叔父に狙われてます

夜山 楓

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隠蔽

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 大まかなことは決まりました。あまり作り過ぎても破綻してしまうことでしょう。あたくしは殿下を手本に、旅人を装うだけですわ。
 ああ、でも……この荷物は如何いたしましょう。
 旅人が持つには見るからに高級な鞄にございます。細やかな刺繍や、極めつけに家紋まで入っておりますわ。これでは目立って仕方がありません。

 とりあえず、荷物から商売道具となる鍋や薬棚、水筒を取り出します。
 中にあった貴金属は川へと投げました。
 ドレスは……火の結界の中で燃やしてしまいましょう。ドレスが見つかれば、あたくしの動向が知れる可能性がございます。
 しかし、全く見つからないというのもおかしな話です。ドレスの中でも一番鍋に当たった部分、袖口を破り取って川へと流します。
 外に旅人が持って不自然でないものを取りだし、革袋にしまいこみます。
 分厚いマントに浮遊の術をかければ、簡易な乗り物の完成です。……飛行の術さえ修得しておけばこのような小細工をせずにすみました。やはり、フィリー達にならって修得するべきだったのかもしれません。

 川を上り、流れが早く渦を巻くような場所までやってきました。鞄の鍵を開けたら、渦の中へと落とします。
 落ちた鞄はすぐに川の濁りによって見えなくなりました。貴重な品もございましたが、致し方ありません。

 ドレスを燃やしている場所へと戻ると、ちょうど良い頃合いだったのか、燃え尽きるところでした。
 あたくしは火の結界を解除すると、その炎へと一抱えある平たい石を投げ込みます。
 道中に獲った魚を捌き、薬棚から香草を取り出して揉みこんで寝かせ、炎から石を取り出しました。
 焼き石に魚を置けば、かぐしい匂いが昇ります。頃合いを見て浮遊の術でひっくり返しました。
 ああ、早く焼ければよろしいのに!

 魚を頬張っておりますと、何者かが数人、此方へと向かってくるのを察知しました。
 魚を飲み込み、周囲へと結界を十枚、カウンターを二十段、半径50mの対象者以外魔力無効の術を張り巡らせます。
「そこの者」
「はい、何でしょう」
 姿を現したのは男5人でした。我が家に属する鎧を着ているものの、その顔に見覚えのあるものはありません。
「女性を見かけなかったか?」
「女性!?」
 ちょっと大げさに驚いてみます。
「もしや、遭難者ですか? わたくし、治療師をしております。よろしければ、同行させてください」
「う、いや、大丈夫だ」
「しかし、怪我をしていたり、衰弱とか、色々と心配です」
「必要ない! こちらにも治療師はいるのでな。それと、あと2時間も経てば日の暮れとなるだろう。早く下山するが良い。ただ、道中に女性と出会ったのならば町の詰所に伝えて欲しい」
 さっさと町へ帰るのだぞ! と言い残すと、私兵達は去って行きます。立ち去ったのです。
 あたくしは笑みを隠すために魚を頬張りました。
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