとも奴を倒せるのだと今度こそ覚悟を決めるまで。
いやどっちかといえば忘れていてほしい。
そんなミルベルの淡い願いは、こつんと鳴った窓によって砕かれた。
「……ルカ」
「よう、ミルベル。懐かしい鳥が呼びに来たから、来てやったぜ」
にんまりと弧を描く両眼は狡猾そうな深緑色。
夜風にたなびく髪は闇色で、光の加減で紫にも見えることを知っている。
するりと窓から入ってきた男は長身にしなやかな筋肉を纏い、本人曰く「流行の最先端」だという独特の衣服に身を包んでいる。
陽の光を集めたような白銀髪に薄青の瞳のミルベルとは、何もかも正反対の存在。
「……はぁ……来たのか」
「おいおい、呼んだのはそっちだろうにご挨拶だな。というか今日は襲いかかってこないのか?」
「そういうのはやめだ。しばらくは」
「ふーん。どういう風の吹き回しかね」
大方爺の差し金だろうけど、と呟きながらミルベルのベッドに遠慮なく腰掛ける男は、この呼び出しが主神の奸計と察しているのにここへ来たことになる。
いつだってそうだ。ミルベルは本気でルカを倒そうとしているのに、ルカはミルベルの襲撃も児戯のようにいなして、いつだって倒されてくれない。
こうなったらもうミルベルには、ハーダン神の方法で行くしか手は残されていない。
ミルベルはぎこちない動きで部屋を横切り、ルカのすぐ横に座った。
「ん? めずらしいな、おまえが寄ってくるなんて」
馴れ馴れしく肩を抱かれても抵抗しない。
いつもなら触れられそうになるたび激しく振り払って切りつけていたものを、大人しくされるがままのミルベルに、ルカは本気で目を丸くした。
肩に回した手を光り輝く髪に伸ばしても嫌がられない。
そのまま毛先を弄ぶようにしても、背骨をなぞるように撫でても、ミルベルは動かなかった。
それどころか、上目遣いに潤んだ瞳で「ルカ……」などと舌足らずに呼ぶものだから。
「ふーん。なんとなく読めたが、俺は無抵抗の獲物も遠慮なく狩るタイプなんでね」
「な、何、わっ」
ベッドに押し倒され、ミルベルは目を白黒させた。
ミルベルにしてみれば押し倒されるような心当たりなどない。
ただカチコチに固まって、どう誘惑すればいいか悩みながらルカを見上げ、ただ名を呼んだだけのつもりだった。
まさか自分の父が刻んだ術が、被術者の性的魅力を底上げする機能があるなどと想像するはずもない。
「おいルカっ、何をする!」
「何って、ナニだろ? そのために呼んだんじゃないのか?」
「そ、そうだが、」
「ふーん、やっぱりそうだったのか。清楚な光の化身がずいぶんと大胆なことで」
「ち、ちが、っ、んぅ!?」
シーツに押し付けられたまま唇を塞がれ、ミルベルは思わず抵抗を忘れた。
キスするときは目を閉じること────。
目の前の男に散々教え込まれたくせが自然と出て、うっとりと瞼を下ろしたミルベルをルカが見逃すはずはなかった。
「んっ、ぁ、やだ、ルカ……っ」
「何が嫌なんだ。ここを触られること? それともこっちか?」
「あぁっ」
するすると上着をはだけられ、胸元に触れられる。
そこには期待に震え立つ薄桃色の粒があった。
彼に触られるだけで条件反射のように反応してしまうようになったのはいつからだろう。
乳暈をゆっくりとなぞり、かりかり爪を立てるだけの指は決定的な刺激を与えてくれない。
むず痒くて、ミルベルは体を揺らした。
それはルカにしてみれば、続きをねだっているようにしか見えなかった。
「仕方ないな、ほら」
「あ、や! むねだめぇ」
「ダメじゃねーだろ。気持ちいな?」
「んんぅ……っ」
先端をくにくにとつままれるだけでむずむずした気持ちよさがこみ上げる。
もう何年もこうした触れ合いとは無縁だったというのに、昔の男に触れられただけでこうだ。
自分が情けなくて、ミルベルは涙目になってしまった。
「おぉどうした、ミルベル。痛かったか?」
「痛くは、ないが……うぅ……」
「かわいいミルベル、どうせ今日も爺に呼び出されて嫌なこと言われたんだろう? ミルベルは一生懸命がんばってるのに、ひどい爺だ。よしよし」
「うー……っ」
昔のように頭を撫でられ甘やかされて、思わずその胸に顔をうずめてしまった。
ハーダンに言われたことは問題じゃない。
いつまでも結果を出せない自分が不甲斐なかった。
それを敵であるルカに慰められ、なぜか涙が引っ込むどころか溢れてしまう自分がよくわからなくなってしまっただけだ。
それでもベッドの上で抱きしめられていると、だんだん落ち着いてきた。
あぁルカのにおいだ、とそう感じた瞬間、腹の奥がきゅんと疼いてミルベルは顔をしかめる。
「どうした? ミル」
「なんでもない……ヤりたいならさっさとしろ」
「おいおい、散々な言い草だな。おまえが俺を呼んだってのに。それに、ミルがしたくないとき俺が無理強いしたことがあったか?」
「……」
そういえばこいつは妙に紳士的なところがあって、ミルベルがどうしても気が向かなかったり、調子がすぐれないときに何かを強いることはしなかった。
そういうところも好きだった。
なぜ自分と彼は、決別することになってしまったのだっけ……。
「ミルベル」
名を呼ばれると、まるで強制力のある命令のようにミルベルは従ってしまう。
糸で釣られるみたいに視線を絡めてしまうし、指先で示された唇に自らキスを捧げてしまうのだ。
絡めた足は、互いの昂ぶりをしっかりと感じ合う。
「ん……るか」
「いい子だ。こっちも思い出せるか?」
「あっ……」
いつのまにか一糸まとわぬ姿にされていた下肢を撫で回され、隠された場所にルカの指が潜り込む。
ルカ以外にこんなことをする相手などいなかった。
それを見透かされているような物言いが悔しいし、恥ずかしいのに、拒絶しようという気が起きない。
最高神から強いられた任務も、仕込まれたいかがわしい術も関係なしに、ただのミルベルがただルカを求めているような錯覚に陥る。
「久しぶりだからきついな。力を抜けるか、ミル?」
「ぅ、ん」
仰向けのまま自ら足を抱えて、ミルベルはルカを手伝った。
ほぐす行為の合間に気持ちいいところに触れられるたび、立ち上がり涙をこぼす花芯を扱かれるたび、甘い啼き声が漏れてしまう。
だから、やっとルカの指が抜けていったときはもはや安堵してしまったほどだ。
何度抱かれても彼の丁寧な愛撫に慣れることはなかった。
「ここまで抵抗ナシか。さぁて、あの爺はどこに罠を仕掛けてんだ? まさかこの奥か?」
「……あっ、ぁ、あ」
「まぁ罠とわかってて乗っちまう俺も俺だが」
指なんかとは比べ物にならない長大なものが、ずぶずぶと後孔に沈められる。
快楽に溶けていた思考が急激に鮮明になり、ミルベルは焦った。
そうだ、この腹には術が仕掛けられている。
このままではルカは。
「だめ、るか、奥だめ……っ」
「あ? ここまできて引き下がれるわけないだろ」
「でもダメなんだ、奥には、ぁあっ!」
ぐ、ぐっと確かめるように突き込まれた楔が、ミルベルの最奥を穿つ。
「ひ……っ」
一瞬頭が真っ白になって、触れられてもいないのに陰茎が白濁を吐き出してしまった。
気持ちよくなっている場合じゃないのに。
「ルカ、ぬいて、おねがい」
必死にルカの腹を押して追い出そうとするミルベルを、ルカは不敵な笑みで見下ろした。
「だ~め。久しぶりなんだ、じっくり味わわせろよ」
「だって、そしたらルカが……っ」
「なに、俺の心配? 大丈夫、俺はそんなヤワじゃない。知ってるだろ?」
泣きそうなミルベルの瞼に唇を落として、緑の双眸を細める男に不覚にも胸を打たれる。
飄々として掴みどころのない神。
強い力を持っているのに隠して、口の上手さと狡猾さ、逃げ足の速さで最高神とも対等に渡り合う。
本当は、ミルベルが勝てる相手じゃないことなど最初からわかっていた。
ただ別の誰かに討たれるくらいなら、自分が彼にとどめを刺す役割を負いたいと、そう思っただけだった。
結局ミルベルは今も昔も、ルカを追いかけてばかり。
「落ち着いたか? そろそろ動くぞ」
「あ、まっ、あぁぁっ!」
ミルベルの内側が馴染むのを待っていたルカが力強く律動し始める。
腹の奥で何かが発動している。
力を吸い取ろうと、自ら熱源に絡みついている。
それがまるでルカを求めてやまない自分の気持ちの表れのように感じられて混乱する。
制御できない波に翻弄され、ミルベルは押し流されることしかできない。
自分で決めたことなのに怖くて。
彼を失うのが恐ろしい。
思わず伸ばした手を、ルカはしっかりと握ってくれた。
「ルカ、るか、ぁ、いく、いっちゃう、────っ!」
「あぁ、俺も……っ」
咥え込んだものがびくびくと暴れて、熱くたぎる欲が叩きつけられる。
見開いた目は涙に濡れて滲んでいたけれど、ミルベルは必死に瞼を押し上げ見つめた。
愛した男の最期を姿を。
自分が斃す彼のことを。
「ふぅ……相変わらず最高だったぜ、ミルベル」
「……」
「なぁ、これはヨリ戻すってことでいいんだよな? 愛してるぜ、俺のミル……」
「────ん?」
汗ばんだ額にキスしてくる鬱陶しい男を押し除け、ミルベルは首を傾げた。
「どうしたミル?」
「ルカ。なぜ死なない?」
「あ?」
最後までしっかり出し切った男は満足げにミルベルから出ていき、その代わりのように横に寝そべってミルベルの髪を撫でている。
抜け出ていくときに「あぁっ」と蕩けた声が出てしまったが、今はそれどころじゃない。
「痛いとかつらいとか、消滅しそうとかないのか……?」
「ない。むしろ調子がすこぶるいい。ずっとお預け食らってたものをやっと食えたからだな」
「……」
男らしいルカの指に巻き取られる己の髪の毛を見つめながら、ミルベルにとっては至極当然な問いを発したが、ルカはけろりとしているし、術の効果がどうなっているかなどはミルベルにはわからない。
ルカの手をぺちんと払って起き上がる。
腹に手をやると、情交の痕跡ははっきりと感じ取れたし、最中には術の発動も感じた。
しかしルカの身に異常は見受けられない。
「この腹に触れて、なんともないのか?」
「ん? 前と同じで良い具合だったぜ。久しぶりだからきつかったが、途中で俺のこと思い出してナカがこう、懐いてきたところが最高だった」
「そ、そういう意味ではない! ばか!」
「いてっ。なんだよ」
あまりに恥ずかしい返事に殴りつけてしまったが、そんな問題じゃない。
ピンピンしているルカに仕方なく事情を説明した。
すると彼は途中から、笑いを堪えきれないとばかりにニヤニヤし始めた。
「何がおかしい」
「いやぁ、言われてみればちょい怠いかも? と思って考えてみたが、たしかに術は発動してたっぽいな」
「なんだと! 異常はないと言ったではないか!」
「あぁ。ちょっと神の力を吸い取られた。ただしほんのちょこっとな」
ミルベルは唖然とする。
神の力を吸い取るすべなど聞いたことがない。
それが本当ならこの腹には、たしかに神殺しを実現できる唯一の手段が仕込まれているのだろう。
「この俺を怠くさせるくらい力を吸い取れるなんてすげぇ術だ、さすがは主神様だな。ミルベルが好き好き大好きって搾り取ろうとしてきたから、油断して吸われすぎた。この調子なら本当に俺を倒せるかもな」
途中またものすごく恥ずかしいことを言われたが、今はそれどころじゃない。
「本当か! 本当に倒せるのか!?」
「あぁ。毎日四回中出しするとして、ざっと百五十年くらいか。力を失くした神は只人でも討てる。あとはどうとでもすりゃいい」
「……え? 毎日? ひゃく、ごじゅうねん?」
「おー。さすがに四回以上はミルベルが耐えられないだろうから、それくらいが妥当だな。回数減らせばもっとかかるぞ」
「な、な……」
そんなのは「倒せる手段」とは言わないのではないか。もはや寿命ではないのか。
シーツの上にがっくりと崩れ落ちたミルベルを、ルカは愛おしそうに撫でる。
その手が徐々に妖しく蠢き出し、ミルベルはぴくりと体を揺らして、とても良い笑顔の男を見た。
「んじゃ、さっそく二回目ヤりますか」
「は?」
素早くくるりと体がひっくり返され、うつ伏せの尻にルカの手がかかる。
「さっきは揉んでやれなかったから」などと言いながら尻肉を揉みしだかれ、未だ敏感な体はびくびく跳ねてしまう。
「うぁっ、やめ、ひっ」
「ほら、一日四回だぞ。俺のこと倒したいんだろ?」
「そ、だけど、やだぁ……四回もなんて、しんじゃう……」
「神はそう簡単に死なないから今まで苦労してきたんだろ、ミル。それに俺が四回イく頃にはおまえは倍イってるだろうから大丈夫だ」
「どこがだいじょぶだ、ぁ、あぁっ!」
ほころんだままの後孔はルカの侵入を拒むことなく、むしろ歓迎するかのように蠢く。
ミルベルは使命のせいで拒み切ることができないまま、ルカがきっちり四回分満足するまで揺さぶられ続けたのだった。
敵対していた主神ハーダンと神ルカの対立は、あるときからどの文献にも示されなくなる。
一説には、ルカはハーダンの策略に嵌って死んだとされる。
また別説には、ハーダンの息子ミルベルが身をもってルカを抑え込んだのだとされている。
どちらにしろ、危惧されていた神々の終末戦争は回避され、その後も長く平和な時代が続いたことは文献を検めずとも知られる事実である。
また後世、ハーダンの息子ミルベルには光や慈愛といった権能のほかに、夫婦円満や復縁を司る神であるとの解釈が加えられたという。
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