ポケットに隠した約束

Mari

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第四章

笑い合う時間

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ある日、晃平は仕事で大きなミスをし、処理に追われていた。

「晃平、お前がこんなミスするなんて珍しいな」
将太が手伝いながら口を開くと、晃平は苦笑する。
そんな晃平を見て、将太は言葉を続けた。
「…瑞希ちゃんとは結婚式の打ち合わせ以外で会ってないのか?」
晃平はピタリと作業を一瞬止めて答える。
「会えるわけねえだろ…」
「なんで」
「今更どんな顔して二人で会うんだよ…」
「…不器用な奴…」
将太はポツリと呟いて作業を進める。


夜、将太は接待の為先に会社を後にした。
残された晃平は黙々と処理をこなし、仕事を終えたのは21時過ぎ。
特に理由もないが、家にそのまま帰る気にならない晃平は、とぼとぼと夜の街を歩く。
ため息を一つついては、仕事でのミスや、雪乃との結婚式のことなど、自分の不甲斐なさを思い知らされた。

「…瑞希」
不意に呟いた名前。
瑞希と過ごした日々や瑞希の笑顔を思い浮かべ、こんな時、瑞希と会えたなら前向きにまた明日から頑張ろうと思えてたんだろうなと、以前の自分を思い出す。

携帯に残る、瑞希の番号…
晃平はその通話ボタンを押していた。

Trururu…trururu……


『はい…』
電話の向こうの瑞希の声が、晃平の耳に入ってくる。

『…晃平?…どうしたの?』
晃平は妙な安心感に、思わず目頭が熱くなって片手で両目を覆った。

「瑞希…少しだけ、会えないかな…」
『……』
無言の瑞希に晃平の胸は痛む。
〝やっぱり…〟と言葉を押し出そうとしたその時だった。

『今、どこに居るの…?』




電話の向こう、晃平の様子がおかしい気がして…
気が付けば、私は走ってた。
担当プランナーだとか、雪乃さんと結婚するんだからだとか、そんなのどうでも良くて…、ただ自分の気持ちのままに走っていた気がする。
側にいて、話を聞いてあげたい。

ざわざわとした人混みを縫って、晃平が待つ場所へと急いだ。
何の色気もないけれど、付き合ってた時によく二人で仕事終わりの一杯を楽しんだ立ち飲み屋台。
そこのおでんが大好きで、寒い中ハフハフ言わせながら心落ち着かせてたっけ。


「晃平…」
「…おっす、悪いな」
「…何か、あった?」
晃平は苦笑いすると「お前には隠せないか」と仕事の話を始めた。
ミスして落ち込むなんて、らしくない。
それでも、誰かに聞いてほしい時は決まって瑞希の顔を思い出す…
そう話してくれる晃平。
なんだかそれだけで、胸がドキドキと高鳴っていた。


「今日はありがとな」
二時間ほどゆっくり飲んで、晃平も少しスッキリしたのか、帰る時にはいつもの笑顔を見せる。
「どういたしまして」
二人、笑い合うプライベートな時間…
久しぶりの心休まる一時だった。



そんな二人を、偶然にも見掛けてしまった雪乃…
晃平の笑顔を見た瞬間、なんとも言えない嫉妬心が雪乃の中に溢れてくる。
同時に、あの日晃平に言った言葉が二人を苦しめているのだと悟ったのだった。




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