君と、もみじ

Mari

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第三章

もみじの季節が終わる頃

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移動教室の途中、渡り廊下でヒラヒラと舞うもみじ。
それは赤茶の弱々しいもみじ。

もうすぐ、もみじの季節が終わる。

「響ー!」

どこからか聞こえる響を呼ぶ声に、私は渡り廊下の隅に反射的に身を隠した。
苦しい恋は、しばらくお休みしよう。
あれから約一ヶ月、まともに話もしてなければ、会わないようにしてきた。
「…奏、いつまでそうやって避け続けるつもり?」
呆れながら千夏が話し掛ける。

分かってるよ…
こんなことしたって、響への気持ちがすぐに消える訳はない。
だけど、会えばもっと好きになって、この気持ちを抑えられなくなって、叶わない恋にきっと私の心は壊れてしまうんだ。

「本当に、いいの…?このままで…」
千夏が心配そうに聞く。
「うん…」
目を伏せる私に、千夏は話題を変えた。
「そういえば、あれから小林先輩とはどうなったの?」
「メールとか電話は時々あるよ」
「…意外。頑張ってるんだ、小林先輩」
目をまん丸くする千夏に笑える。
確かにそうだ。
数ヶ月前からしたら、考えられない。
普通通りに話が出来るようになって、私も少しホッとしていた。


その日の帰りのホームルーム後。
「奏、先生に呼ばれた!そんなに時間かからないと思うから待っててー」
千夏はそう言ってバタバタと職員室へ向かう。
ちょうどその時、小林先輩から携帯に着信が入った…

「はい」
『奏、ちょっと校門まで来れる?』
「あぁー…、うん」

既に抵抗はない。
〝好き〟という気持ちがないから…なのだろうか。


千夏に「ちょっと校門に行ってくる」とだけメールをして、小林先輩の元へ駆け出した。
「どうしたんですか?」
「これ、返しておこうと思って」
もうだいぶ前に貸した本を差し出す先輩。
「…いつのですか、すっかり忘れてました」
そう笑うと、
「この前、久しぶりに引っ張り出した鞄に入ってた」
そう言って先輩も笑う。

なんだろう…。
気まずさのなくなった先輩とのやり取りは、少し心地いい。




「おい、響…あれ、奏先輩と小林先輩じゃねぇ?」
体育館の外で部活のウォーミングアップをしていた、男子バレー部。
響と同級生の内野和真(うちの かずま)が、校門で立ち話をしている奏と小林先輩に気付いた。

笑いながら話す二人の姿が、響の目にも入る。
「…」
なんとも言えない切なげな響の表情に、和真は言った。
「…お前さ、いつも冗談っぽく振る舞ってるけど、本当は奏先輩のこと本気で好きなんじゃねぇの?」

その言葉に、響は一瞬和真を見るが、すぐに目を反らして笑う。
「…何言ってんの?」
「誤魔化さなくていいよ。だから、彼女とも別れようとしてんだろ?」
誰も知らないはずの話を出され、響はもう一度和真に振り向いた。
すると和真は、眉を下げて話を続ける。
「俺の弟、お前の彼女と同じ高校で、クラスまで一緒。この前、〝絶対別れない!〟って友達に話してるの聞こえたらしいよ」
「…」
響は思わず頭を抱え込んだ。

そう。
響は、最近になって陽菜に別れ話を持ちかけたのだ。
ただ、陽菜は納得しようとせず、挙げ句の果てには〝まさか奏先輩のこと好きだとか言わないよね?言ったら私、奏先輩のこと絶対許さないから〟などと言う始末。
そのまま別れられずに、頭を悩ませている。

「和真、俺が奏ちゃんのこと好きってこと誰にも言うなよ」
「分かってるよ。奏先輩のためにだろ」
和真は中学の頃からずっと響の親友で、一番の理解者だ。
「ていうかさ、奏先輩いつの間に小林先輩と笑い合えるようになったんだよ」
「…知らね。ここ一ヶ月近く俺避けられてるっぽいし」
プイっとそっぽを向きふてくされる響。
「まさかより戻してたりしねぇよな?」
「……」
そっぽを向いたままの響に、和真は笑う。
「可愛いね、お前。相当好きなんじゃん!」
「…うっせ」

そんな響の様子を見て、どうにかしてやりたいと和真はため息をついたのだった。






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