レモネードのように。

はる

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永遠に自分のものにならない相手を好きになった気持ち。

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高校時代。

クラスメイトに恋をしていた。

背が小さくて、可愛くて、勉強ができる子。人懐こくて友達も沢山いた。

スポーツは苦手みたいで、ドッジボールの時にボールを思いっきり天井に投げていて、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。そんなところも可愛かった。

でも彼はノンケだった。つまり異性愛者だ。

彼の恋愛対象は女性で、男である俺を好きになることは無い。

実際、女の子と付き合っていたのも知っている。

俺は、密かに彼の事を想っていた。でも、彼が俺を好きになることは絶対にない。それになにより告白して彼を困らせたくなかった。

ただ、顔を見られればいい。

ただ、話が出来ればいい。

伝える事の出来ない想い。

破裂しそうに膨らんだ風船を抱えた、不安定な青春時代だったと思う。

体育の着替えの時は、ダメだと思いながら彼の裸体を盗み見ていた。可愛らしい見た目の彼は、たまにクラスメイトから体を触られたり擽られたりしていた。男子高校生特有のノリだ。数人にお尻を撫でられたり、お腹を揉まれたりして、「やめてよ~」と言って嫌がる彼の姿に、俺は堪らなく興奮させられた。

俺も触りたい、もっと色んな表情を見たい。エッチなことだって…。そんな想像を膨らませ、自慰に浸る日々。 そして、必ず決まって虚無感に襲われ、泣き出しそうになる。

異性に簡単に告白する同級生達がどんなに羨ましかったことか。

好きなものを好きって言えるってずるい。言っていいなら俺だっていくらでも言っている。

振られた?それが何だって言うんだ。

俺は振られる事すら出来ない。

みんなは、永遠に自分のものにならない相手を好きになった気持ち、考えたことあるのかな。どうして。どうして俺だけこんな想いをしないといけないんだ。

現実から逃げたかった。

でも、一人になりたくなかった。

誰でもいいから…側にいて欲しかった。

 

「…リク、リク。」

何度も名前を呼ばれ、ハッと目を覚ます。目の前に居たのは天使…ではなく、ルナだった。

「おはよ。よく寝れた?」

ルナは寝癖で少し跳ねた髪の毛を気にもせず、俺に笑いかけた。

そうだ、俺は今、異世界にいるんだった。と寝ぼけた頭で再認識した。

「うん、よく寝られたよ。おはよう。」

「いい夢、見てたの?」

「うーん、いい夢ではないかもな。昔の夢を見ていたよ。」

淡い夢だった。青い痛みだった。

俺は、夢にもたらされた高校時代の切ない気持ちをかき消すように、んーっと伸びをした。
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