ポケットに隠した約束

Mari

文字の大きさ
10 / 31
第三章

想いと仕事の狭間

しおりを挟む
「ねぇねぇ、あんたたち何かあったの?」
休み明け、出勤すると莉奈がすぐさま聞いてくる。

「何って…?」
思わずとぼけてみた。

「瑞希と隼人、鍋パーティーで買い出しから戻ってきて明らかに様子変だもん!」
「何も…ないよ」

莉奈は鋭い。
絶対勘づかれるだろうとは思っていた。
でも…さすがにこれは言えないな…

あの日、隼人は〝待つ〟と言った。
好きになってくれるまで待つと。
だけど気持ちだけは知っててほしいんだと…。

なんだよー…
余計に頭混乱しちゃうじゃん…バカ隼人。


「じゃ、隼人に聞いた方が早いか」
「…えっ?」

思わぬ言葉にあたふたしていると、莉奈がニヤーっと顔を緩める。
「冗談よ、なんとなく察しはついてるけど」
私はため息混じりに笑った。



その時、電話を取ったスタッフから呼ばれる。
「相澤さん、木田様からお電話です」
ドクンと心臓が音を立てた。

毎回毎回、雪乃の名前を聞く度にイヤな音を一際大きく鳴らす心臓。
これは…まじで心臓に悪い…。


「はい、相澤です」
『もしもし、木田です』
「どうされました?」
『あの、クリスマスにフェアがあると聞いて…』
「あ、そうなんです…。参加されますか?」
『はい、是非』
「参加人数は…二名で宜しいですか?」
『はい』
「かしこまりました、二名様で承ります。ご連絡ありがとうございます」



電話を切ると、莉奈が声を掛けてきた。
「フェア、参加するって電話?」
「うん」
「…そっか」


クリスマス…
三年前のこの日に晃平はニューヨークへと旅立った。
イブが仕事だった私たちは、本当ならこの日に会う約束をしていたのに…。
転勤の話が急遽決まり、秋に話していたそんなクリスマスの楽しい話題もなくなってしまった。


「ねぇ、瑞希…」
「うん?」
「…もう何も言わないつもりだったけど、やっぱり自分の素直な気持ちくらい晃平くんに伝えるべきなんじゃないかな?」

私も本当はそうしたい。
だけど、二人の結婚式の担当者がそれをやって新婦に知られてしまえば大問題だ。

「ううん、私は大丈夫。きっと時間が解決してくれるよ」
「…瑞希」
「ありがとね、莉奈」


私はパソコンに向き直り、フェアの参加者に送る案内状リストに、〝佐野晃平・木田雪乃〟と追加入力する。

本当は、私の心は既にいっぱいいっぱいだった。
二人の名前が並んでいるだけで、こんなにも胸がギューっと苦しいのだから。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...