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イェロウ伯爵領
ノーランの町
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川を下って行きますと山道に出ました。道を辿れば人里に着きます。
「何者か!」
護民官に誰何されました。山から見知らぬ者が下りて来たので警戒されているのでしょう。
「治療師のラファエルです! 滞在の許可を願います!」
護民官はそこで止まれ! と叫びますと、こちらへやって参ります。
「身分証と荷物を見せてもらおう」
あたくしは魔道紋と荷物を渡して2歩下がります。
護民官は検査を終えますと、滞在許可証を取り出しました。
「ようこそ、ノーランへ。歓迎しますよ、治療師様」
「滞在許可、ありがとうございます。護民官殿」
寄ってくるヤギを追い払いながら、あたくしは背丈を超えるサトウキビや田畑を抜けて町へと向かいます。
すれ違う農民達は遠巻きにこちらを見ておりました。
田園風景を過ぎ去りますと、町の外壁に辿り着きます。門を通る際には再び身分証と荷物の検査、そして滞在許可証を提出しますと、ようやっと町の中へ入れました。
とりあえず、町の役分署へ向かいます。
手持ちの貨幣がいつ切れるか分かりません。治療師としての活動許可を取得しようかと存じます。
役分署は町の中心にございました。賑わう商店街や繁華街から少し離れているからか、人混みは少なくなっています。
役分署を守る護民官に用を問われて治療師として働く手続きをしたい旨を伝えれば、彼女は雰囲気を和らげて微笑みます。
「治療師様でしたか。ようこそいらっしゃいました。初見の方は付き添うこととなっております。こちらへどうぞ」
対の護民官が話している内に応援を呼んでいたのでしょう。どこからともなく二人の男がやって来ました。
『治療師として働くのは教会で』とのことでした。この町も多くの町同様、教会が治療院を兼ねているようです。更に、『治療師として働くので巡礼の方がいなければ教会を宿とすることも可能』であるとか。
不安定な身です。とてもありがたいですね。
ノーランの教会は農村の多くがそうであるように、豊穣神を中心とした合併教会です。あたくしは一柱一柱、順番に祈りを捧げ、回復神の前ではそっと祝詞を唱えます。
「全てを戻す回復神よ 今よりこの地で治療師を勤めることとなりました 願わくはこの身に癒しの加護をお与え下さい」
一礼をもって去ろうとしたところで、立ち止まります。
「願わく、は……」
助けを求めても良いのでしょうか……
「身許にあるイオンにお伝え下さい 貴方の幸せをお祈りしております……と」
イオンに助けを求めるのは止めました。幸せは祈れますが、幸せな姿を見るのは辛いのです。
リン、と鈴が鳴りました。
不思議なことに、山を歩いて疲れていた身体が、鍋がぶつかり痛めた所が。すっかりと痛みをなくしました。
「ありがとう、ございます」
呆然と、回復神を見上げます。
祝福を受けて産まれたイオンや守護獣の契約候補であるレイに聞いてはいましたが、神の御力をいただくのは初めてのことでした。
神様が見ていて下さることに、どことなく、浮かれてしまいます。
今は叔父より狙われ逃亡する身の上ですが、無事に元の場所に戻れるような気がしてきました。
身体に活力が充ちてきます。これも回復神の御力なのでしょうか?
谷より落とされた頃から沈んでいた心は、浮かび、晴れ渡って行きます。
さ、まずはこの教会を預かる神官様にご挨拶をしましょう。
「何者か!」
護民官に誰何されました。山から見知らぬ者が下りて来たので警戒されているのでしょう。
「治療師のラファエルです! 滞在の許可を願います!」
護民官はそこで止まれ! と叫びますと、こちらへやって参ります。
「身分証と荷物を見せてもらおう」
あたくしは魔道紋と荷物を渡して2歩下がります。
護民官は検査を終えますと、滞在許可証を取り出しました。
「ようこそ、ノーランへ。歓迎しますよ、治療師様」
「滞在許可、ありがとうございます。護民官殿」
寄ってくるヤギを追い払いながら、あたくしは背丈を超えるサトウキビや田畑を抜けて町へと向かいます。
すれ違う農民達は遠巻きにこちらを見ておりました。
田園風景を過ぎ去りますと、町の外壁に辿り着きます。門を通る際には再び身分証と荷物の検査、そして滞在許可証を提出しますと、ようやっと町の中へ入れました。
とりあえず、町の役分署へ向かいます。
手持ちの貨幣がいつ切れるか分かりません。治療師としての活動許可を取得しようかと存じます。
役分署は町の中心にございました。賑わう商店街や繁華街から少し離れているからか、人混みは少なくなっています。
役分署を守る護民官に用を問われて治療師として働く手続きをしたい旨を伝えれば、彼女は雰囲気を和らげて微笑みます。
「治療師様でしたか。ようこそいらっしゃいました。初見の方は付き添うこととなっております。こちらへどうぞ」
対の護民官が話している内に応援を呼んでいたのでしょう。どこからともなく二人の男がやって来ました。
『治療師として働くのは教会で』とのことでした。この町も多くの町同様、教会が治療院を兼ねているようです。更に、『治療師として働くので巡礼の方がいなければ教会を宿とすることも可能』であるとか。
不安定な身です。とてもありがたいですね。
ノーランの教会は農村の多くがそうであるように、豊穣神を中心とした合併教会です。あたくしは一柱一柱、順番に祈りを捧げ、回復神の前ではそっと祝詞を唱えます。
「全てを戻す回復神よ 今よりこの地で治療師を勤めることとなりました 願わくはこの身に癒しの加護をお与え下さい」
一礼をもって去ろうとしたところで、立ち止まります。
「願わく、は……」
助けを求めても良いのでしょうか……
「身許にあるイオンにお伝え下さい 貴方の幸せをお祈りしております……と」
イオンに助けを求めるのは止めました。幸せは祈れますが、幸せな姿を見るのは辛いのです。
リン、と鈴が鳴りました。
不思議なことに、山を歩いて疲れていた身体が、鍋がぶつかり痛めた所が。すっかりと痛みをなくしました。
「ありがとう、ございます」
呆然と、回復神を見上げます。
祝福を受けて産まれたイオンや守護獣の契約候補であるレイに聞いてはいましたが、神の御力をいただくのは初めてのことでした。
神様が見ていて下さることに、どことなく、浮かれてしまいます。
今は叔父より狙われ逃亡する身の上ですが、無事に元の場所に戻れるような気がしてきました。
身体に活力が充ちてきます。これも回復神の御力なのでしょうか?
谷より落とされた頃から沈んでいた心は、浮かび、晴れ渡って行きます。
さ、まずはこの教会を預かる神官様にご挨拶をしましょう。
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