【続編更新】マジカル☆オメガバース ~オメガにされた元アルファ~

キザキ ケイ

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婚約編

26.アプローチいろいろ

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 なんだか今日は甘ったるいな、と思った。
 正確には俺たちが、というより、颯真が、だけど。

「ユキ……ユキ、こっち」
「ぁふ、ん……ちょ、息くるしぃ……」
「つらいか?」
「つらいわけじゃないけど、はぁ、ちょっと、まって」
「ん」

 むきだしの首筋にキスされて、その些細な刺激すら快感に変換される。
 うなじには頑なに触れない颯真だが、首の前面はわりと躊躇なく触る。というか手や唇や歯やらで触られまくる。
 喉仏とか鎖骨とか、どんなに噛んでも番にならない部位は颯真的にはセーフらしい。
 じゃあどこからがアウトなのか、っていうのは把握してない。
 たぶん颯真はそういうのもちゃんと調べてて、その上でセーフラインを見極めてる。

「ふは……」
「なに。思い出し笑い?」
「んゃ、そーまが実はこんなにスケベ野郎なんだって、言いふらしても信じてもらえないだろうなって思った」
「なんでそんなこと言いふらすんだよ……」
「んっ、だって、おもしろいじゃん」

 俺にだけスケベな颯真、俺はツボだけど。
 うふふと笑い続けていたら、入ったままの颯真がぐっと奥に入ろうとしてきて息が詰まる。

「あっ……ちょっとまってってば」

 目の前の肩にしがみついて必死に息を整える。
  「ご休憩」はもうだいぶ時間が経ってて、颯真はすでに二回ゴムを取り替えた。俺はその倍くらいイかされてて限界が近い。
 だというのにこの男、俺を膝の上に乗せて自分で動けと要求するのだ。
 たしかに対面座位は俺も気に入ってるし、こうやってぎゅっとしていられるのは嬉しいけど、だからって体力がミリしか残ってない俺の負担も考えてほしい。
 そもそも颯真が入ってるだけで俺の腹はきゅんきゅん疼いて、全然休まらないというのに。

「ん、んッ、ぁ……」

 ちょっとだけだけど休憩できたので、腰を揺すって気持ちいいところを探す。
 颯真のは大きいからどこに当たってても気持ちいいんだけど、特にイイところってのはあって。
 ぎゅっとかぐちゅっとか、いやらしい音を響かせながら後孔が肉を食んでいるのが自分でもわかる。
 貪欲にアルファを求める、オメガの体だ。

「きもちぃ……そうまも、いい?」
「すごく気持ちいいよ」
「ん……」

 颯真も俺で気持ちよくなってくれてる。
 嬉しさがダイレクトに体に反映されて、颯真の首にぎゅっとすがりついて波に耐える。あんまりイってばかりだとなにもできなくなるから、ある程度はセーブしないと。
 しないと、いけないのに。

「ごめんユキ、ちょっとだけ」
「あ、いまだめ、ぁあっそーまっ!」

 下から突き上げられて奥を穿たれ、背骨に雷が落ちたみたいに衝撃が走った。
 そのままがくがく揺さぶられて、せっかく耐えた大波が俺を覆い尽くす。
 なんでそんなところ感じるんだと疑問しかない腹の奥、そこから全身の関係各所に快感が伝達されて、終点の脳が多大な負荷を処理できずスパークする。
 頭が真っ白になって、ただ愛しい男の欲望を受け入れるだけの器になる。

「ユキ」

 いつもは俺のこと甘やかして優先してくれるのに、こんなときだけ自分勝手な男。
 胸焼けしそうなくらいの愛情がまなざしから溢れ出す、俺の惚れた男。

「そーま……っ」

 俺も同じくらい好きだよって、颯真にちゃんと伝わったかな。
 今度こそ体力が尽きて、ぐちゃぐちゃのシーツに墜落した俺を、自分勝手で愛しい男がそっと抱き止めてくれた。

 あれだけ無体をはたらかれても、元アルファの俺の体は本当に丈夫で、なんとかホテルの設定時間以内に自分の足で退室できた。
 いやどんだけヤってんだよって思う。
 今回は飢餓感を満たし合うより、もろもろを確かめ合うのに重きが置かれていたから、長くなってしまったんだろう。
 ヨロヨロしながらシャワーを浴びて、ガビガビのベッドを見ないようにしてソファでイチャついたりしてたし。ラブホのソファって二人で座るとくっつく距離になってるよね。
 すっきりした顔の颯真と別れて、帰ってきた家には、珍しく父さんがいた。

「あ。離婚するから荷物片付けてんの?」
「しない! 離婚はしないぞ雪!」

 父さんは首を左右にぶんぶん振った。
 両親の離婚騒動は、父さんが単身赴任するという形でなんとか落ち着いたらしい。
 元々出張が多いし、数年で戻ってくる形の長期出張みたいなものだとか。

「まぁ職場では左遷じゃないかって噂されてるけどね……」

 しょんぼりしながら、スーツケースにいれるネクタイを指先でイジイジしている父には本当に申し訳ないと思う。
 いきなり息子がオメガになったから家から追い出されそうで、やむを得ず地方へ赴任することになった、なんて、職場で言いたくないだろうし、言っても信じてもらえないだろうし。

「俺が颯真と番になったら戻ってこられるし、すぐだよ」
「それもそれで複雑なんだよね……」
「あー……」

 難しい父心である。
 ふと俺はこの、あまり家にいない父に興味が湧いた。

「オメガの人と結婚、とか考えなかった?」

 父さんはちらりと俺を見て、スーツケースにネクタイを押し込む。

「若い頃はそうなるだろうと思ってたよ。これでもまぁまぁ優秀なアルファだったから、両親が縁談を用意してくれたりね。でもオメガと出会う前に、お母さんと出会った。ちょうど、今の雪と同じ歳のときだったよ」

 駅のホームで見かけて、一目惚れだったと話す父は照れくさそうだった。
 しばらくは同じ通学時間帯に同じ車両で見つめるだけだったが、次第に我慢できなくなり、勇気を出して声をかけて、その日のうちに告白して玉砕し、でもあまりに無鉄砲だった父の様子に母が笑ってくれてその笑顔にまた惚れて……と、初めて聞く話ばかりが出てくる。

「若い頃の父さん、ちょっとストーカーっぽいね」
「うっ……まぁ自分でもそう思うよ。初日に警察に通報されなくて本当に良かった。でもあのときから僕はもうお母さん一筋で、他の女性とかオメガとか全然考えられなかった。一途で一直線なところは息子が継いでしまったねぇ」
「俺はストーカーとか気持ち悪いことしないけど」
「それは、なによりだね……」

 息子からの「気持ち悪い」口撃でちょっと弱った父さんを置いてリビングに戻る。あまり二人きりにならないほうがいいだろう。
 今のところ俺はまだ半端なオメガで、フェロモンも出てるんだか出てないんだか、そのうえ軽いやつだけど抑制剤も飲んでいるのでクラスメイトにすら未だアルファだと思われてるような状態だ。
 そんなオメガに、母さん一筋の父さんがぐらつくというのも想像できないけど、あり得ないことが起こってしまうのがアルファとオメガというものらしい。
 父さんは特に、フェロモンが微量のはずの俺の匂いを嗅ぎ取っていたわけだし、母さんの危機感も理解できる。
 そのうえで、こんな俺を好んで番にしようとしてくれる颯真という男は、本当に俺にとって、得難い存在なんだなぁと再認識した。

「俺ってにおう?」

 メッセージアプリになんの脈絡もなく投げかけた問に、すぐ既読がついたのに返信がなかなか来ないのは、言葉を選んでいるかだろうか。

 ────ユキはいつもいいにおいがする

 そうして送られてきたのがこれだ。汗臭いとか言われたら普通にショックだったと思うのでほっとした。
 オメガとして標準的ってことか、と再度送信。

 ────周りにオメガがあんまりいないからわかんないけど、親戚とか知り合いの集まりで会うオメガに比べたら、ほとんどしないと思う
 ────フェロモンの話だよな?

 そうだよ、と打とうと思ったけど、既読早いし大丈夫そうだと通話をかけることにした。
 予想通り颯真はすぐに出た。

『どうした、何かあったか?』

 スピーカーから心配そうな声が聞こえて、思わずニヤけてしまう。
 心配性なカレシをなんでもないと宥めた。
 そういえば神様に事故でオメガにされたあと、俺の部屋に遊びに来た颯真が室内に充満するフェロモンを嗅ぎ取っていたことを思い出す。

『あぁ……あのときが一番ユキの香りが強かった。神様にお願いしたあとは、嘘みたいに匂いが落ち着いたんだ』
「へー。発情期こないのと関係あるかな?」
『かもしれない。オメガの誘引フェロモンはアルファを得るためのものらしいから』
「ハツジョーしないならアルファ引き寄せてもあんま意味ないってことか。まぁ俺のニオイがあろうとなかろうとくっついてくる物好きアルファはいるけど」
『俺はオメガになる前から……』
「……」

 ちょっと恥ずかしそうに語尾をごにょごにょさせるスピーカー越しの恋人に、俺の口元もモニョモニョしちゃう。
 もじもじした雰囲気を流してしまおうとした俺の声を遮って、颯真が「そうだった」とやや大きめの声を出した。

「何?」
『実は、その、近いうち家に来てほしい。親が会いたがってて』
「え、俺に?」
『ユキに』
「あー……それって……その……ご挨拶、って意味、だよな?」
『……そういうことになると思う』
「わかった。今度はちゃんと母屋の方に行くから」
『悪いな。詳しいことはまた学校で』

 通話が切れて、天を仰ぐ。オフホワイトの天井に、視線だけで不安を描く。
 今までずっと考えないようにしてたこと。
 以前、擬似的にオメガだったとき、颯真の家で発情期を過ごしたことがある。
 あのとき俺はしっかりばっちりオメガフェロモンを出してて、そのフェロモンは俺がいなくてもその場に残るほどのもので、あのときは離れとはいえ颯真の家の敷地内に長時間いたわけで、椿さんちはほとんどアルファなわけで。
 颯真がオメガを連れ込んだこと、バレてたんじゃね? ってこと。

「あー……」

 どういう顔して行けばいいんだ。
 いや俺の顔はこれしかないんだけど。
 頭を抱えてのたうち回る俺を宥めてくれる人はいなかった。
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