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最終章
響と、私
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「…で?」
千夏がため息混じりに言い放つ。
「結局は一年も前から実は両思いだったと?」
そう言って和真は呆れ顔だ。
私と響は顔を見合わせて頷く。
お互いに気持ちを伝え合った後、私たちは外で待っていてくれた千夏と和真に報告した。
二人には随分と心配をかけ、やきもきさせたことだろう。
この一年のことを思い返すと、情けなくて恥ずかしくて顔を上げられない。
すると、千夏と和真が一度息をついて笑った。
「まぁ、良かったよ。やっと二人とも素直になれて」
「本当っ。俺なら彼女が別れてくれなくても、気持ちだけは先に伝えるのにさぁ。響、そういうとこ律儀っていうか何と言うかっ」
響の話によると、私の卒業後、響は陽菜に頭を下げたのだと言う。
〝奏ちゃんのこと中学の頃からずっと好きで、忘れられなかった〟と、正直に打ち明けたらしい。
陽菜は沈黙の後、〝告白する前から知ってた。だからいつも不安だった〟とついには別れを受け入れてくれたそうだ。
「よしっ、じゃあ今日は二人の奢りでカラオケでも行くか!」
千夏がそう切り出す。
〝カラオケ好きだなぁ〟と私は苦笑するが、今日ばかりは何も言えない。
「いいっすね!」
「いっそのこと、和真と私も付き合っちゃう?」
「えっ!」
「結構楽しいかもよー」
「はいっ」
「……いや、おい。冗談だから」
「えぇー、冗談にしないで下さいよー」
千夏と和真のそんなやり取りに笑いながら、二人の後ろを響と並んで歩く。
カラオケに向かう途中、もみじの並木道を見掛けた。
引き寄せられるように目が離せない。
響も同じように気付くと、
「奏ちゃんがいっぱい」
と冗談っぽく笑う。
「いや、それおかしいから」
と私も突っ込んだ。
会話や態度なんて、今までと何ら変わらない。
だけど…
どちらからともなく、そっと繋ぐ手からお互いを想う気持ちが溢れ出ていた。
響のぬくもりを感じると、〝ただの先輩後輩〟じゃなくなったことを実感する。
「奏……って、呼んでもいい?」
突然の響のその言葉に、湯気でも出るんじゃないかと思う程、顔が熱い。
響はそんな私を見て、プッと吹き出して笑った。
「顔、真っ赤!」
「ひ、ひどい!そうさせたのは響でしょっ」
「奏ちゃん、それじゃこの先持たないよ?」
「どういうことよっ」
「二人で居れば、多分奏ちゃんが真っ赤になるようなことばっかりってこと」
「っ…!」
駄目だ、心臓が持たない。
絶対からかって楽しんでる、こいつ。
「奏ちゃん、余計にもみじみたい。やっぱり好きだわぁ、もみじ」
そう言って、響は私の手を引いてまた歩き出す。
この先、きっと振り回される。
真っ赤になっては、それを響は楽しむのだろう。
でも、そんな毎日もきっと幸せに違いない。
響がいつももみじの葉を差し出してきていたからか、私の中で響ともみじは〝セット〟だ。
それと同じように、響と私もいつか二人で一つと思えるようになったらいいな。
そんな想いを抱きながら、響の隣で微笑んだ。
完
千夏がため息混じりに言い放つ。
「結局は一年も前から実は両思いだったと?」
そう言って和真は呆れ顔だ。
私と響は顔を見合わせて頷く。
お互いに気持ちを伝え合った後、私たちは外で待っていてくれた千夏と和真に報告した。
二人には随分と心配をかけ、やきもきさせたことだろう。
この一年のことを思い返すと、情けなくて恥ずかしくて顔を上げられない。
すると、千夏と和真が一度息をついて笑った。
「まぁ、良かったよ。やっと二人とも素直になれて」
「本当っ。俺なら彼女が別れてくれなくても、気持ちだけは先に伝えるのにさぁ。響、そういうとこ律儀っていうか何と言うかっ」
響の話によると、私の卒業後、響は陽菜に頭を下げたのだと言う。
〝奏ちゃんのこと中学の頃からずっと好きで、忘れられなかった〟と、正直に打ち明けたらしい。
陽菜は沈黙の後、〝告白する前から知ってた。だからいつも不安だった〟とついには別れを受け入れてくれたそうだ。
「よしっ、じゃあ今日は二人の奢りでカラオケでも行くか!」
千夏がそう切り出す。
〝カラオケ好きだなぁ〟と私は苦笑するが、今日ばかりは何も言えない。
「いいっすね!」
「いっそのこと、和真と私も付き合っちゃう?」
「えっ!」
「結構楽しいかもよー」
「はいっ」
「……いや、おい。冗談だから」
「えぇー、冗談にしないで下さいよー」
千夏と和真のそんなやり取りに笑いながら、二人の後ろを響と並んで歩く。
カラオケに向かう途中、もみじの並木道を見掛けた。
引き寄せられるように目が離せない。
響も同じように気付くと、
「奏ちゃんがいっぱい」
と冗談っぽく笑う。
「いや、それおかしいから」
と私も突っ込んだ。
会話や態度なんて、今までと何ら変わらない。
だけど…
どちらからともなく、そっと繋ぐ手からお互いを想う気持ちが溢れ出ていた。
響のぬくもりを感じると、〝ただの先輩後輩〟じゃなくなったことを実感する。
「奏……って、呼んでもいい?」
突然の響のその言葉に、湯気でも出るんじゃないかと思う程、顔が熱い。
響はそんな私を見て、プッと吹き出して笑った。
「顔、真っ赤!」
「ひ、ひどい!そうさせたのは響でしょっ」
「奏ちゃん、それじゃこの先持たないよ?」
「どういうことよっ」
「二人で居れば、多分奏ちゃんが真っ赤になるようなことばっかりってこと」
「っ…!」
駄目だ、心臓が持たない。
絶対からかって楽しんでる、こいつ。
「奏ちゃん、余計にもみじみたい。やっぱり好きだわぁ、もみじ」
そう言って、響は私の手を引いてまた歩き出す。
この先、きっと振り回される。
真っ赤になっては、それを響は楽しむのだろう。
でも、そんな毎日もきっと幸せに違いない。
響がいつももみじの葉を差し出してきていたからか、私の中で響ともみじは〝セット〟だ。
それと同じように、響と私もいつか二人で一つと思えるようになったらいいな。
そんな想いを抱きながら、響の隣で微笑んだ。
完
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