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自分を信じられない
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変な沈黙が流れた。
たーくんに触られて、おかしいくらい感じてしまったことが恥ずかしくなった俺は慌てて借りた服を着た。
たーくんも、めちゃくちゃ申し訳なさそうな顔をして服を着替えようとしていた。
「あ、そだ!買ったネクタイつけてみようぜ!」
沈黙に耐えかねた俺は、思いついたように言った。
「え、あぁ…そうだね。じゃあ適当にワイシャツ着るね。」
たーくんは、買ったネクタイを身に付けた。
「たーくん、こっち向いて。」
「うん…どうかな?」
照れたような顔をして、たーくんがこっちを向いた。
「おー!いい感じじゃん!すげぇ似合う!」
「本当…?」
「俺ウソ言わねーもん。あ、その格好でさ、ピアノ弾いてよ!」
「えぇ…」
「いいじゃん。コンクールのリハだと思ってさ。」
俺は、昼間に行った楽器屋の時と同じように、たーくんを半ば強引にピアノの前に向かわせた。
なんか今、無性にたーくんのピアノが聴きたかったんだ。
ネクタイ姿のたーくんが、「コンクールの曲では無いけど」と前置きをして、ゆっくりとピアノを弾いた。
優しくて清らかな音色。
そよ風のように俺を撫でてくれる。
演奏を終えたたーくんに、俺は拍手を送った。
「…なんか、改まって聴かれると緊張するよ…。」
「なんでさ。さっきだって弾いてくれたじゃん。」
「さっきも緊張したよ。俺、本当は自信が無いんだ。」
「どうして?こんなにピアノ上手なのに!」
「俺は不器用なんだよ。レイちゃんみたいに器用に何でも出来たりしないし、自己肯定感すごく低いんだよ。」
「何言ってんのさ。ピアノだけじゃなく、勉強だって出来るじゃん。」
「勉強は親が教育熱心だったのもあって頑張ったけど、本当は好きじゃない。俺は、優等生なんかじゃないんだよ。唯一好きで特技と言えるピアノだって俺より上手い人なんていっぱいいる。」
たーくんは、一息ついて続けた。
「あのね、レイちゃん。今まで物事がひとつも上手くいかなかった人って、上手くいくということが信じられないんだよ。俺は自分を信じられないんだ。上手く弾かなきゃって思えば思う程、指が震えてしまう。コンクールだって、本当は怖いんだ。」
少しの沈黙の後、俺は少し考えてからこう言った。
「俺、こういう時うまいこと言えないんだけど、俺、たーくんのピアノ好きだよ。そりゃもう世界一好き。」
俺の言葉に、たーくんは驚いた様な顔をした。
その後、ゆっくり優しく微笑んだ。
「レイちゃん、ありがとう。コンクール、良かったら見に来てよ。」
「え、いいのか?」
「もちろん。レイちゃんが聴いてくれたら、頑張れる気がするんだ。レイちゃんがもし良ければだけど…。」
「行くに決まってんじゃん!」
俺は、反射的にたーくんの手を握って言った。
コンクールに誘ってくれた事が嬉しかった。
でも、たーくんの顔を見ると、みるみる赤面している事に気付いて慌てて手を離した。
たーくんに触られて、おかしいくらい感じてしまったことが恥ずかしくなった俺は慌てて借りた服を着た。
たーくんも、めちゃくちゃ申し訳なさそうな顔をして服を着替えようとしていた。
「あ、そだ!買ったネクタイつけてみようぜ!」
沈黙に耐えかねた俺は、思いついたように言った。
「え、あぁ…そうだね。じゃあ適当にワイシャツ着るね。」
たーくんは、買ったネクタイを身に付けた。
「たーくん、こっち向いて。」
「うん…どうかな?」
照れたような顔をして、たーくんがこっちを向いた。
「おー!いい感じじゃん!すげぇ似合う!」
「本当…?」
「俺ウソ言わねーもん。あ、その格好でさ、ピアノ弾いてよ!」
「えぇ…」
「いいじゃん。コンクールのリハだと思ってさ。」
俺は、昼間に行った楽器屋の時と同じように、たーくんを半ば強引にピアノの前に向かわせた。
なんか今、無性にたーくんのピアノが聴きたかったんだ。
ネクタイ姿のたーくんが、「コンクールの曲では無いけど」と前置きをして、ゆっくりとピアノを弾いた。
優しくて清らかな音色。
そよ風のように俺を撫でてくれる。
演奏を終えたたーくんに、俺は拍手を送った。
「…なんか、改まって聴かれると緊張するよ…。」
「なんでさ。さっきだって弾いてくれたじゃん。」
「さっきも緊張したよ。俺、本当は自信が無いんだ。」
「どうして?こんなにピアノ上手なのに!」
「俺は不器用なんだよ。レイちゃんみたいに器用に何でも出来たりしないし、自己肯定感すごく低いんだよ。」
「何言ってんのさ。ピアノだけじゃなく、勉強だって出来るじゃん。」
「勉強は親が教育熱心だったのもあって頑張ったけど、本当は好きじゃない。俺は、優等生なんかじゃないんだよ。唯一好きで特技と言えるピアノだって俺より上手い人なんていっぱいいる。」
たーくんは、一息ついて続けた。
「あのね、レイちゃん。今まで物事がひとつも上手くいかなかった人って、上手くいくということが信じられないんだよ。俺は自分を信じられないんだ。上手く弾かなきゃって思えば思う程、指が震えてしまう。コンクールだって、本当は怖いんだ。」
少しの沈黙の後、俺は少し考えてからこう言った。
「俺、こういう時うまいこと言えないんだけど、俺、たーくんのピアノ好きだよ。そりゃもう世界一好き。」
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「え、いいのか?」
「もちろん。レイちゃんが聴いてくれたら、頑張れる気がするんだ。レイちゃんがもし良ければだけど…。」
「行くに決まってんじゃん!」
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でも、たーくんの顔を見ると、みるみる赤面している事に気付いて慌てて手を離した。
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