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19話 騎士団団長の令息①
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クリーニング店の店主が夜逃げしたとかで、俺の制服は結局手元に戻ることはなかった。
新しいのを購入しようと教師に相談した所、入荷までに半年はかかるそうで、結局買えず、ノアディアの厚意で何着か制服を貰うことになった。今度何かお礼でもしないとな。
ブカブカなままだと大変なので、裾上げと袖丈詰めをしたら何故か残念がられた。
そういえば、今日は4学年の夏休み前に一度だけ開催される剣術学園との合同演習がある日だ。
魔法学園の者と剣術学園の者とがペアを組み、勝ち抜き形式の試合方法で生徒同士が競い合い、実戦での魔法や剣の扱い方、チームワーク等を学んでいくという目的で取り組まれた行事である。
勿論だが、この試合は成績に影響する実技テストでもある。
前回の実技では3位になってしまったので、ここで挽回しないといけないな、と焦燥感に駆られる。
一緒に協力する相手と上手く連携できるだろうか、等と思案しながら、掲示板に張り出された相手の名前を確認する。
────先述した通り、コンビを組むのは剣術学園の生徒だと決まっているのだが。
「なぁ、今回こそは別のヤツと一緒になれると思ったんだが・・・。」
「?」
平然とした晴れやかな顔をこちらに向け、首を傾ける。
「なんでまたノアディアとペアなんだよ!剣術学園の人とペアじゃないのかよ・・・。」
このままでは俺の実戦技術は低迷してしまうのではなかろうか。一度校長に直談判すべきだろうか。
「どうやら今年は欠席者がいたらしく、人数が足りなかったみたいですね。安心して下さい。私は剣も扱えますから。」
「十中八九そのせいで俺達ペアにされたんだけど!?」
「そのおかげの間違いですよ。」
と言ってよしよしと頭と頬を撫でてくる。
撫でるな!それ癖なのか!
「私は学校長から剣も魔法も使っていいと了承を得ていますので、案ずることはありませんよ。」
校長も認めてるのかよ!?せめて俺じゃないヤツと組ませた方がいいんじゃないのか!?力の釣り合いがとれていない気がする。
これじゃ優勝は確定じゃないか、つまらないじゃないかとふくれっ面をしていたら、ノアディアは手を頬で止めて悶え始めた。大丈夫か。
・・・ったく、撫でられるのは嫌いではないのだが、緊張してしまうのでやめて頂きたいものだ。
「ベイスー!またオレとペアになったな。よろしくな!」
俺達が揉めていたら、グローリオに駆け寄ってくる大柄な男が遠目に見えた。
赤髪赤目で高身長なその男は、2年前俺に「魔法も得意なら剣も得意だよな!」等とハチャメチャな事を言って勝負を挑んできた過去を持つ、脳筋野郎だった。
俺は筋肉・・・いや、剣とは無縁なので勝負を断ったが、それなら一緒に鍛えないかとトレーニングに誘われた。勿論それも断った。
───俺は剣を使う予定はないからな。
「・・・何でお前といつも一緒なんだ。」
ムッとしてグローリオが俺と似たような事を言う。
「連れないこと言うなよっ!いつも一緒でオレは嬉しいぞ?」
「・・・。」
そう言ってベイス・グローリオに抱き着く男。身長差がある為か、グローリオの顔がソイツの胸によって隠れてしまった。
高身長で筋肉質・・・少しも羨ましくなどない。
───どうやらグローリオは王国騎士団団長の息子であるウィリー・ゼリファーとペアになった様子だ。
ゼリファーは剣術学園で、実技では常にトップの成績にいるが、見た目通り脳筋体質なので座学は不得手であり、幼馴染であるグローリオにいつも勉強を教えて貰っている。
グローリオが苦手としているヤツは、予想はしていたがゼリファーの事かもしれないな。暑苦しいヤツだし。そうだとしたら、お前も俺も運が悪いな。
謎の仲間意識が芽生える。
「・・・っ、いい加減どいて。」
「久しぶりに会った事だし、放課後一緒に肉でも食いに行くか!!」
「・・・。優勝したら考える。」
「ちゃんと食わないと大きくなれないぞー?」
あー、でも。なんやかんやで仲良しなんだよな、あの二人。なんだか微笑ましくなる。
そんな俺をよそにヒロインはこの光景を見て、「ふへへ、今日新たにオアシスが誕生した・・・。」なんて理解不能な事を言っていた。
呪いにかかって幻覚でも見えているのだろうか。解呪魔法をバレないようにそっと掛けたが、効果がなかったのでどうやら正気だったみたいだ。
よし、今後アイツには近付かないでおこう。制服も盗まれたままだしな。
俺は急いで運動着に着替え、別館にある試合場へと向かった。
新しいのを購入しようと教師に相談した所、入荷までに半年はかかるそうで、結局買えず、ノアディアの厚意で何着か制服を貰うことになった。今度何かお礼でもしないとな。
ブカブカなままだと大変なので、裾上げと袖丈詰めをしたら何故か残念がられた。
そういえば、今日は4学年の夏休み前に一度だけ開催される剣術学園との合同演習がある日だ。
魔法学園の者と剣術学園の者とがペアを組み、勝ち抜き形式の試合方法で生徒同士が競い合い、実戦での魔法や剣の扱い方、チームワーク等を学んでいくという目的で取り組まれた行事である。
勿論だが、この試合は成績に影響する実技テストでもある。
前回の実技では3位になってしまったので、ここで挽回しないといけないな、と焦燥感に駆られる。
一緒に協力する相手と上手く連携できるだろうか、等と思案しながら、掲示板に張り出された相手の名前を確認する。
────先述した通り、コンビを組むのは剣術学園の生徒だと決まっているのだが。
「なぁ、今回こそは別のヤツと一緒になれると思ったんだが・・・。」
「?」
平然とした晴れやかな顔をこちらに向け、首を傾ける。
「なんでまたノアディアとペアなんだよ!剣術学園の人とペアじゃないのかよ・・・。」
このままでは俺の実戦技術は低迷してしまうのではなかろうか。一度校長に直談判すべきだろうか。
「どうやら今年は欠席者がいたらしく、人数が足りなかったみたいですね。安心して下さい。私は剣も扱えますから。」
「十中八九そのせいで俺達ペアにされたんだけど!?」
「そのおかげの間違いですよ。」
と言ってよしよしと頭と頬を撫でてくる。
撫でるな!それ癖なのか!
「私は学校長から剣も魔法も使っていいと了承を得ていますので、案ずることはありませんよ。」
校長も認めてるのかよ!?せめて俺じゃないヤツと組ませた方がいいんじゃないのか!?力の釣り合いがとれていない気がする。
これじゃ優勝は確定じゃないか、つまらないじゃないかとふくれっ面をしていたら、ノアディアは手を頬で止めて悶え始めた。大丈夫か。
・・・ったく、撫でられるのは嫌いではないのだが、緊張してしまうのでやめて頂きたいものだ。
「ベイスー!またオレとペアになったな。よろしくな!」
俺達が揉めていたら、グローリオに駆け寄ってくる大柄な男が遠目に見えた。
赤髪赤目で高身長なその男は、2年前俺に「魔法も得意なら剣も得意だよな!」等とハチャメチャな事を言って勝負を挑んできた過去を持つ、脳筋野郎だった。
俺は筋肉・・・いや、剣とは無縁なので勝負を断ったが、それなら一緒に鍛えないかとトレーニングに誘われた。勿論それも断った。
───俺は剣を使う予定はないからな。
「・・・何でお前といつも一緒なんだ。」
ムッとしてグローリオが俺と似たような事を言う。
「連れないこと言うなよっ!いつも一緒でオレは嬉しいぞ?」
「・・・。」
そう言ってベイス・グローリオに抱き着く男。身長差がある為か、グローリオの顔がソイツの胸によって隠れてしまった。
高身長で筋肉質・・・少しも羨ましくなどない。
───どうやらグローリオは王国騎士団団長の息子であるウィリー・ゼリファーとペアになった様子だ。
ゼリファーは剣術学園で、実技では常にトップの成績にいるが、見た目通り脳筋体質なので座学は不得手であり、幼馴染であるグローリオにいつも勉強を教えて貰っている。
グローリオが苦手としているヤツは、予想はしていたがゼリファーの事かもしれないな。暑苦しいヤツだし。そうだとしたら、お前も俺も運が悪いな。
謎の仲間意識が芽生える。
「・・・っ、いい加減どいて。」
「久しぶりに会った事だし、放課後一緒に肉でも食いに行くか!!」
「・・・。優勝したら考える。」
「ちゃんと食わないと大きくなれないぞー?」
あー、でも。なんやかんやで仲良しなんだよな、あの二人。なんだか微笑ましくなる。
そんな俺をよそにヒロインはこの光景を見て、「ふへへ、今日新たにオアシスが誕生した・・・。」なんて理解不能な事を言っていた。
呪いにかかって幻覚でも見えているのだろうか。解呪魔法をバレないようにそっと掛けたが、効果がなかったのでどうやら正気だったみたいだ。
よし、今後アイツには近付かないでおこう。制服も盗まれたままだしな。
俺は急いで運動着に着替え、別館にある試合場へと向かった。
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