君と、もみじ

Mari

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最終章

一年越しの告白

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千夏に引き止められながらも、体育館二階のドアに歩を進めていると…

「俺が、連れてきてほしいって千夏先輩にお願いしたんだよ…」
「っ…!」
いつの間にか、体育館の二階に上がってきていたのは、久しぶりに見る響だった。


「…響」
「ひでぇよなぁ。何度電話しても出てくれないし、奏ちゃん、あからさまに俺のこと避けてんだもん」
「…ごめ…」
避けていたわけではないが、響にそう言われると〝避けていない〟とも言い切れない。

千夏はポンと私の背中を押すと、にかっと笑って体育館を出ていってしまった。

二人っきりにしないでぇぇぇっ!
と叫びたかったが時は既に遅し…。


顔を上げられないでいる私に、響が近付く。
身を強張らせた私の手を取ると、もみじの葉をふわりと乗せた。

「一年前一緒に帰ったあの日、俺がなんて言おうとしたか分かる?」
「え…?」
首を横に振る私に、響は続ける。
「何か言い掛けたことさえ、もう忘れちゃってるか…」
「…」
必死に思い出そうとするが、陽菜と途中で遭遇したことしか思い出せない。
「卒業式の日も、教室で言い掛けた」

あ…
腕を掴まれて…

「俺は、奏ちゃんが好きだ。って言おうとした」

ドクン…
心臓が大きく音を立てて暴れ始めた…


「一緒に帰ったあの日、それを言い掛けて陽菜に呼び止められた時、これじゃあ俺、奏ちゃんを傷付けた小林先輩と一緒じゃんって思った」
頭の中がパニックで、響が何を言っているのか半分分からなくなる。
「卒業式の日も、筋通さなきゃって気持ちが邪魔をして言えなかった」
「筋…?」
響の言葉が、何を示しているのか検討もつかないまま俯いて聞いていた。
「奏ちゃんに避けられてるかもって気付いたけど、俺には何も言う資格ないなって…」

駄目だ…涙が零れ落ちそう。


「…陽菜と、ちゃんと別れるまで」
その言葉に、私は顔を上げる。
響は、苦笑いで話を続けた。

「あの頃、俺はもう陽菜に別れ話をしてた。奏ちゃんの卒業までにケリつけるつもりだった」
「…え?」
「結局、卒業式には間に合わなかったけど、陽菜とちゃんと別れたよ。分かってもらえた。でも、奏ちゃん電話取ってくんないし…。だから、千夏先輩にお願いして連れてきてもらった」
「…」
涙でいっぱいの目に、響がボヤけて映る。
「ずっと好きだった。この高校に入ったのも、奏ちゃんが居たからだし、なのに既に小林先輩と付き合ってて、諦めなきゃって、何度も忘れようとした」

思考回路が停止したかのように、響の話に頭が追い付かない。

「そんなの、言ってくれなきゃ分かんない」
「うん」
「姉弟みたいだって、姉ちゃんみたいだって…」
「うん。そう言い聞かせてた」
私はバカだ。
そう言い聞かせて諦めようとしていたのは私なのに。


「…響が、…好き」
涙と一緒に、とうとう抑え続けてきた気持ちが溢れ出す。

歪んだ視界の中で、響との距離が縮まった瞬間…
私は響にぎゅっと抱きしめられていた。
優しいぬくもりに、身体の力が抜けていく。

「言ったでしょ。青い若々しい葉より、もみじの方が好きだって。もみじは俺にとって、奏ちゃんのイメージだったから」
「…寄せ書きにも書いてあった」
「うん」
「…若々しくないって言いたい?嫌味…?」
泣きながら、最大限の照れ隠し。


そっと身体を離し、一つ笑顔を見せた響は、
「最高の誉め言葉のつもりなんだけど」

そう言って、優しいキスを落とした。





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