君と、もみじ

Mari

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第二章

サボりの朝

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「奏ー?いつまで寝てるの、遅刻するわよ」
「んん、頭痛い…熱っぽいから休む…」

いつもの朝、だけど今日はどうしようもなく学校に行きたくない気分。

「あら、風邪かしら…病院行く?」
「…いい、横になっていたい」
母に小さなため息をつかれながらも、私は布団を頭から被り身体を丸めた。


あれからどうやって家まで帰ってきたのか、夕飯が何だったか、何時に寝たのかほとんど覚えていない。
「情けない…」
布団を頭から被っているせいか、呟いた言葉がやけに耳に残る。

「奏ー、仕事行ってくるわねー、ちゃんと寝とくのよ」
部屋の外から母が声を掛けた。
「うん」
出勤時間の早い父は既に会社へ行き、母も会社へ向かう。
家には私一人だ。
静かな家に一人で居れば、それはそれで寂しかったりする。
〝誰か居れば気分も紛れるのにな〟なんて、学校をサボっておきながら矛盾している自分に苦笑した。

二度寝しよう…そうすれば何も考えたくなくて済む。


しかし、目を瞑れば思い出したくない光景ばかりが浮かんでくる。
響と彼女の笑い合う姿や、小林先輩と別れた頃のこと。
「わぁっ!」
そんな光景を振り払うように、声を上げ布団から顔を出した。
「駄目だ。全然落ち着かない…」
この心のざわつきをどうしたら良いものか。

暫くボーッと過ごす時間。
どれ程経っただろう…
そんなことを思っていると、千夏からメールが届いた。

〝おはよう!生きてるかー?〟

思わず微笑む。
「生きてるよー…」
千夏には、サボりであることがバレているだろう。
放課後残らなければ響にも会わないし、小林先輩が学校に居るわけではない。
それでも、家から出たくなかったなんて言ったら、心配かけるかな…

〝おはよう!頭痛くて。明日は学校行くよ〟

それだけ返信した。


すると、その時…
見覚えのある番号から携帯に着信が鳴る。
最近何度か着信が入るこの番号。
きっと、小林先輩だ。
別れた時に小林先輩の番号を消した。
携帯も変えて、もう二度と連絡を取ることはないと思っていたのに。

「ごめんね、先輩。何度かけてきても、取らないよ」
鳴り続く携帯にそう呟いて、サイドテーブルに置く。

着信拒否をすればいいだけのこと。
だけどそれさえ出来ないのは、ただただ自分が臆病なのか、それとも…心のどこかでいずれ電話に出てもいいと思っているのか…。
それさえ分からない。

ひたすら鳴り続ける着信音。
「いやいや、いくらなんでもしつこいでしょ…」
携帯画面に映し出される番号を見つめながらため息をついた。


「自分がどうしたいかも分かんないなんて、呆れる」
独り言は虚しく宙に浮く。

やっとのことで着信が止まり、暫くすると千夏からメールがきた。
〝明日学校で待ってる〟

心配してるんだろうな。
昨日の今日だしな…
まさか泣くなんて、私も思ってもみなかった。
あの曲を聴いた瞬間の、鳥肌が立つような感覚。
先輩と学校帰りにデートしたことや、笑顔、初めてのキス、そして六月の雨の日の別れ…
一気に思い出してしまうのだから、ラブソングの威力って凄い。

駄目だ、無理。
もう考えないって決めたんだから。

もう一度布団にもぐり込み、私は目を閉じた。





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