風信子ノ詩集 Hyacinth Poems

尾方佐羽

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12をつぶやいてみる相手

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 この詩は代田(世田谷区)に住んでいるとき、朝いきなりブザーが鳴ったことに端を発します。
 このブザーは私の部屋の外壁に取り付けてあって、どうも、何かの報知器らしいのですが、なぜ鳴るのか分からない。火の気もない。雨だったので水気だけで……もしかすると水害用だったのでしょうか。しかも、取り付け位置が2m50cmほどの高さで、常態では届かない。結局、洗濯機の上に乗って無事に止められました。生まれて初めて乗りました。思ったより頑丈でした。
 代田は住宅街なので、閑静です。そこにあのブザー……。

 6月3日でした。

 1991年6月3日16時8分、かねてから噴火していた長崎県の雲仙普賢岳で大火砕流が発生しました。地元の消防団のかた12名、調査のため観測していた火山学者のかた3名、取材に入っていたマスコミのかた16名、随行していたタクシー運転手のかた4名、避難誘導のため待機していた警察官のかた2名、選挙掲示板のポスター作業をしていたかた2名、農作業をされていたかた4名の合わせて43名の方が火砕流に巻き込まれました(死亡・行方不明)。
 その中に、私が数年所属していたサークルのOBがいました。記者をしていたSさんです。Sさんは大学の頃、いくつものサークルにいてたいへん顔の広いかたでしたので、私は知り合いとしては末端でしょう。え、末端でもない? 泡沫? 表現はどうでもいいです。なぜかよくからかわれていた記憶があります。OBで、何より報道記者で超多忙なのにサークルの合宿にも来てくれました。

 代田のブザーはその災害から2年経ったときのことでした。「忘れんなよ」とアラートをいただいたようにも感じました。
 忘れませんよ、泡沫でも。

 1997年だったか、雲仙普賢岳に取材に行きました。噴火活動はずいぶん長く続き、地元は莫大な損害を被りました。そのようなことはあまり報道されていなかったように思います。復興の様子を取材しましたが、島原市の復興担当のかたも来て下さって、火砕流のときに「定点」と呼ばれた辺りにヘルメットを被って行きました。
 異景でした。定点はまだ草も生えていなかったように記憶しています。

 だだ広い空間に立って、大きく息をして、空気だけたくさん吸い込んできました。

※雲仙普賢岳のことについては、https://www.udmh.or.jp/eruption/で知っていただけると思います。

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