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5ソルの乗合馬車
車体も道も改善できるだろう
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ブレーズの発案はすぐに実行に移されたが、それは長い道のりの最初の一歩に過ぎなかった。
まず、手続き上のさまざまな事柄を検討しなければならなかった。それがいちばん面倒なことかもしれない。パリの公共の場を使う事業になるのだから国王の勅許を取らなければならない。その申請の際、貴族身分の者が代表として事業を担う形にする必要がある。もちろん、ロアネーズ公爵アルテュスが筆頭ということになる。ブレーズは準騎士(エキュイエ)だが平民とさほど変わらない。代表という立場にすることはできなかった。発案もロアネーズ公爵との共同ということにしなければならない。ブレーズはその点について強いこだわりはない。逆にあまり表に出るべきではないという考えだった。
アルテュスはまず、以前別の事業をともに興し、ブレーズのことを知っているクレナン侯爵に話を持ちかけた。もちろん、収益の話を前面に出して説明した。確かな収入を得られるというのはたいへん魅力的な話なのである。クレナン侯爵は事業計画も聞いたうえで快諾した。それから、もう一人、乗合馬車事業を潤滑に進めるのに必要な役割を担っている貴族にも依頼することとした。白羽の矢を立てたのが宮廷警備裁判所長官であるスルシュ侯爵である。アルテュスは彼に年間六千リーブルの収益金を優先的に支払うことを約束し、共同経営者として参画する旨の承諾を取った。また、貴族ではないが富裕なポンポンヌ氏からも同様の承諾を得た。これらの共同経営者が出資をして開業に必要な資金とする。ここからアルテュスが筆頭に出る。彼は公爵、一番身分の高い貴族である。他の貴族に親しく話ができること、何より国王に直接面会することができるというのメリットははかり知れないほど大きかった。
下記にその際共同出資・経営者どうしで交わした書面を一部挙げてみよう。
<設権証書の一部、抜粋>
一六六一年十一月六日
下記署名のロアネーズ公爵およびクレナン侯爵両名は以下のことを確認する。両三年以来、前記ロアネーズ公爵殿およびパスカル殿の着想により、駅馬車にならい、パリ市中心および周辺街区に、各人まことに低廉な座席料を支払うのみの、地区から地区へ絶えず運行しているような高級四輪馬車事業を設立することが創案されたこと、この創案をより有用なものとするために、彼らは多様な手段を考察し、この目的のために、ともに数多の方式を検討し、最後に最も完璧と判断されるものに到達したこと、前記ロアネーズ公爵殿は、この構想を宮廷警備裁判所長官スルシュ侯爵殿および前記クレナン侯爵殿に示し、御両所の参画を勧請、承諾を得たので、われわれ前記両名は、われわれと前記パスカル氏とのあいだに、以下のことを同意し協約したことを確認し協約したことを確認し、宣言する。
(以下本文略)
アルチュス・グフィエ・ロアネーズ公爵
ピエール・ド・ペリアン
パスカル
このような証書を書き起こすのに、ブレーズはペリエ夫人の息子エティエンヌを引き入れた。ちょうどこの頃、エティエンヌはブレーズの家に寄宿していた。いわば行きがかり上ではあるが、証書作りは叔父と甥の共同作業ですることになった。下書きは公証人が確認し、清書される。この種の書類をえんえんと作成し続けるのである。これはなかなか骨の折れる作業だった。
アルテュスが打ち合わせを兼ねて、ブレーズの居宅を訪ねるとふたりが静かに紙に向かっている。
「あまり根を詰めないでくれよ。エティエンヌ、眠くならないかい?」
「いいえ、もうすぐ今日は終わりますから」とブレーズの甥っ子は答える。
「この手の書類は僕もしょっちゅうしたためるけれど、もうサインをするだけで欠伸が出てしまうんだ」とアルテュスが笑う。
「まぁね、エティエンヌも退屈かもしれないな。ただ、こういうことに慣れておけば将来公証人役場に勤めるときに苦労がないだろう」とブレーズが笑いながら言う。エティエンヌはその横でさらさらと一通証書を仕上げる。
「終わりましたよ、叔父さん。今日はこれでお開きですね」とエティエンヌがペン先を拭いている。
「エティエンヌ、おつかれさま」とアルテュスが微笑む。エティエンヌは会釈を返すと、叔父の顔をまじまじと見て尋ねる。
「ところで叔父さん、なぜ今までにない乗合馬車を作ることにしたの?」
ブレーズは面白そうな顔をして、甥と公爵の前で役者のように喋りだす。
「乗合馬車に使う予定のカロッス(八人乗りの馬車)の車輪は前輪が小さくて、後輪が大きいだろう?」
「はい」と甥は答える。
「あれはどうしてか分かるかい? 大きな車輪の円周は小さい車輪のそれより長い。それならば同じ距離を進むのに車輪が大きいほうが回転は少なくて済む。一回転あたりの進む距離は長くなる。それは分かるだろう」
アルテュスもブレーズの話に聞き入る。
「それならば、どうして前の車輪は小さいのだろうか」
エティエンヌはすぐに、「それは、方向を変えやすくするためですよ」と答える。ブレーズはうなずく。
「そう、だから大きいのと小さいのを併用するんだ。でも馬車によっては前も後ろも同じ大きさの車輪を使っている。比較的真っ直ぐな長い道を進むか、曲がり角の多い街を走るかという目的によって使い分けるということだよ。ただ、今ある形が最善かというと、僕には少し疑問が残る。
これから僕たちが始める乗合馬車事業はいい実験になると思うんだ。僕たちが使うカロッスは乗合馬車に使うにはやや小ぶりだが、人がごった返している街中を走るのだからいたしかたない。それは現実的な話だ。ただ、実際に使っていく中で改良していくことができるだろう。車輪の大きさも太さもそうだし、車軸や車体もそうだ。あるいは車体の揺れを軽減する装置を着けたりすることも。馬の改良は難しいけれど。
これだけ大掛かりな事業をした例は他にないから、その道具である馬車にもいろいろな不具合が出るだろう。そして改良ができると思う。そしてその実験の結果、改良したものを誰もが享受することができる。素敵だと思わないかい? それは馬車だけの話ではないよ。曲がり角で馬車どうしがぶつからないようにするとか、走る道の改良もできる」
エティエンヌは、「ああ、それはいろいろなことができますね! 考えると楽しいな」と目を輝かせて言う。アルテュスもなるほど、という顔をする。
他のものでもそうだが、たくさん使い込むことが前提ならば、それにできるだけ長く耐えうる方がよい。さらに品質であるとか、使用者がより快適に使えるならばなおいい。
個人所有の馬車で一日中、一年中ずっと走り続けるものは少ないが、乗合馬車ならばかなり使い込むことになる。馬車というものの性能を向上させるのにも乗合馬車はいい実験になるだろう。
ブレーズはそのようなことを言っていた。
アルテュスは親友がずっと前に、自動計算機を自作していたことを思い出した。試作機を作ったのちに何台か製造して、そのうちの一台をスウェーデン女王に献上したのだった。
そんな彼からすれば、馬車の改良というのは心躍るテーマだったのかもしれない。パリの街で継続的に展開するのだから、本当に壮大な実験だ。
アルテュスはまた考える。そうすることで、新たな視点が記憶の中からほんの少しずつ見いだせるようだ。ブレーズ自身が語った言葉を、まだ何か思い出せるだろうか。
これまで来た道をたどるように。
そうやって思い返すことで、親友の姿が、声が、形跡が鮮やかに蘇りもするのだ。
アルテュスにとっては、懐かしさと悲しさ、そして発見が混じるような作業だった。
まず、手続き上のさまざまな事柄を検討しなければならなかった。それがいちばん面倒なことかもしれない。パリの公共の場を使う事業になるのだから国王の勅許を取らなければならない。その申請の際、貴族身分の者が代表として事業を担う形にする必要がある。もちろん、ロアネーズ公爵アルテュスが筆頭ということになる。ブレーズは準騎士(エキュイエ)だが平民とさほど変わらない。代表という立場にすることはできなかった。発案もロアネーズ公爵との共同ということにしなければならない。ブレーズはその点について強いこだわりはない。逆にあまり表に出るべきではないという考えだった。
アルテュスはまず、以前別の事業をともに興し、ブレーズのことを知っているクレナン侯爵に話を持ちかけた。もちろん、収益の話を前面に出して説明した。確かな収入を得られるというのはたいへん魅力的な話なのである。クレナン侯爵は事業計画も聞いたうえで快諾した。それから、もう一人、乗合馬車事業を潤滑に進めるのに必要な役割を担っている貴族にも依頼することとした。白羽の矢を立てたのが宮廷警備裁判所長官であるスルシュ侯爵である。アルテュスは彼に年間六千リーブルの収益金を優先的に支払うことを約束し、共同経営者として参画する旨の承諾を取った。また、貴族ではないが富裕なポンポンヌ氏からも同様の承諾を得た。これらの共同経営者が出資をして開業に必要な資金とする。ここからアルテュスが筆頭に出る。彼は公爵、一番身分の高い貴族である。他の貴族に親しく話ができること、何より国王に直接面会することができるというのメリットははかり知れないほど大きかった。
下記にその際共同出資・経営者どうしで交わした書面を一部挙げてみよう。
<設権証書の一部、抜粋>
一六六一年十一月六日
下記署名のロアネーズ公爵およびクレナン侯爵両名は以下のことを確認する。両三年以来、前記ロアネーズ公爵殿およびパスカル殿の着想により、駅馬車にならい、パリ市中心および周辺街区に、各人まことに低廉な座席料を支払うのみの、地区から地区へ絶えず運行しているような高級四輪馬車事業を設立することが創案されたこと、この創案をより有用なものとするために、彼らは多様な手段を考察し、この目的のために、ともに数多の方式を検討し、最後に最も完璧と判断されるものに到達したこと、前記ロアネーズ公爵殿は、この構想を宮廷警備裁判所長官スルシュ侯爵殿および前記クレナン侯爵殿に示し、御両所の参画を勧請、承諾を得たので、われわれ前記両名は、われわれと前記パスカル氏とのあいだに、以下のことを同意し協約したことを確認し協約したことを確認し、宣言する。
(以下本文略)
アルチュス・グフィエ・ロアネーズ公爵
ピエール・ド・ペリアン
パスカル
このような証書を書き起こすのに、ブレーズはペリエ夫人の息子エティエンヌを引き入れた。ちょうどこの頃、エティエンヌはブレーズの家に寄宿していた。いわば行きがかり上ではあるが、証書作りは叔父と甥の共同作業ですることになった。下書きは公証人が確認し、清書される。この種の書類をえんえんと作成し続けるのである。これはなかなか骨の折れる作業だった。
アルテュスが打ち合わせを兼ねて、ブレーズの居宅を訪ねるとふたりが静かに紙に向かっている。
「あまり根を詰めないでくれよ。エティエンヌ、眠くならないかい?」
「いいえ、もうすぐ今日は終わりますから」とブレーズの甥っ子は答える。
「この手の書類は僕もしょっちゅうしたためるけれど、もうサインをするだけで欠伸が出てしまうんだ」とアルテュスが笑う。
「まぁね、エティエンヌも退屈かもしれないな。ただ、こういうことに慣れておけば将来公証人役場に勤めるときに苦労がないだろう」とブレーズが笑いながら言う。エティエンヌはその横でさらさらと一通証書を仕上げる。
「終わりましたよ、叔父さん。今日はこれでお開きですね」とエティエンヌがペン先を拭いている。
「エティエンヌ、おつかれさま」とアルテュスが微笑む。エティエンヌは会釈を返すと、叔父の顔をまじまじと見て尋ねる。
「ところで叔父さん、なぜ今までにない乗合馬車を作ることにしたの?」
ブレーズは面白そうな顔をして、甥と公爵の前で役者のように喋りだす。
「乗合馬車に使う予定のカロッス(八人乗りの馬車)の車輪は前輪が小さくて、後輪が大きいだろう?」
「はい」と甥は答える。
「あれはどうしてか分かるかい? 大きな車輪の円周は小さい車輪のそれより長い。それならば同じ距離を進むのに車輪が大きいほうが回転は少なくて済む。一回転あたりの進む距離は長くなる。それは分かるだろう」
アルテュスもブレーズの話に聞き入る。
「それならば、どうして前の車輪は小さいのだろうか」
エティエンヌはすぐに、「それは、方向を変えやすくするためですよ」と答える。ブレーズはうなずく。
「そう、だから大きいのと小さいのを併用するんだ。でも馬車によっては前も後ろも同じ大きさの車輪を使っている。比較的真っ直ぐな長い道を進むか、曲がり角の多い街を走るかという目的によって使い分けるということだよ。ただ、今ある形が最善かというと、僕には少し疑問が残る。
これから僕たちが始める乗合馬車事業はいい実験になると思うんだ。僕たちが使うカロッスは乗合馬車に使うにはやや小ぶりだが、人がごった返している街中を走るのだからいたしかたない。それは現実的な話だ。ただ、実際に使っていく中で改良していくことができるだろう。車輪の大きさも太さもそうだし、車軸や車体もそうだ。あるいは車体の揺れを軽減する装置を着けたりすることも。馬の改良は難しいけれど。
これだけ大掛かりな事業をした例は他にないから、その道具である馬車にもいろいろな不具合が出るだろう。そして改良ができると思う。そしてその実験の結果、改良したものを誰もが享受することができる。素敵だと思わないかい? それは馬車だけの話ではないよ。曲がり角で馬車どうしがぶつからないようにするとか、走る道の改良もできる」
エティエンヌは、「ああ、それはいろいろなことができますね! 考えると楽しいな」と目を輝かせて言う。アルテュスもなるほど、という顔をする。
他のものでもそうだが、たくさん使い込むことが前提ならば、それにできるだけ長く耐えうる方がよい。さらに品質であるとか、使用者がより快適に使えるならばなおいい。
個人所有の馬車で一日中、一年中ずっと走り続けるものは少ないが、乗合馬車ならばかなり使い込むことになる。馬車というものの性能を向上させるのにも乗合馬車はいい実験になるだろう。
ブレーズはそのようなことを言っていた。
アルテュスは親友がずっと前に、自動計算機を自作していたことを思い出した。試作機を作ったのちに何台か製造して、そのうちの一台をスウェーデン女王に献上したのだった。
そんな彼からすれば、馬車の改良というのは心躍るテーマだったのかもしれない。パリの街で継続的に展開するのだから、本当に壮大な実験だ。
アルテュスはまた考える。そうすることで、新たな視点が記憶の中からほんの少しずつ見いだせるようだ。ブレーズ自身が語った言葉を、まだ何か思い出せるだろうか。
これまで来た道をたどるように。
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