【続編更新】マジカル☆オメガバース ~オメガにされた元アルファ~

キザキ ケイ

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大学受験編

03.ニアミス蜜日

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「香耶ちゃん時間ある? どこか寄っていこうか」
「まじ? やった~。じゃあさ、行きたいとこあってぇ」

 香耶ちゃんを連れて商店街の通りを歩く。
 夕暮れに差し掛かる町は人通りが多くなってきて、車や自転車も通る。
 すぐ横を自転車がかすめて行ったので、慌てて香耶ちゃんの体を引き寄せたら、香耶ちゃんは嬉しそうに腕にくっついてきた。

「へへ、いまのかっこよかったよ、お義兄にぃちゃん」
「おにいちゃん呼びはまだちょっと早くない?」
「じゃあ練習ってことで~」

 腕に女の子をくっつけたまま歩くなんていつぶりだろう。
 こうしてみると、もう全然女の子に興味がないんだなって実感する。
 いくら前からよく知っている友人の妹だとしても、女の子がぴったり横にいたら癒されるし、ふわふわした気持ちになる。それが男子というものだ。
 でも今の俺は全然そんな気持ちにならない。
 だからといって男がいいというわけでもなくて……俺はすっかり颯真専用ってことだ。
 なんだか自分で自分が恥ずかしくて、意味もなく頭をぱりぱり掻いた────そのとき。
 肩をぐっと後ろに引かれた。

「ぅぇ?」

 半回転するような勢いで振り向かされた先には────今思い描いていたその人。

「颯真?」
「そいつ、何」
「え?」

 颯真は見たこともない険しい表情をしていた。
 久しぶりの実物颯真に会えたというのに、鋭い視線に射抜かれて俺はフリーズしてしまう。
 それを疾しさと捉えたのか、颯真はますます眉根を寄せた。

「ユキ……!」
「あれ、おにぃじゃん。おつかれ~」

 なにかを言いかけた颯真に、俺の影からひょっこり顔を出した香耶ちゃんがのんびり挨拶した。
 途端に、颯真の顔から表情がストンとなくなる。

「ぇ、あ、香耶?」
「そこで雪ちゃんと偶然会ってねぇ、これからお茶するとこだったんだけど、」

 香耶ちゃんがちらっと俺を見て、にんまりと笑った。

「いっしょに行く? って言おうと思ったけど、今おにぃ雪ちゃん断ちしてるんだもんね、それにこれから塾だもんね、残念だねぇ。雪ちゃん行こっか?」
「え、いや、えーと……颯真?」

 颯真は無表情で俺たちを見つめたまま、俺の肩を掴んだまま動かない。
 どうすればいいのやら……あぁでも久しぶりの颯真、変わらず元気そうだ、なんてぼんやり見返していたら、再び肩を引かれて、香耶ちゃんから引き離された。

「香耶、一人で帰れ」
「え~、雪ちゃんとお茶するチャンスだったのにぃ」
「お茶なら今度俺が奢るから」

 颯真がそう言うと、香耶ちゃんはあっさり引き下がった。
 軽い調子で「そっか~じゃーね~」なんて手を振りながら去っていく姿に俺も手を振って、それから、俺の肩を抱いたままの男を見上げる。

「颯真、久しぶり」
「うん」
「あのさ、さっきさ」
「言うな」
「俺が浮気してると思った?」
「だから言うなって……」

 香耶ちゃんは今朝塾に行く前に髪を切ったようで、髪型が全然違ったから、後ろ姿で妹だとわからなかったらしい。
 顔を覆ってしまった颯真を遠慮なく笑ったら、今度は睨まれてしまった。
 そのままずるずると引きずられて影に入る。
 一階が空いている古いビルは人気がなく、横の雑居ビルとの間の暗がりに連れ込まれた。

「ユキ……」

 正面から抱きしめられて髪のにおいを嗅がれている。
 さっき走って汗くさいと思うけど、不思議と「そういうもん」と思ってしまって拒否できない。
 代わりに俺も颯真の肩に顔を埋めて、遠慮なくにおいを嗅ぐ。
 あぁ、颯真だ。

「……ユキの横に女がいるのが見えて、血の気が引いた」
「くっつきすぎだったよね、ごめん」
「どうせ香耶のほうからくっついたんだろ。いいよ。でもできれば、あんまり他のアルファとくっつかないでくれ」
「ん……」

 自然と顔が近づいて、俺は条件反射で目を閉じたのに、触れ合うはずの熱がない。
 薄目を開けると、颯真がなんとも言えない渋い顔をしていた。

「しないの?」
「したい。けど……」

 なにやら色々と葛藤しているらしい。
 俺は含み笑って、背伸びして唇を奪った。ほんの一瞬だけ。
 それからぱっと体を離す。

「これから予備校だろ? がんばってな」
「あ、ユキ……」
「これ以上くっついてたらもっとしたくなるからダメ! じゃーね」

 本当はもっともっとくっついてたい。
 公共の場所ではできないくらい濃密に触れ合って、絡み合って、勉強も進路もなにもかも忘れていっしょにいたい。
 けどそれじゃお互いのためにならない。今は我慢だ。
 振り返らずに走ったので颯真がどんな顔をしてたかはわからなかったけど、きっと俺の気持ちはわかってくれてる。

「でも久しぶりの颯真……癒されたなぁ」

 軽快に走り終え、帰ってきた自室でストレッチをして、ふと脱いだジャージのにおいを嗅ぐ。
 ほんのわずかだけど、颯真の残り香があった。
 思わずくんくんとしつこく嗅いでしまい、我ながら変態感があってへこむけど、背に腹はかえられない。
 ジャージの上着以外は洗濯かごに出したけど、これだけはベッドの横にかけておくことにした。
 ……やっぱちょっと変態になってきてるな、俺。
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