5 / 5
イェロウ伯爵領
ノーランの町
しおりを挟む
川を下って行きますと山道に出ました。道を辿れば人里に着きます。
「何者か!」
護民官に誰何されました。山から見知らぬ者が下りて来たので警戒されているのでしょう。
「治療師のラファエルです! 滞在の許可を願います!」
護民官はそこで止まれ! と叫びますと、こちらへやって参ります。
「身分証と荷物を見せてもらおう」
あたくしは魔道紋と荷物を渡して2歩下がります。
護民官は検査を終えますと、滞在許可証を取り出しました。
「ようこそ、ノーランへ。歓迎しますよ、治療師様」
「滞在許可、ありがとうございます。護民官殿」
寄ってくるヤギを追い払いながら、あたくしは背丈を超えるサトウキビや田畑を抜けて町へと向かいます。
すれ違う農民達は遠巻きにこちらを見ておりました。
田園風景を過ぎ去りますと、町の外壁に辿り着きます。門を通る際には再び身分証と荷物の検査、そして滞在許可証を提出しますと、ようやっと町の中へ入れました。
とりあえず、町の役分署へ向かいます。
手持ちの貨幣がいつ切れるか分かりません。治療師としての活動許可を取得しようかと存じます。
役分署は町の中心にございました。賑わう商店街や繁華街から少し離れているからか、人混みは少なくなっています。
役分署を守る護民官に用を問われて治療師として働く手続きをしたい旨を伝えれば、彼女は雰囲気を和らげて微笑みます。
「治療師様でしたか。ようこそいらっしゃいました。初見の方は付き添うこととなっております。こちらへどうぞ」
対の護民官が話している内に応援を呼んでいたのでしょう。どこからともなく二人の男がやって来ました。
『治療師として働くのは教会で』とのことでした。この町も多くの町同様、教会が治療院を兼ねているようです。更に、『治療師として働くので巡礼の方がいなければ教会を宿とすることも可能』であるとか。
不安定な身です。とてもありがたいですね。
ノーランの教会は農村の多くがそうであるように、豊穣神を中心とした合併教会です。あたくしは一柱一柱、順番に祈りを捧げ、回復神の前ではそっと祝詞を唱えます。
「全てを戻す回復神よ 今よりこの地で治療師を勤めることとなりました 願わくはこの身に癒しの加護をお与え下さい」
一礼をもって去ろうとしたところで、立ち止まります。
「願わく、は……」
助けを求めても良いのでしょうか……
「身許にあるイオンにお伝え下さい 貴方の幸せをお祈りしております……と」
イオンに助けを求めるのは止めました。幸せは祈れますが、幸せな姿を見るのは辛いのです。
リン、と鈴が鳴りました。
不思議なことに、山を歩いて疲れていた身体が、鍋がぶつかり痛めた所が。すっかりと痛みをなくしました。
「ありがとう、ございます」
呆然と、回復神を見上げます。
祝福を受けて産まれたイオンや守護獣の契約候補であるレイに聞いてはいましたが、神の御力をいただくのは初めてのことでした。
神様が見ていて下さることに、どことなく、浮かれてしまいます。
今は叔父より狙われ逃亡する身の上ですが、無事に元の場所に戻れるような気がしてきました。
身体に活力が充ちてきます。これも回復神の御力なのでしょうか?
谷より落とされた頃から沈んでいた心は、浮かび、晴れ渡って行きます。
さ、まずはこの教会を預かる神官様にご挨拶をしましょう。
「何者か!」
護民官に誰何されました。山から見知らぬ者が下りて来たので警戒されているのでしょう。
「治療師のラファエルです! 滞在の許可を願います!」
護民官はそこで止まれ! と叫びますと、こちらへやって参ります。
「身分証と荷物を見せてもらおう」
あたくしは魔道紋と荷物を渡して2歩下がります。
護民官は検査を終えますと、滞在許可証を取り出しました。
「ようこそ、ノーランへ。歓迎しますよ、治療師様」
「滞在許可、ありがとうございます。護民官殿」
寄ってくるヤギを追い払いながら、あたくしは背丈を超えるサトウキビや田畑を抜けて町へと向かいます。
すれ違う農民達は遠巻きにこちらを見ておりました。
田園風景を過ぎ去りますと、町の外壁に辿り着きます。門を通る際には再び身分証と荷物の検査、そして滞在許可証を提出しますと、ようやっと町の中へ入れました。
とりあえず、町の役分署へ向かいます。
手持ちの貨幣がいつ切れるか分かりません。治療師としての活動許可を取得しようかと存じます。
役分署は町の中心にございました。賑わう商店街や繁華街から少し離れているからか、人混みは少なくなっています。
役分署を守る護民官に用を問われて治療師として働く手続きをしたい旨を伝えれば、彼女は雰囲気を和らげて微笑みます。
「治療師様でしたか。ようこそいらっしゃいました。初見の方は付き添うこととなっております。こちらへどうぞ」
対の護民官が話している内に応援を呼んでいたのでしょう。どこからともなく二人の男がやって来ました。
『治療師として働くのは教会で』とのことでした。この町も多くの町同様、教会が治療院を兼ねているようです。更に、『治療師として働くので巡礼の方がいなければ教会を宿とすることも可能』であるとか。
不安定な身です。とてもありがたいですね。
ノーランの教会は農村の多くがそうであるように、豊穣神を中心とした合併教会です。あたくしは一柱一柱、順番に祈りを捧げ、回復神の前ではそっと祝詞を唱えます。
「全てを戻す回復神よ 今よりこの地で治療師を勤めることとなりました 願わくはこの身に癒しの加護をお与え下さい」
一礼をもって去ろうとしたところで、立ち止まります。
「願わく、は……」
助けを求めても良いのでしょうか……
「身許にあるイオンにお伝え下さい 貴方の幸せをお祈りしております……と」
イオンに助けを求めるのは止めました。幸せは祈れますが、幸せな姿を見るのは辛いのです。
リン、と鈴が鳴りました。
不思議なことに、山を歩いて疲れていた身体が、鍋がぶつかり痛めた所が。すっかりと痛みをなくしました。
「ありがとう、ございます」
呆然と、回復神を見上げます。
祝福を受けて産まれたイオンや守護獣の契約候補であるレイに聞いてはいましたが、神の御力をいただくのは初めてのことでした。
神様が見ていて下さることに、どことなく、浮かれてしまいます。
今は叔父より狙われ逃亡する身の上ですが、無事に元の場所に戻れるような気がしてきました。
身体に活力が充ちてきます。これも回復神の御力なのでしょうか?
谷より落とされた頃から沈んでいた心は、浮かび、晴れ渡って行きます。
さ、まずはこの教会を預かる神官様にご挨拶をしましょう。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる