レモネードのように。

はる

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声にならない。

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※リク視点

 
「おじいちゃんは、僕が家出したと知って、捜索願を出してくれたらしい。事情を知ったおじいちゃんが、僕と父親との縁を切ってくれて、僕をこの街に連れて来てくれたんだ。」

ルナは、握った両手を自分の胸に置いた。

「僕、最初の頃はずっと人を信じられなくて、おじいちゃんにも苦労をかけたと思う。でもおじいちゃんは、僕がちゃんと笑えるように『笑顔のリハビリ』をしてくれた。相手を信じられない時は、目を見て判断しろって教えてくれた。おじいちゃんのお店を手伝うようになって、毎日のように来てくれるお客さん達とも少しずつ話せるようになった。お店の名前、新しく付けていいよって言ってくれた時は嬉しかった。小さい頃から歌を唄うのが好きだった僕に、みんなの前で唄う機会をくれたのも嬉しかった。」

そこまで話し切ると、うつむき加減だったルナはようやく俺の方を見た。

「過去のことをこうやって話せるようになったの、本当に最近なんだ。と言っても、おじいちゃん以外に話をしたのはリクが初めてだけど…ってリク!?」

俺の顔は涙でぐしゃぐしゃだったと思う。ルナの驚いた表情すらも滲んでしまう。俺はルナの手を引いて、力いっぱい抱きしめた。そうせずにはいられなかった。

「リクって、結構泣き虫だよね。最初に会った時もさ…」

「ルナの事が好きだよ。」

ルナの言葉を遮る俺の言葉。

「…え」

俺の胸の中にすっぽり収まっていたルナは俺の顔を見上げた。

「ルナの事が…好きだ!俺に…ひっく…ッ、守らせてほじい…!ルナの事を…!」

嗚咽混じりの言葉。涙だけでなく鼻水も垂れ流したブサイクな顔。

こんな告白、嬉しくないよね。

数日前にどっかの異世界からやってきた得体の知れない奴に好きなんて言われたって。

泣き顔で守らせてくれなんて言われたって。嬉しくないよね。困らせたかな。きっと、困らせたよな、ごめん。

でも、言わずにはいられなかったんだ。

もう同性同士だからとか、そんなの関係なかった。

愛おしくて仕方なかった。

ルナを想うと心がしんどい。

しんどくて、死んでしまいそうだった。

ルナを守りたい。

声にならないよ、ルナ。

「リク、もう泣かないで。」

ルナの小さな両手が俺の涙を拭ってくれた。

「僕も好きだよ、リク。」

「え…」

今度は俺が聞き返す番だった。

拭ってくれたお陰で滲まずに見えたルナの顔。

ルナも目に涙を溜めていた。

「リクのことが好き。」

リクは少し背伸びをして、俺の唇にチュッとキスをした。

月明かりの下。

さざ波が聞こえる浜辺。

俺とルナは見つめ合うと、とても長いキスをした。
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