ライバル視していた隣国の魔術師に、いつの間にか番認定されていた

飯田 いち太郎

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17話 制服交換

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魔法の開発に勤しみ、本の解読を進めていた休みの日の翌日。今日は天気がいいので中庭で昼食を摂ろうとしていた。

太陽に照らせれ、生き生きとした芝生に足を踏み入れ、中庭にある椅子に腰掛ける。小さな机にお弁当箱を置いて気を抜いていたら、上の方から何やら騒がしい声が聞こえた。

まあ、俺には関係のないことだろうとお弁当の蓋を開けようとする。





───直後、何かが頭上に落ちてくる。痛みはない。

おいおい、嘘だろ。

気がついた時には既に、制服がびしょ濡れになってしまっていた。上から落ちてきた物の正体は、液体の様だった。これってもしかしていじめか?

替えの制服はあいにくクリーニングに出してしまっているので持ち合わせていない。午後の授業はどうすればいいんだよ、と項垂うなだれる。

髪や顔にかからなかっただけマシだと思うべきなのだろうか。こういった不運は最近全く起こらなかったので油断していた。

「ごめんなさいいいぃぃ!あああっ、私のリンゴジュースが・・・。ノアディア様に殺される・・・。」

そう言って急いでやって来たのは瓶底メガネ少女、もといリリーアだった。

何でここでノアディアの話になるんだよ。怒るとしたら俺自身だろ。まあ、全然怒ってはいないんだが。というか困っているんだが。

犯人はヒロインリリーアだったので、いじめとかではない様だ。コイツの事だしどうせ転んだりして飲もうとしていたジュースの中身をぶちまけたとかだろう。

にしても上の階の窓からジュースを降らせるだなんてどんな状況だったんだよ。逆に凄いな。

「今、替えの制服持ってないんだけど。」

淡々とそう伝えることにした。

「ええっ!?」

「全部クリーニングに出しちゃってるんだけど。」

自分で洗濯するよりも、この世界でもだが、クリーニングの方が綺麗に仕上がるので重宝している。

制服が手元にないので、制服に似た私服を選んで授業を受けるしか手はないのだろうか。参ったな。

「あっ!それなら丁度いいのがあるからここで待ってて!」

いい事思いついた!と言わんばかりの上機嫌な表情をしてどこかへ駆けて行った。
今度は何する気なんだと呆れていたら、5分も経たずに中庭に何かを持って戻ってきた。
よく見ると瓶底メガネ少女が持ってきやがったのは、女物の制服だった。

「私、入学する時に大きめのサイズの制服を間違えて買っちゃって。処分に困っていたのでどうぞ!これなら私の命も救われる!」

大袈裟にホッとした表情をし、新品の制服を渡そうとしてくる。

貴族の子女達は膝より下のスカートを履いているが、リリーアの様な町娘は短めのスカートを好んで履いている。前者ならまだマシだったのだが・・・。

「こ、これを着ろと・・・?」

「うんうん!服が濡れたまま授業を受けるのよりもその方がマシだよね?私服で授業を受けたら校則違反だし、問題児になっちゃうからさ、ね?ね?ね!」

必死そうに押し付けてくる。確かに校則的には制服での授業参加が義務付けられている。私服で参加したら内申点に響くだろう。

一応俺の目標である王国魔術師になるには内申点は高い方が有利だからな。

うっ・・・。
仕方ない、着るか・・・。





いや、なんであの女に言いくるめられたんだよ俺!?
しかも瓶底メガネ少女リリーア、俺が部屋で着替え終わった瞬間「この制服は私が責任を持ってクリーニングに出して後で返すね!」とか言ってどっか行きやがった。

冷静になって考えると、女物の制服スカートを履いて授業を受けるのも問題行動だよな!?制服を着ているから内申点的にはセーフでも、見た目的にアウトだ!

あと普通に魔法で制服を綺麗にして乾かせば良かったのでは!?
前世では魔法が無かったし、すぐに乾かせないのが普通の事だったのでつい失念してしまっていた。





「ライ?何かあったのです・・・か。」

寮の廊下にある柱の陰に隠れ、どうしようかとあたふたしていると、ノアディアが近付いてきて驚愕する。

目を見開いて口をぽかんと開けている。

完全に見られた!!

より一層柱に体を隠し、これ以上見られないようにと悪あがきをする。
恥ずかしさからスカートを引っ張って少しでも太ももを隠そうとするが、無意味に終わった。

「違う!これは事故で・・・。」

パシャ。

何だ今の音・・・。俺の方に回り込んできたノアディアの手元には、正方形の白い金属で出来た物体が握られていた。

「な、なんだよそれ。やめろよ。」

「気にしないで下さい。最近新しく開発した魔道具です。」

そう言ってまたパシャ。と魔道具を使用する。だからやめろって。

「そ、それよりも!俺、こんな格好じゃ授業をまともに受けられそうにないんだ。だから、もし可能であれば制服を貸してくれないか??」

そう尋ねると、「ええ、勿論ですよ。」と言ってまた魔道具を使おうとしてきたので音が鳴る前に魔道具をひったくり放り投げた。

繊細な魔道具だったらしく、壊れてしまったが俺は悪くない。・・・後で謝るか。

ノアディアは壊れた魔道具を見て残念そうにしていたが、すぐに気を取り直して俺の部屋まで替えの制服を持ってきてくれた。






不本意にもノアディアの制服を着ることになったが、ズボンもシャツもブレザーも全てサイズが合わず、ブカブカだった。
特にズボンのサイズが大きかった・・・とても悔しい。

「すっごいブカブカなんだけど。」

「ぐっ・・・。似合ってますよ。」

パシャ。

また魔道具を使ったみたいだ。
おい、それスペアがあったのかよ。やめろよ。

「まぁ、その。ありがと。」

「どういたしまして。これくらいならいくらでも頼って下さい。」

パシャ。

やめてくれと言いたかったが、物を借りている手前決まりが悪い。
先程魔道具を壊してしまったことを謝罪してから急いで昼食を食べ、午後の授業の準備をした。

はあ。また借りができてしまったな。
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