君と、もみじ

Mari

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第二章

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翌日、心のざわつきもそのままに、私は登校していた。
当たり前に、授業なんて上の空で先生の話も頭に入らない。

いや、それは言い訳か…

そんなこんなで、一日ボーッと過ごし放課後を迎えた。
学校に居る時間がこんなに長いと思ったことはあるだろうか…

「千夏、一緒に帰ろ」
「…今日も読書しなくていいの?」
千夏は眉を下げ、ため息混じりに笑う。
「うん…」
「よし、じゃあさ、カフェ寄って帰ろー!美味しいケーキが食べたーい」
明るく返してくれる千夏に感謝しつつ、教室を出ようとすると、宏介が廊下の端から私を見つけて呼び止めた。
「奏!」
「宏介、どうしたの?」
「…校門の前に、小林先輩来てたぞ」
「え…」
動揺が走る。
毎日のように来るつもりだろうか…。
「奏…裏門から出よう」
千夏が心配そうに言った。
すると、宏介が言いにくそうに教えてくれる。
「小林先輩、最近あの浮気相手と別れたらしい…」
「だからって何?それで奏とよりを戻そうとしてるなら最低なんだけど!」
千夏が私の代わりに腹を立ててくれている横で、私は呆然としていた。
頭がうまく働かない。
「奏…、もうその気がないなら小林先輩にハッキリ言わねぇと、ずっとこんなのが続くぞ」
宏介の言うことも、もっともだ。
だけど、今の私には小林先輩と顔を合わす勇気がない。

「宏介、ありがとう。でもやっぱり会いたくないや」
そう言って、私は千夏を引っ張り裏門へと向かった。


一方、部活のウォーミングアップ中、〝小林先輩が来てる〟と耳にした響は、気が気じゃない。
それなのに何も出来ない自分が悔しくて、腹立たしかった。

部活の休憩中奏の教室を覗いてみるが、いつもはそこに居るはずの奏は居ない。
あの試合の日以来、ずっとだ。
響は壁にもたれて座り込む。
「俺、避けられるようなことしたんだっけ…?」
ポツリと呟いた声は、ざざぁっと風に吹かれるもみじの木の葉の音に消されていった。



「美味しいー!ここのチーズケーキ絶品!」
千夏と私は裏門から出て、カフェで一息つく。
やっと、落ち着けた。
そう思った時、嵐はまた私に降りかかってくる。

「あれぇ?奏先輩?」

まさか、この声は…
振り向くとそこに居たのは響の彼女、陽菜だった。
「陽菜…ちゃん」
「隣、座ってもいいですか?」
そう言って、陽菜は一緒に居た友達と隣の席に座って話し始める。
特に何を話すわけでもないし、ただ隣の席に座っているだけだ。
だけど、その会話は丸聞こえで響の話題でいっぱい…
楽しかったデートの話や、貰ったプレゼントの話など、聞こえてくるもの全てが、今の私にとっては結構しんどい。

陽菜は思い出したように私に話し掛ける。
「あ、奏先輩、響と仲が良いのは分かるんですけど、あんまりベタベタしないで下さいね?
この前一緒に歩いてるの見ただけで、私結構妬いちゃったんですよー!」
冗談っぽく笑ってはいるが、陽菜の目は笑っていなかった。
それにしても〝ベタベタ〟って酷い…
ベタベタしたくても出来ないくらいなのに…。
「うん…、そうだよね、ミーティング帰りとはいえごめんね…」
苦笑いをする私に、陽菜は追い打ちを掛ける。
「でも、〝好きだよ〟って響言ってくれるから、結局は許しちゃうんですけどね」

〝出る杭を打つ〟とはこういうことなのか…
完全に、…打ち込まれてしまった。

溢れ出しそうな想いは抑え込まれ、消したはずの想いは引っ張り出され…
どうしたらいいの?と、悶々とするばかり。

ただひたすら、その時が過ぎ去るのを待つばかりだった。






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