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第三章
空を見上げて
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外回りから戻ってきた晃平がデスクに着くなり、同僚の将太が隣から声を掛ける。
「晃平、さっき彼女が来てたぞ」
「…?」
「忘れ物だって、これ」
夕方の会議で使う資料だ。
忘れてたことさえ気付いてなかった晃平は、胸を撫で下ろす。
「なぁ…」
言葉を詰まらせる将太に、晃平は首を傾げた。
「…お前、なんで瑞希ちゃんじゃねえの?」
瑞希と付き合っている頃、よく一緒にご飯を食べたりもしていた将太は、晃平の結婚する相手が瑞希ではないことを、いまだに納得出来ないでいる。
「あんなに瑞希ちゃんのこと大事にしてたじゃん」
「…将太」
「たった三年離れただけで、気持ちがなくなる程度の相手じゃねえだろ?」
「…」
黙り込んだ晃平を見て、将太は一つため息をつくと、
「悪い…」
そう言って席を立ち外回りへとオフィスを出ていった。
椅子の背に体重をかけて、晃平は天井を仰ぎ見る。
「当たり前だろ…」
その日の夜、外から部屋の電気が点いているのが分かった晃平は一瞬足を止めた。
そして想いを振り切るようにまた歩き出す。
「ただいま」
「おかえりなさい」
雪乃は晃平を出迎えると、すぐにフェアの話題を振った。
「あのね、今月ブライダルフェアがあるんだけど、二名参加で予約したの」
「ブライダルフェア?」
「うん、試食も込みのフェアだし、装花だったりペーパーアイテムも参考にしたくて」
「いつなの?」
「12月25日。クリスマスだよ」
その言葉に晃平の動きが止まる。
「…クリスマス…」
「うん、空けててね」
「…ああ」
「もう、すぐご飯にする?」
「…いや、先に風呂入るわ」
「じゃあ、ご飯準備しておくね」
「うん…」
バタン…
部屋のドアを閉めた晃平は、コートのポケットに手を入れて、ずっと〝そこ〟にある小箱と手袋を握りしめた。
「よりにもよって、クリスマス…か」
風呂から上がり、ベランダに出た晃平は一本煙草をふかす。
煙草の煙を追うようにして空を見上げると、一つため息をついて目を伏せた。
雪乃はキッチンからダイニングテーブルへ、夕食を運ぶ。
そんな些細な時間も雪乃にとっては幸せなのだ。
準備を終えベランダに目を移すと、晃平の姿が目に入る。
何度も見た光景だ。
空を見上げ、切なげな表情…
まるで誰かを想い、そうしているような姿。
胸がきゅっとなる。
カラ…
窓を開け、呼び掛けた。
「晃平…、ご飯食べよ」
「…ああ、今行く」
〝この幸せな日々は誰にも渡したくない…
例え、晃平が心の中で誰を想っていたとしても…〟
雪乃は自分にそう言い聞かせて、心のざわめきを抑える…。
「晃平、さっき彼女が来てたぞ」
「…?」
「忘れ物だって、これ」
夕方の会議で使う資料だ。
忘れてたことさえ気付いてなかった晃平は、胸を撫で下ろす。
「なぁ…」
言葉を詰まらせる将太に、晃平は首を傾げた。
「…お前、なんで瑞希ちゃんじゃねえの?」
瑞希と付き合っている頃、よく一緒にご飯を食べたりもしていた将太は、晃平の結婚する相手が瑞希ではないことを、いまだに納得出来ないでいる。
「あんなに瑞希ちゃんのこと大事にしてたじゃん」
「…将太」
「たった三年離れただけで、気持ちがなくなる程度の相手じゃねえだろ?」
「…」
黙り込んだ晃平を見て、将太は一つため息をつくと、
「悪い…」
そう言って席を立ち外回りへとオフィスを出ていった。
椅子の背に体重をかけて、晃平は天井を仰ぎ見る。
「当たり前だろ…」
その日の夜、外から部屋の電気が点いているのが分かった晃平は一瞬足を止めた。
そして想いを振り切るようにまた歩き出す。
「ただいま」
「おかえりなさい」
雪乃は晃平を出迎えると、すぐにフェアの話題を振った。
「あのね、今月ブライダルフェアがあるんだけど、二名参加で予約したの」
「ブライダルフェア?」
「うん、試食も込みのフェアだし、装花だったりペーパーアイテムも参考にしたくて」
「いつなの?」
「12月25日。クリスマスだよ」
その言葉に晃平の動きが止まる。
「…クリスマス…」
「うん、空けててね」
「…ああ」
「もう、すぐご飯にする?」
「…いや、先に風呂入るわ」
「じゃあ、ご飯準備しておくね」
「うん…」
バタン…
部屋のドアを閉めた晃平は、コートのポケットに手を入れて、ずっと〝そこ〟にある小箱と手袋を握りしめた。
「よりにもよって、クリスマス…か」
風呂から上がり、ベランダに出た晃平は一本煙草をふかす。
煙草の煙を追うようにして空を見上げると、一つため息をついて目を伏せた。
雪乃はキッチンからダイニングテーブルへ、夕食を運ぶ。
そんな些細な時間も雪乃にとっては幸せなのだ。
準備を終えベランダに目を移すと、晃平の姿が目に入る。
何度も見た光景だ。
空を見上げ、切なげな表情…
まるで誰かを想い、そうしているような姿。
胸がきゅっとなる。
カラ…
窓を開け、呼び掛けた。
「晃平…、ご飯食べよ」
「…ああ、今行く」
〝この幸せな日々は誰にも渡したくない…
例え、晃平が心の中で誰を想っていたとしても…〟
雪乃は自分にそう言い聞かせて、心のざわめきを抑える…。
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