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吸血鬼と夏
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のどかでにぎやかな田舎町の丘に残る朽ちた古城跡。
その石柱群の合間にひっそりと佇むのは、吸血鬼伯爵の棲む石造りの邸宅だ。
住民と村の大工がこつこつ増築するその家は、少しずつ快適になりつつあるが、いかんせん木造と違って融通の効かない部分がある。
特に冬は、どう隙間を埋めても寒さが入り込んでくるので、かなり厳しい住環境だ。
反対に夏は、熱を伝えにくい石壁の性質上涼しいことが多い。
のだが、家主はそれでも不満のようだった。
「あ、つ、いぃ……」
「大丈夫ですか、ウルリクさま」
「これが大丈夫に見えるかクリスよ。暑い、あつすぎる」
石造りの床にひっくり返る主を、従者兼眷属たるクリスは悲しげに見下ろすことしかできない。
遥か星霜を重ねる吸血鬼たるウルリクは、暑さにも寒さにも弱い。
冬は秋口から寒い寒いと大騒ぎして、真冬などは毛皮を何枚も体に巻き付けて暖炉の前から動かなくなってしまう。
ふつう、冬が極端に苦手なものは夏は得意だったり、その逆だったりするものだとクリスは思っていたが、主はそうではないらしい。
「なんだその顔は。わかるぞ、おまえの考えなどお見通しだ。おれが軟弱だと思っているのだろう」
「いえ、そんなことは決して」
「ふん、どうだか。おれが軟弱だとしたらそれは、毎晩毎晩遅くまで何度も眷属の相手をしてやっている優しさゆえのことであるぞ」
「は……昨日はその、無理をさせてしまい、申し訳ありません」
「まったくだ。おれもおまえも休み前だからとはりきりすぎだ。今日はしないからな」
「はい……」
クリスも昔は子供相応に暑さ寒さを感じていたものだが、長じて筋肉がついたせいか、夏も冬もそれほど苦ではなくなった。
加えて吸血鬼の眷属となったせいか、日々気力がみなぎり、一日中力仕事をしていても体力が尽きないほどだ。
そういう日はどうしても主の優しさに甘えてしまう。
昨日は力仕事が少なく、有り余った体力をウルリクにぶつけてしまった。
優しい主はいつだってクリスを受け入れてくれるものだから、色々な体位を試しつつシーツがだめになるまで励んでしまって、ウルリクから本気の「もうやめて……」が出たのだった。
もっとも、やりすぎた責任はクリスにあろうが、悶々とするクリスを寝所に誘ったのはウルリクだ。
しかしこういうときに「昨日はウルリクさまもノリノリだったじゃないですか」などと言えば、十倍の口撃が返ってくるので、クリスは神妙にお叱りを拝聴した。
罪滅ぼし代わりに、鳥の羽で作った扇子でウルリクを扇ぐ。
「はぁ……吸血鬼は冷血と言ってな、体温が低いのは心臓の鼓動が遅く血が冷たいせいだそうだ」
「そうなのですね」
「だからといって暑さ寒さに強いわけではないのだが、他者が吸血鬼に触れるのには一定の効果があるらしい。ほら、冷たいだろう」
すっと差し出された手を恭しく受け取ると、たしかにひんやりとしている。
それよりクリスは、伯爵のすべすべとした柔らかい肌や、細いながらも男らしく隆起する手の甲や指の関節の感触が気になった。
この手がクリスに触れ、クリスに縋り、クリスの背に爪を立てる。
あらぬことを考え始めてしまうと体温が上がり、ウルリクの冷たい手はますます心地よい手触りとなった。
するりと手首、肘のほうまで手をすべらせる。
あぁ、つめたい。
「……ん」
肘の内側をくすぐると、ウルリクがほんのわずかな声をこぼした。
血色の瞳は細められ、なにかを堪えるように薄いくちびるがわななく。
反射的に掴んだままの腕を引き寄せ唇にむさぼりついていた。
「ぁ、ふぁ……くりす……」
「ウルリクさま、とても触り心地が良くて……もっと触れていいですか?」
「ん、許す」
硬い床にいつまでも転がしておくわけにいかないと思っていたのでちょうどいい。
クリスはウルリクの素肌に手のひらを滑らせながら、そのまま抱き上げてベッドへ運んだ。
新調した大きなベッドにウルリクが仰向けに横たわっている。
抵抗されない。クリスのすべてを許してくれる、寛容すぎる主人。愛おしさに底がない。
「暑い。脱がせろ」
「はい、ウルリクさま」
薄着だが貴族らしい刺繍の施された長衣をそっと、しかし迅速に剥ぎ取り、自身の衣服は蹴飛ばす勢いで脱ぐ。
クリスの焦った様子に、ウルリクはくすくすと妖艶に笑う。
「おまえも脱ぐのか? 今日はしないと言ったぞ」
「あ、いえその」
「ふふ……おれの従者はどうしようもないな」
冷血の体のつめたさを実感するかのように、背中をぐっと抱き上げられクリスの体と肌を密着させられる。
あまりに熱い。焼け溶けてしまいそうな熱さだ。
それが気温と違って全く不快ではない。
結局ウルリクはクリスを拒むことなどできないのだ。
せいぜい、酷使されることになる体の不調を後からぐちぐち言うくらいしかできない。
いつだってこの可愛い眷属に何もかも与えてやりたくなってしまう。
「触れるだけで満足か?」
「もっと奥まで触れたいです。冷たいあなたの、熱いところまで」
「許す。暴いてみせろ」
「あぁ、ウルリクさま……っ」
眷属となり、人より吸血鬼に近くなったクリスはしかし、見た目や身体機能にほとんど変わりはないようだった。
彼は変わらずおだやかで聡明で従順で、髪も爪も伸びるし、胸の鼓動は熱く打ち付けている。
心臓を重ね合わせるように触れる肌から感情までもが伝わる。
それからその下にある、どこよりも熱く脈打つ器官が、ウルリクのまだ兆し半ばのものをごりごりと擦り上げて恐ろしいほどだ。
「んっ……いいから、早く準備しろ」
「あなたの冷たい肌に触れたい眷属の願いを、叶えてくださらないのですか?」
「んぁ、あっ、ぁっ……早く入れたいくせに余裕ぶるな!」
「仰せのままに、我が主」
「ひゃ、あっ!」
クリスによって快楽を教え込まれた胸の粒がべろりと舐め上げられ、ウルリクは仰け反った。
この従者、大筋は言うことを聞くが、近頃は反抗的な態度も多い。
彼の熱を受け止める秘所の下準備をしながら、空いた手や口が別の場所をいじる。
つんと立った乳首を転がすように翻弄されたり、カリカリと爪で引っかかれたり。無防備な首筋や鎖骨に、眷属の発達した犬歯が軽く当てられたり。
どんな仕草もクリスが相手だと、快楽として変換されてしまう。
「も、はやく、しろ!」
「まだほぐさないと……」
「うるさい。昨日もしたんだ、もう入るだろう!」
「それもそうか。では入れますね」
「ぁ、ちょ、あぁっ……!」
間髪入れず奥まで突き入れられ、ウルリクは精と嬌声を押し出させられた。
絶頂した余韻で体が勝手にびくん、びくんと跳ねる。腹の中が異様に熱い。その熱が周囲を馴染ませるように、小刻みに動き始める。
「ま、まって、ぁ、今イったばっか、あっあっ」
「えぇ、気持ちいいですね」
「とま、とまって、ひぁ、あ────っ」
ぎりぎりまで抜いて奥まで突き刺すストロークは、ウルリクを何度も頂きへ放り上げ際限がない。出さずに達している。
こうなるとウルリクにとっては甘い地獄でしかなく、ただただ年下の従者にしがみついて翻弄されるしかない。
「不思議ですね。肌は冷えているのに、ウルリクさまの奥はこんなに熱い……」
最奥をぐりぐりと押しつぶされ、声にならない嬌声がほとばしる。
再び絶頂へ押し上げられ、ウルリクはなすすべもなく全身を痙攣させた。
震えるウルリクを大きな手が宥めるように撫で、熱い舌が首筋を舐め、鋭い牙が皮膚に沈められる。
肉壁がクリスをぎゅうっと締め上げ、奥に熱が叩きつけられた。
精を与えられ、血を与える。
倒錯的すぎる円環に心が震える。
「あ────」
あつい。
汗ばんだ金髪を肌に張り付けた男が愛おしそうに頬を撫でてくる……と認識したところで、急速な眠気に襲われ、ウルリクは気を失った。
「暑気あたりだな」
数時間後に目覚めたウルリクは、半泣きのクリスに体を拭かれているところだった。
外気の高さにただでさえ参っていたところに、急激に体力を消耗し、暑さも手伝って、倒れてしまったらしい。
冷血のはずのウルリクの異様な熱さに、クリスはすぐさまウルリクを地下の石室へ運び込んだ。
吸血鬼が長い時を眠って過ごすための地下石室は、季節による気温変化が乏しくいつも冷えている。現在は屋敷の主人の使わなくなった石棺があるほか、食材などが傷まないよう倉庫として使われている。
その一角に横たわり、甲斐甲斐しいクリスの世話を受け、ウルリクはすぐに回復した。
「あまり気に病むな、クリス。今年の夏は例年に比べ酷暑らしいからな、こういうこともある」
「ウルリクさま……」
「おまえ、反省して血飲まないとかヤらないとか言い出しそうだからな。いいか、おれの唯一の眷属たるもの、死に方を選べると思うな。おまえは血を吸い肉を食い、健康に長生きせねばならん。わかっているな?」
「うぅ……はい」
「よろしい。それで、さっきので血は足りているか?」
「少し吸いすぎたくらいかと」
「ふっ、まだ若いな、適量も計れんとは。ならおまえの血を寄越せ」
「はい、ウルリクさま」
ゆっくりと抱き上げられ、クリスの首筋まで頭を運ばれる。
従順で可愛らしい、おれだけの従者。
こんなに出来た眷属はきっともう二度と得られないだろう。
密かな喜びと優越を感じながら、吸血鬼は熱い血潮の流れる肌に牙を突き立てた。
その石柱群の合間にひっそりと佇むのは、吸血鬼伯爵の棲む石造りの邸宅だ。
住民と村の大工がこつこつ増築するその家は、少しずつ快適になりつつあるが、いかんせん木造と違って融通の効かない部分がある。
特に冬は、どう隙間を埋めても寒さが入り込んでくるので、かなり厳しい住環境だ。
反対に夏は、熱を伝えにくい石壁の性質上涼しいことが多い。
のだが、家主はそれでも不満のようだった。
「あ、つ、いぃ……」
「大丈夫ですか、ウルリクさま」
「これが大丈夫に見えるかクリスよ。暑い、あつすぎる」
石造りの床にひっくり返る主を、従者兼眷属たるクリスは悲しげに見下ろすことしかできない。
遥か星霜を重ねる吸血鬼たるウルリクは、暑さにも寒さにも弱い。
冬は秋口から寒い寒いと大騒ぎして、真冬などは毛皮を何枚も体に巻き付けて暖炉の前から動かなくなってしまう。
ふつう、冬が極端に苦手なものは夏は得意だったり、その逆だったりするものだとクリスは思っていたが、主はそうではないらしい。
「なんだその顔は。わかるぞ、おまえの考えなどお見通しだ。おれが軟弱だと思っているのだろう」
「いえ、そんなことは決して」
「ふん、どうだか。おれが軟弱だとしたらそれは、毎晩毎晩遅くまで何度も眷属の相手をしてやっている優しさゆえのことであるぞ」
「は……昨日はその、無理をさせてしまい、申し訳ありません」
「まったくだ。おれもおまえも休み前だからとはりきりすぎだ。今日はしないからな」
「はい……」
クリスも昔は子供相応に暑さ寒さを感じていたものだが、長じて筋肉がついたせいか、夏も冬もそれほど苦ではなくなった。
加えて吸血鬼の眷属となったせいか、日々気力がみなぎり、一日中力仕事をしていても体力が尽きないほどだ。
そういう日はどうしても主の優しさに甘えてしまう。
昨日は力仕事が少なく、有り余った体力をウルリクにぶつけてしまった。
優しい主はいつだってクリスを受け入れてくれるものだから、色々な体位を試しつつシーツがだめになるまで励んでしまって、ウルリクから本気の「もうやめて……」が出たのだった。
もっとも、やりすぎた責任はクリスにあろうが、悶々とするクリスを寝所に誘ったのはウルリクだ。
しかしこういうときに「昨日はウルリクさまもノリノリだったじゃないですか」などと言えば、十倍の口撃が返ってくるので、クリスは神妙にお叱りを拝聴した。
罪滅ぼし代わりに、鳥の羽で作った扇子でウルリクを扇ぐ。
「はぁ……吸血鬼は冷血と言ってな、体温が低いのは心臓の鼓動が遅く血が冷たいせいだそうだ」
「そうなのですね」
「だからといって暑さ寒さに強いわけではないのだが、他者が吸血鬼に触れるのには一定の効果があるらしい。ほら、冷たいだろう」
すっと差し出された手を恭しく受け取ると、たしかにひんやりとしている。
それよりクリスは、伯爵のすべすべとした柔らかい肌や、細いながらも男らしく隆起する手の甲や指の関節の感触が気になった。
この手がクリスに触れ、クリスに縋り、クリスの背に爪を立てる。
あらぬことを考え始めてしまうと体温が上がり、ウルリクの冷たい手はますます心地よい手触りとなった。
するりと手首、肘のほうまで手をすべらせる。
あぁ、つめたい。
「……ん」
肘の内側をくすぐると、ウルリクがほんのわずかな声をこぼした。
血色の瞳は細められ、なにかを堪えるように薄いくちびるがわななく。
反射的に掴んだままの腕を引き寄せ唇にむさぼりついていた。
「ぁ、ふぁ……くりす……」
「ウルリクさま、とても触り心地が良くて……もっと触れていいですか?」
「ん、許す」
硬い床にいつまでも転がしておくわけにいかないと思っていたのでちょうどいい。
クリスはウルリクの素肌に手のひらを滑らせながら、そのまま抱き上げてベッドへ運んだ。
新調した大きなベッドにウルリクが仰向けに横たわっている。
抵抗されない。クリスのすべてを許してくれる、寛容すぎる主人。愛おしさに底がない。
「暑い。脱がせろ」
「はい、ウルリクさま」
薄着だが貴族らしい刺繍の施された長衣をそっと、しかし迅速に剥ぎ取り、自身の衣服は蹴飛ばす勢いで脱ぐ。
クリスの焦った様子に、ウルリクはくすくすと妖艶に笑う。
「おまえも脱ぐのか? 今日はしないと言ったぞ」
「あ、いえその」
「ふふ……おれの従者はどうしようもないな」
冷血の体のつめたさを実感するかのように、背中をぐっと抱き上げられクリスの体と肌を密着させられる。
あまりに熱い。焼け溶けてしまいそうな熱さだ。
それが気温と違って全く不快ではない。
結局ウルリクはクリスを拒むことなどできないのだ。
せいぜい、酷使されることになる体の不調を後からぐちぐち言うくらいしかできない。
いつだってこの可愛い眷属に何もかも与えてやりたくなってしまう。
「触れるだけで満足か?」
「もっと奥まで触れたいです。冷たいあなたの、熱いところまで」
「許す。暴いてみせろ」
「あぁ、ウルリクさま……っ」
眷属となり、人より吸血鬼に近くなったクリスはしかし、見た目や身体機能にほとんど変わりはないようだった。
彼は変わらずおだやかで聡明で従順で、髪も爪も伸びるし、胸の鼓動は熱く打ち付けている。
心臓を重ね合わせるように触れる肌から感情までもが伝わる。
それからその下にある、どこよりも熱く脈打つ器官が、ウルリクのまだ兆し半ばのものをごりごりと擦り上げて恐ろしいほどだ。
「んっ……いいから、早く準備しろ」
「あなたの冷たい肌に触れたい眷属の願いを、叶えてくださらないのですか?」
「んぁ、あっ、ぁっ……早く入れたいくせに余裕ぶるな!」
「仰せのままに、我が主」
「ひゃ、あっ!」
クリスによって快楽を教え込まれた胸の粒がべろりと舐め上げられ、ウルリクは仰け反った。
この従者、大筋は言うことを聞くが、近頃は反抗的な態度も多い。
彼の熱を受け止める秘所の下準備をしながら、空いた手や口が別の場所をいじる。
つんと立った乳首を転がすように翻弄されたり、カリカリと爪で引っかかれたり。無防備な首筋や鎖骨に、眷属の発達した犬歯が軽く当てられたり。
どんな仕草もクリスが相手だと、快楽として変換されてしまう。
「も、はやく、しろ!」
「まだほぐさないと……」
「うるさい。昨日もしたんだ、もう入るだろう!」
「それもそうか。では入れますね」
「ぁ、ちょ、あぁっ……!」
間髪入れず奥まで突き入れられ、ウルリクは精と嬌声を押し出させられた。
絶頂した余韻で体が勝手にびくん、びくんと跳ねる。腹の中が異様に熱い。その熱が周囲を馴染ませるように、小刻みに動き始める。
「ま、まって、ぁ、今イったばっか、あっあっ」
「えぇ、気持ちいいですね」
「とま、とまって、ひぁ、あ────っ」
ぎりぎりまで抜いて奥まで突き刺すストロークは、ウルリクを何度も頂きへ放り上げ際限がない。出さずに達している。
こうなるとウルリクにとっては甘い地獄でしかなく、ただただ年下の従者にしがみついて翻弄されるしかない。
「不思議ですね。肌は冷えているのに、ウルリクさまの奥はこんなに熱い……」
最奥をぐりぐりと押しつぶされ、声にならない嬌声がほとばしる。
再び絶頂へ押し上げられ、ウルリクはなすすべもなく全身を痙攣させた。
震えるウルリクを大きな手が宥めるように撫で、熱い舌が首筋を舐め、鋭い牙が皮膚に沈められる。
肉壁がクリスをぎゅうっと締め上げ、奥に熱が叩きつけられた。
精を与えられ、血を与える。
倒錯的すぎる円環に心が震える。
「あ────」
あつい。
汗ばんだ金髪を肌に張り付けた男が愛おしそうに頬を撫でてくる……と認識したところで、急速な眠気に襲われ、ウルリクは気を失った。
「暑気あたりだな」
数時間後に目覚めたウルリクは、半泣きのクリスに体を拭かれているところだった。
外気の高さにただでさえ参っていたところに、急激に体力を消耗し、暑さも手伝って、倒れてしまったらしい。
冷血のはずのウルリクの異様な熱さに、クリスはすぐさまウルリクを地下の石室へ運び込んだ。
吸血鬼が長い時を眠って過ごすための地下石室は、季節による気温変化が乏しくいつも冷えている。現在は屋敷の主人の使わなくなった石棺があるほか、食材などが傷まないよう倉庫として使われている。
その一角に横たわり、甲斐甲斐しいクリスの世話を受け、ウルリクはすぐに回復した。
「あまり気に病むな、クリス。今年の夏は例年に比べ酷暑らしいからな、こういうこともある」
「ウルリクさま……」
「おまえ、反省して血飲まないとかヤらないとか言い出しそうだからな。いいか、おれの唯一の眷属たるもの、死に方を選べると思うな。おまえは血を吸い肉を食い、健康に長生きせねばならん。わかっているな?」
「うぅ……はい」
「よろしい。それで、さっきので血は足りているか?」
「少し吸いすぎたくらいかと」
「ふっ、まだ若いな、適量も計れんとは。ならおまえの血を寄越せ」
「はい、ウルリクさま」
ゆっくりと抱き上げられ、クリスの首筋まで頭を運ばれる。
従順で可愛らしい、おれだけの従者。
こんなに出来た眷属はきっともう二度と得られないだろう。
密かな喜びと優越を感じながら、吸血鬼は熱い血潮の流れる肌に牙を突き立てた。
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