君と、もみじ

Mari

文字の大きさ
27 / 29
最終章

卒業後初の母校

しおりを挟む
千夏と久しぶりに再会したのは連絡があって一ヶ月後の最後の土曜日で、季節はすっかり秋。



「奏ー!会いたかったー!」
「久しぶりー!」

高校を卒業しても千夏とはまめに連絡を取り合い、定期的に会っていた。
毎日一緒にいたあの頃とは違うが、それでも一ヶ月や二ヶ月おきには顔を合わせている。

「まずはランチしよ!最近出来たカフェが気になっててさぁ」
「えー!行きたい!」
学校が違っても、こうして千夏と変わらない仲で居られることが嬉しい。

街中にある緑で囲まれた落ち着いた雰囲気のカフェ。
ランチを楽しみながら、話はもっぱら近況報告だ。
「あれから、小林先輩とは連絡取ってないの?」
「一度だけ連絡はあったよ」
「えっ?なんて?」
「小林先輩、〝オーストラリアに留学することにした〟って」
「留学かぁ」
「色々頑張ってるみたい」
自分の気持ちを大事にしろと言ってくれた小林先輩。
私は、小林先輩のそんな気持ちを無駄にしていないだろうか…
「…響くんとは?」
「え…?」
突然響の名前を出されて私は戸惑う。
途端に私の心臓は速くなるばかりだ。
「メールとか電話とかさ、連絡取ろうと思えば取れるでしょ?」
「…うん」
「…連絡取ってないのか」
私の様子に千夏がため息をつく。
「ひ、響からも特に連絡があるわけじゃないし、高三なら受験勉強とかもあるだろうし」
「でも、連絡がないわけじゃないでしょ?」
「…うん」
卒業してから何度か響から連絡はあった。
だけど、バイト中の着信だったりで、その後も折り返すまでに至ってない。
「奏、そろそろさ、自分の気持ちに素直になりなよ。彼女が居るからとか言ってたら彼氏なんて出来ないよ?
その辺のいい男はみんな彼女居るんだから」
千夏の言葉がグサリと胸をつく。

しばらくカフェでゆっくりしていると、千夏が立ち上がった。
「さて!…ねぇ、今日は奏を連れて行きたい場所があるの!ほら、行くよ!」
何処とは教えてくれない千夏に半ば強引に連れて行かれた場所は…

三月に卒業した、母校だった。


「千夏…」
「今日ね、〝三年生を送る会〟なんだって!」
「え…?」
私の反応に気付いたのか、千夏はガッシリと私の手を掴む。
「いいからいいから!まだ一年も経ってないのに、なんだか懐かしいんじゃない?」
嬉しそうに私の手を引っ張る千夏に、私は戸惑いを隠せない…

駄目、まだ無理だよ…
鼓動がドクドクと速くなる。



体育館の二階に続く外階段を、私の手を引いたまま駆け上がっていく千夏。
扉を開けた体育館では、男子バレー部の試合が行われていた。
恐らく、引退した三年生と、一年生・二年生チームの試合だろう。
つまり、三年生チームには響が居るということだ…

私の頭の中はグルグルと色々な想いが巡り、もはや何を考えているのかさえ分からなくなってきている。
「千夏、帰ろう?」
小声で千夏に懇願した。
「なんで!せっかく来たのに!」
私を引き止める千夏の手を、振りほどけないでいるうちに、いつの間にか試合終了の笛が体育館に鳴り響く。


「千夏、本当にごめん、私帰る」
「奏、私がなんでここに連れてきたか、分かる?」
「…そんなの、分かんない。でも、ごめん、先に帰らせて。私、まだ響には会えない」
「どうしてよ」

千夏の真剣な目も言葉も、私を心配してくれてることは分かる。
だけど、今一目でも響に会ってしまえば…、〝好き〟だという気持ちを本当に抑えきれなくなるのが分かっていた。
彼女の居る響を好きで居ることは、辛い。

そんな想いから、心の弱さを自分ではどうすることも出来なかったのだ。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】 私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。 そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、 死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。 「でも、子供たちの心だけは、 必ず取り戻す」 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。 それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。 これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

処理中です...