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◼️番外編 はぐれやさぐれ藤十郎
はぐれやさぐれ京の空
しおりを挟む天正十三年(一五八五)の年が明けて、藤十郎の姿は京の市中にあった。しかし、彼の姿を一目で見分けるのは困難だったと思われる。
南禅寺の辺りからふらふらと出てくる男である。
派手な小袖を何枚も重ねて着ているのは冬なので仕方がない。その上に毛皮の丈の長い、今で言うチョッキのようなものを羽織っているのも百歩譲って寒さのせいだということにできるだろうか。
頭髪はザンバラのときと結っているときがある。ザンバラのときには白い鉢巻きを巻き、結うときは月代(さかやき)を剃らないで茶筅髷にしたのを赤や黄色の紐でぐるぐるに巻き付けている。髪はすぐに伸びたらしい。腰には朱鞘の大太刀を差してそれを縄でぐるぐるに巻き付けている。それに加えて、この人はいくらか化粧もしていた。
このような風体については話の初めに織田信長のものとして書いたが、藤十郎がしているのはその異装をさらに発展させたものだった。清洲で探索をかけられたとは思えない目立ちようである。京まで探索がかからないと思ったのか。誂えるのに金を何枚も使ったことだろう。ただ、この頃の京の町にはよそから来る人が多く、そこそこに無頼者もいた。お茶屋(芸妓を呼んで食事、遊興する場)も多かったので、用心棒の需要があったはずだ。
かと言って、藤十郎は用心棒の仕事はしなかった。誰に紹介されたのか藤十郎はお茶屋を訪れ芸妓にのぼせて口説きをかける。しかし、異装の青二才は袖にされ芸妓は去っていってしまう。それを繰り返していると、周辺の往来でそれを見ていた無頼者が声をかける。
「おぬしは野暮ったいんや。それで口説きが首尾よういくには百年かかるやろな」
「金があればええっちゅうことではないんきゃ」
それを聞き無頼者はかかかと笑う。
「それではええカモにされるだけや。まあ、拙者が指南してやろう」
そのようないきさつで、藤十郎には兵法ではない指南役が付く。どのようなことでも、いったん気心を通じれば親しくなるのに時間はかからない。たちまち藤十郎はその周辺の無頼者と友情の契りを結ぶことになる。芸妓との契りとは違うが、それは藤十郎にとって楽しいものだった。
そこでは仁義を切らなければならないが、後は同格の自由なつながりである。藤十郎にとって居心地のよいことこの上ない。あれやこれやと小言を言われ、ギスギスした空気の流れる家に厭気がさしていたのだから、さぞかし大きく深呼吸できたことだろう。そして、藤十郎の刀捌きには新たな仲間も感嘆した。
「ねえ、姉さん、あの人ようここらで見るけれど、こそこそ茶屋の周りを歩いてはる」
少女が連れの女性に無邪気に告げる。装束から見ると白拍子(舞踊りをして旅をする)のようだ。祇園社(現在の八坂神社)に参詣してきたのだろう。
「だめ、あまりじろじろ見てはあきまへん。絡まれたら面倒やよって」と連れの女性が小さな声でたしなめる。それでも少女は面白そうに藤十郎を見ている。
「せやかて、あんな大仰ななりをして。まるで見せ物やわあ」
その声は藤十郎の耳に届いたらしい。少女は慌てて手で口を押さえる。
少し離れたところで大仰ななりをして立っている藤十郎は少女に向かって「べろべろばあ」という顔をする。少女はそれを見て、「ぷっ」と吹き出す。
すると藤十郎はニカッと口を思い切り左右に引いて、満面の笑みを浮かべた。
「あら、おくにちゃん、口説かれてはる」と連れの女性も笑った。
京の町での藤十郎は表向きやさぐれているのだが、心はずいぶんと自由になったようだ。無頼者の仲間と心おきなく交流し、遊ぶときは全力で遊ぶ。
仲間の指南もあって女性を口説くのも上手くなった。異装を解けば、鍛練を重ね戦で大鑓を易々と振るうことできる藤十郎は逞しい男である。腕にまだ生々しく鑓傷が残るのも武勇の証である。女性からあふれるような情を尽くされることも増える。彼はそれを心ゆくまで堪能した。
それでも、藤十郎はこれからの自分の進む道を考える。このままでいいのか。水野家に戻るのは無理にしても、せめて送り出してくれた家康のためにいっぱしの武士になるために努力をするべきではないか。
井伊直政がかつて自分に告げた言葉を思い出す。
「これはわしに与えられた道だで。それを進むしかない。貴殿もそうだ。己の道を早よ見つけなさるがよい」
その言葉を思い出して、藤十郎は頭をかきむしった。
変化はあちらからやって来る。
しばらくすると、無頼者の集団同士でささいなことから争いが起こる。清水の辺りだといわれている。理由は些細なことだったのだろう。ひとり二人で始まった喧嘩が乱闘になっていく。ここには藤十郎が誼を通じた集団が関わっていた。助力しなければと駆けつけた藤十郎は、そこで自分に初めて声をかけてくれた男が倒れているのを見つける。すでに双方とも殺気だった空気の中にいて、飛び道具を手にしているのも見える。
藤十郎は前に出て叫ぶ。
「おう、わしの仲間に何をしてくれるんでや!」
相手はその叫びを悠長に聞く余裕はない。藤十郎に襲いかかってきた。
「うおおおおおおおりゃああっ」
藤十郎は本能的に抜刀し、振りかかってくる敵の刀を受け、力任せに払い落とした。カキンと鈍い音がして敵の刀が地面を打つ。
その後は覚えていない。
気が付くと、藤十郎の周りには倒れた者が累々と横たわっていた。この大乱闘では三十人に上る死傷者が出たといわれる。
それを物陰から見ていた人がいる。
いつか藤十郎がニカッと笑いかけた白拍子の少女だった。通りがかりにこの乱闘に出くわし、他の町人とともに陰から見ていたのだ。少女は藤十郎の戦う姿に、刀捌きの見事さに、そしてその圧倒的な強さに目を見張った。お茶屋の周囲をこそこそと歩いていたのとはまるで別人だ。
見事な大立ち回りの手本である。
おくにという少女は長くその姿を忘れなかった。そこからまったく新しい芸能を生み出すことになるだろう。
ただし、これは芝居ではない。
この頃従来京の警固に付いていた侍所はその長い役目を終えることになっていた。それに代わるように羽柴秀吉直属の将兵が続々と入京していた。小牧・長久手の戦いを終えた秀吉は次の大きな一歩を踏むために大阪と京に進出していたのだ。
もちろん藤十郎はすぐに捕まった。同じ集団の徒は藤十郎が助け船を出しただけだと説明するが、それにしても死傷者が多すぎる。
一同が連れていかれた。
牢に閉じ込められていた藤十郎はしばらくすると外に出される。刀やら装束は没収されたので再び大立ち回りはできない。いや、する気も失せていた。話を聞かれた際に本名を言ったのが失敗だった。この人は嘘をつくことができないのだ。ここで自身が水野家を奉公構になっていると知られたらどうなるのだろうかとしばらく考えたが、皆目わからなかった。
金だけは某所に隠してあるので、どこかで逃げ出してもっと遠くに行かなければならないだろうとぼんやり考えていた。
藤十郎は牢で来ていた湯帷子を脱がされて地味な小袖を与えられた。また、髪は下の方で地味に結わえるように言われる。罪人として処罰されるならば白装束だろうと藤十郎は思う。戦場でたくさん人を殺めれば称賛されるが、市中で同じことをしたら罪人だ。
彼は手に縄をかけられて立派な屋敷に連れていかれる。他の仲間はどうなっただろうと気になるが、聞ける雰囲気ではない。自分もまだどうなるか分からないのだ。
促されるまま、神妙な面持ちで屋敷の庭に座るとしばらくしてドタドタと足音が聞こえる。
「おう、おぬしが水野惣兵衛のせがれか。こたびはまたよう派手にやってくれたものだでよう。まあ、顔を見せてくれまい」
藤十郎はふっと顔を上げる。
そこには背の低い、五十は越えているぐらいの派手な羽織に覆われた男がいた。周りの雰囲気から並々ならぬ身分の人であろうと想像はついた。ただ公家や帝ではないようだ。公家は見たことがあるし、帝はこのような派手な羽織を身につけない。武士なのだろうが、惣兵衛も家康にしてもこのような出で立ちをしているのを見たことがない。思案顔の藤十郎に段上の主は名を名乗る。
「おお、貴殿はわしと面を合わせたことがなかったか。わしはこたび内大臣に任ぜられた平秀吉(たいらのひでよし)と申す」
藤十郎は天地がひっくり返るほど仰天した。先頃まで敵として戦っていた相手だ。それが目の前でにこやかに座っていることがまず信じられない。この場で自分を誅するつもりだろうかと藤十郎は思う。それは厭だが順当な理由だ。しかも乱闘騒ぎで死傷者を出した張本人なのだ。
殺されても何の不思議もない。
しかし、藤十郎は意外な言葉を耳にする。
「おう、おぬし。わしの陣に加わらんか」
この時秀吉はさまざまな方面に打って出ていた。京都にいるのはその一つ、朝廷での地位を確かにするためである。すでに正二位内大臣の官位を得た。主君である織田信長が受けた官位と同じである(信長はそれ以上の官位を固辞した)。ただ、秀吉は主君より上の官位、天下人にふさわしい官位を求めている。
また、天正十三年のこの月は紀州攻めのため大隊を派遣する。その次は四国の長曽我部氏を討伐するため編成を思案中だった。その次は越中、飛騨ときて九州と続いて行く。それなので将兵はいくらあっても足りない。
ただ乱闘の仕儀を一言も問い詰めず、藤十郎を自勢に招くのはそれなりの理由があるようだ。
小牧・長久手の戦いがどのように決着したのかすら分かっていない藤十郎には何しろチンプンカンプンである。しかし、ここで断ってただでは済まないということだけは分かる。差し出された盃は毒であろうと酒であろうと飲ま干さなければならない。藤十郎はがばっと平伏した。
「ありがたき幸せにございます。なにとぞよろしゅうお願い申します」
この後、藤十郎は秀吉勢の一員として紀州から四国へと転戦する。四国では攻略に苦心していた仙石秀久の援軍として出兵。讃岐国喜岡城(香川県高松市)、阿波国木津城(徳島県鳴門市)攻めを成功させるなどした。戦後の論功行賞で仙石秀久は讃岐国を与えられたが、藤十郎にも摂津に知行七百石が与えられた。
藤十郎は驚くと同時に、心底安堵した。自分の領地を初めて与えられたのである。
これでようやく、父から独立できる……。
しかし、世間はそう甘くなかった。
秀吉自身もは奉公構という措置のことをそれほど重く考えていなかったし、藤十郎もそれが帳消しになるのではないかと期待していた。秀吉は朝廷から従一位・関白の官位と、豊臣という新たな名字を与えられている。名実とも武士の頭領になったのである。それを持ってすれば奉公構の措置は解いてもらえるだろう。
しかし、その事実自体は何も変わっていなかった。
天正十三年の晩秋の頃、藤十郎は関白秀吉に呼ばれて出向いていった。秀吉は困ったような顔をして言う。
「おぬしの父惣兵衛にこたび所領を与える話をしとったでよう」
藤十郎は一瞬ビクッとするが、話の続きを待つ。
「おぬしは奉公構にしとるで、倅を置くならわしに臣従しかねると言う。何とも融通の利かぬ親父よのう」
藤十郎は目を伏せた。
父親はいまだに全く赦す気がない。その事実が平手打ちの一発のように藤十郎の心を打っていた。やはり無理なのだ。秀吉の配下になって以降、水野家とも家康とも関わってこなかった。他に選択肢がなかったとはいえ、秀吉に仕えていたのはまずかったのだろうか。
「関白さま、さようなことでしたら私が知行をお返しし、こちらを出ていきまする」
藤十郎に言えたのはそれだけだった。
秀吉は藤十郎の殊勝な言葉を聞いて言う。
「いや、おぬしはもっと勇猛な将になれるでや。要は奉公構が、父親がいなければ……おぬし、父を討ったらいかがか。さすれば摂津の知行も父の領地もおぬしのものだでや。家臣が気にくわぬならおぬしがされたように放免すればよい。話を聞いとるとおぬしが不憫で不憫で、おぬしの父よりおぬしを立ててやりたいと思うてな」
秀吉の声はことのほか優しかった。藤十郎がきちんと働いても、奉公構があるために正式に使ってもらえない。それは事実である。それを命じている惣兵衛がいなくなれば、藤十郎は秀吉の命で堂々と水野に戻ることができる……。一瞬だが、優しい秀吉の言葉にほだされそうになる。
ただ、藤十郎は見逃さなかった。
秀吉の目を。
冷笑しているような。
謀っているような。
押し込めている傲慢が浮かび上がったような。
そのような目を藤十郎は以前にも見たことがあった。その目ひとつで、秀吉の考えがすべて見えたように思った。
しかし、今度は激昂して刀を抜くことはない。
「身に余るお言葉、光栄にございます。恐れながら今しばらく考える時間をいただけましたら」とだけ藤十郎は伝えて座を下がった。
秀吉は父を亡きものにしたいのだ。
おそらく、家康にずっと忠実に付く水野を引き離したいのだ。
そして、水野の所領を取り上げたいのだ。
父を殺す役をわしにさせたいのだ。
それならば、何とでも理由を付けてわしを討つこともできる。
もしかして、そのためにわしを……。
藤十郎は恐ろしくなった。
それが本当ならば、力を握った者の何と恐ろしいことか。何たる因業の深さか……。ふと、藤十郎は燃え盛る高天神城の紅蓮の焔を思い出す。
その夜、藤十郎は家康から預かった金子を隠してある京の某所に赴き、それがまだ無事にあることにほっとする。
そしてそのまま姿を消した。
天下人の元からも逃げ出した藤十郎の道は険しい。いや、道などどこにもない。
ここからが真の意味で藤十郎の彷徨となるのだ。
(『はぐれやさぐれ藤十郎』完)
付記
藤十郎のこの後については、
『肥後の春を待ち望む』に肥後での日々を。
この小説の番外編『中津城の惨劇』に中津での様子を。
この小説の本編で備中に居候する以降の話を書いています。よろしければ、ご一読ください。
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