君と、もみじ

Mari

文字の大きさ
5 / 29
第一章

心の内

しおりを挟む
ミーティングは同じ体育館内で三年生、一・二年生に分かれて行われる。
女子バレー部も一緒だ。

元女子バレー部の千夏と一緒に学校へと向かいながら、私は、ずっと先程の響と彼女の様子を思い出しては、一人悶々としている。

響はなんで今日の試合に私を呼んだのだろう…


「奏、さっきのさ…、陽菜ちゃんだっけ?」
千夏が遠慮がちに話し始めた。

「会いたくなかったでしょ」
「…」
「いい加減、観念しろ。好きなんでしょ?響くんのこと」
「…うん」
「そっか。つらかったね、奏…」
今は一人になれば心を平然なままで保てそうにない。
千夏の、なだめるような優しい声に視界は涙で歪みそうなほどだった。



その後ミーティングも終わり、千夏と一緒に帰るために女子バレー部のミーティングが終わるのを待っていると、
「奏、そういえばこの前、小林先輩に偶然会ってさ、お前の連絡先聞かれた」
そう話を切り出したのは、同級生で元バレー部の中野雅也(なかの まさや)。

小林先輩は一つ上の元バレー部の先輩で、私の元彼だ。

「まさか教えてないよね…?」
「あ、やっぱり駄目だった?」
「…教えたの?」

今更、元彼と連絡を取り合う必要はない。
先輩は、大学で新しい彼女が出来たんだもの。
それで私は六月に振られたのだ。
やっと、やっと忘れられたのに、もう思い出したくもないのに…。


「中野先輩ー、そんな余計なことしないで下さいよー」
近くで談笑していた響が、膨れっ面で話に入ってくる。
「なんだよ、響。お前、やっぱり奏のこと好きなの?
可愛い彼女がいるくせにー。見てたぞ、今日の試合」
ニヤニヤしながら雅也がからかうと、響は何食わぬ顔で話を続けた。

「だって、小林先輩って、大学で浮気したっていうし、それで奏ちゃん振られちゃったんすよ?
今更連絡取り合ったって、奏ちゃん傷つくだけじゃないっすか」

〝好きなの?〟の答えにはなっていないものの、そうやって庇ってくれる響の気持ちが嬉しい。

「まぁ、確かになぁ。ごめんな、奏。俺、何も考えずに教えちゃって…」
「ううん、電話に出なきゃいいだけだから」


小林先輩か…

あんなにツラい失恋したのに…、なんだか不思議。
これも、響を好きになったおかげかな。
失恋した後、響と放課後に話すようになって、楽しくて、いつの間にか失恋した辛さも消えていた。

今は今で、響に片思いしてるし辛くはあるけど、それでも浮気されて振られるよりは幾分マシなのかもしれない。


「奏ちゃん?」
「えっ?あ、何?」
「大丈夫?」
私がボーッとしていたからか、響が顔を覗き込んできた。
「だ、大丈夫!」
不意に近付いた顔にビックリした私は、思わず身体を反らす。

その時、女子バレー部のミーティングが終わった千夏が走ってきた。
「奏、待たせてごめん!この後三年のバレー部でカラオケ行くことになっちゃった!奏も行く?」
「あ、ううん。私のことは気にしないで、行っておいで」
「本当に?…大丈夫?」
「うん」

千夏と手を振り帰ろうとすると、
「じゃあ、奏ちゃん俺と一緒に帰ろ。送るよ」
「え…」
「たまにはいいじゃん、青春っぽくて」
「…バカなの?」
「ひどっ」
突っぱねてみたものの、そのまま響と一緒に帰ることになった私の鼓動は、尋常じゃないほど高鳴る。

今日はドキドキしたり落ち込んだり、嬉しかったり…
本当忙しいな…
そんなことを思いながら、斜め前を歩き出した響の横顔を見て、私もまた笑顔が零れた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】 私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。 そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、 死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。 「でも、子供たちの心だけは、 必ず取り戻す」 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。 それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。 これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

処理中です...