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第三章
すれ違い
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ある日の放課後、千夏と校門を出ようとした時に再び現れた嵐。
「奏先輩」
そう声を掛けてきたのは、陽菜だった。
「…陽菜ちゃん」
「千夏先輩、すみません。ちょっと奏先輩と二人にしてくれませんか?」
「はぁっ…?」
「…千夏」
今にも陽菜に向かっていきそうな千夏を制し、陽菜を見つめる。
「…教室に戻ってる。何かあったらすぐ電話して」
千夏はそう言って校内へと戻っていった。
「奏先輩、単刀直入に言いますね。…響のこと、どう思ってるのか聞かせてもらってもいいですか?」
「…何の理由があって?」
「もし響のこと好きだという気持ちがあるとしたら、私の彼氏だって分かってて、近付いたことになりますよね?それって、私にとっては大問題なんです」
「…」
「…言えませんか?」
陽菜の唐突で独りよがりな質問に、答える義務はない。
だけど、答えなければ陽菜は色々と勘ぐって響までもを巻き込むだろう。
私が響のことを好きだと知ってしまえば、それこそ大荒れになることは目に見えていた。
陽菜が何を考えているのかは分からない。
どう答えるべきか…
陽菜の大きな目が鋭く刺さる。
「あれ、千夏先輩ー!」
体育館の端でウォーミングアップをしていた和真が、千夏に声を掛けた。
「今日は一人っすか?…ていうか、何?忘れ物っすか?」
千夏は、和真の隣に居る響に視線を投げる。
「誰かさんの彼女が、奏に話があるらしくてねぇ。邪魔者扱いされちゃったから」
「っ…!」
響は、それが陽菜だとすぐに気付いた。
「千夏先輩、奏ちゃんは何処に…っ?」
「奏先輩?答えられないんですか?」
「…っ」
「好き…ってことですか?」
正直、面倒臭い。
私は何故、この子の為に響を諦めようとしているのか、それすら分からなくなってしまう。
「…響は、大事な後輩だよ」
「それだけですか?」
「…それ以外に何があるの?」
「…」
じっと私の目を見つめる陽菜。
視線を反らしたかと思ったら、クスリと微笑んだ。
「…響、聞いちゃったね」
その言葉に、ハッとして後ろを振り向く。
息を切らし、そこに佇む響。
「陽菜…まじでいい加減にして…」
「…っ、響だって聞いたでしょ?奏先輩は響のこと、大事な後輩としか思ってないんだからっ!」
「俺にとっても、大事な先輩だよ。俺と陽菜のことに何も関係はない」
…大事な先輩…か。
何も関係ない…か。
分かってはいたけど、ヘコむなぁ…。
「…それでも、絶対イヤだから」
「陽菜っ…」
陽菜はそのまま走って帰って行ってしまった。
二人の間に何が起こっているのかは、私には分からない。
陽菜が私と響の仲を疑って喧嘩になってしまったのだろうと、私はそう思っていた。
「奏ちゃん…ごめん、なんか迷惑かけて…」
「…ううん、早く、……仲直りしなよ?」
「っ…」
何かを言い掛けて口を紡ぐ響。
このぎこちない空気に耐えられそうもない。
「…千夏、待ってるから行くね。響も部活の途中でしょ?戻らなきゃ」
「うん…」
校内へと駆けていく奏の後ろ姿。
響は、ポツリと呟いた。
「…大事な後輩…それ以外に何があるの…か」
響は前髪をぐしゃっと片手で掻き、空を仰ぐ。
伝えられない想いと、行き場のない想い。
奏に迷惑を掛けないようにと陽菜に言い放った言葉。
まさか奏の前で言うことになるなんて。
「バカみてぇ…」
白い息が、切なげに消えていった。
「奏先輩」
そう声を掛けてきたのは、陽菜だった。
「…陽菜ちゃん」
「千夏先輩、すみません。ちょっと奏先輩と二人にしてくれませんか?」
「はぁっ…?」
「…千夏」
今にも陽菜に向かっていきそうな千夏を制し、陽菜を見つめる。
「…教室に戻ってる。何かあったらすぐ電話して」
千夏はそう言って校内へと戻っていった。
「奏先輩、単刀直入に言いますね。…響のこと、どう思ってるのか聞かせてもらってもいいですか?」
「…何の理由があって?」
「もし響のこと好きだという気持ちがあるとしたら、私の彼氏だって分かってて、近付いたことになりますよね?それって、私にとっては大問題なんです」
「…」
「…言えませんか?」
陽菜の唐突で独りよがりな質問に、答える義務はない。
だけど、答えなければ陽菜は色々と勘ぐって響までもを巻き込むだろう。
私が響のことを好きだと知ってしまえば、それこそ大荒れになることは目に見えていた。
陽菜が何を考えているのかは分からない。
どう答えるべきか…
陽菜の大きな目が鋭く刺さる。
「あれ、千夏先輩ー!」
体育館の端でウォーミングアップをしていた和真が、千夏に声を掛けた。
「今日は一人っすか?…ていうか、何?忘れ物っすか?」
千夏は、和真の隣に居る響に視線を投げる。
「誰かさんの彼女が、奏に話があるらしくてねぇ。邪魔者扱いされちゃったから」
「っ…!」
響は、それが陽菜だとすぐに気付いた。
「千夏先輩、奏ちゃんは何処に…っ?」
「奏先輩?答えられないんですか?」
「…っ」
「好き…ってことですか?」
正直、面倒臭い。
私は何故、この子の為に響を諦めようとしているのか、それすら分からなくなってしまう。
「…響は、大事な後輩だよ」
「それだけですか?」
「…それ以外に何があるの?」
「…」
じっと私の目を見つめる陽菜。
視線を反らしたかと思ったら、クスリと微笑んだ。
「…響、聞いちゃったね」
その言葉に、ハッとして後ろを振り向く。
息を切らし、そこに佇む響。
「陽菜…まじでいい加減にして…」
「…っ、響だって聞いたでしょ?奏先輩は響のこと、大事な後輩としか思ってないんだからっ!」
「俺にとっても、大事な先輩だよ。俺と陽菜のことに何も関係はない」
…大事な先輩…か。
何も関係ない…か。
分かってはいたけど、ヘコむなぁ…。
「…それでも、絶対イヤだから」
「陽菜っ…」
陽菜はそのまま走って帰って行ってしまった。
二人の間に何が起こっているのかは、私には分からない。
陽菜が私と響の仲を疑って喧嘩になってしまったのだろうと、私はそう思っていた。
「奏ちゃん…ごめん、なんか迷惑かけて…」
「…ううん、早く、……仲直りしなよ?」
「っ…」
何かを言い掛けて口を紡ぐ響。
このぎこちない空気に耐えられそうもない。
「…千夏、待ってるから行くね。響も部活の途中でしょ?戻らなきゃ」
「うん…」
校内へと駆けていく奏の後ろ姿。
響は、ポツリと呟いた。
「…大事な後輩…それ以外に何があるの…か」
響は前髪をぐしゃっと片手で掻き、空を仰ぐ。
伝えられない想いと、行き場のない想い。
奏に迷惑を掛けないようにと陽菜に言い放った言葉。
まさか奏の前で言うことになるなんて。
「バカみてぇ…」
白い息が、切なげに消えていった。
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