花冠に約束を〜貴方は俺で❃僕は君〜

杏珠

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第一章 俺は生きないといけない

親愛の呪い

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 朝か…今日はお父さん帰ってくるのかな?帰ってくるんだとしたら最悪だけど…最近また頻度が増えてる。仕事なんて早く終われば楽なのに
「千華、今日も勉強しはる?」
「お姉ちゃん!うん、お願い」
 もっと沢山言葉を知って、この家を出たら私もいつか物語の中みたいに好きな人と幸せになれるかな?
「今日は何について知りたいん?」
 ん~…漢字とかのお勉強もしたいけど…
「お姉ちゃんについて教えてほしいかな」
「私?なんでまた…」
「お姉ちゃんの喋り方とか、知識とかどこから来てるのかなって」
 お兄ちゃんは私と同じ喋り方だし、でもお姉ちゃんのはなんか違うんだよな。それに私はお姉ちゃんとお兄ちゃんに教わってるけど…二人は誰に教わったんだろ
「そやなぁ、どっちもお客さんからよ。千華もおんなじ人相手にしたりするやろ?私も気に入った人とかは何度もおうてくれはるんやけどね、その人等が教えてくれたりするんよ」
 お客さん…お姉ちゃんも、私と同じなんだよね…
「私ん言葉は関西弁…京言葉言うてなぁ、でも完璧やあらへんよ。お客さんのが移ってもうただけやから中途半端」
 京言葉…そう言うんだ…京…って事は
「お姉ちゃんが教えてくれた東京の言葉?」
「惜しいなぁ京都の方やわ」
 京都…行ってみたいな。お姉ちゃんの喋り方は不思議だけど綺麗だし…こういう言葉を使うところならきっと綺麗だよね
「私もお姉ちゃんみたいな喋り方したいなぁ」
「千華にも移ってまうかもねw」
 弱く微笑んだお姉ちゃんはそれでも綺麗だった。でも儚くて…消えてしまいそうでゾワッとする
「そうやなぁ…千華は夢はあるん?」
「夢?夢って眠ってる時に見るものだよね、檻の中狭いからちゃんと寝れないよ」
 最近は大きさが合わないんだよな…
「もう中学生になるもんなぁ…」
 中学生…?
「中学生って何?」
「この世界には学校ってのがあってな。子供が通ってお勉強するんよ。でも私等は出生届が出とらんし戸籍なんてあらへんから通えんけどなぁ」
 出生届に戸籍…それがあったらその学校に通えるのかな?
「そか…なぁ千華」
「ん?どうしたの?」
「お姉ちゃんと一個約束してほしいんよ」
 約束…守らないと駄目なもの…だよね。お姉ちゃんが言うなら
「良いよ!何?」
「千華は男の子みたいに生きんさい」
「男の子?」
 お兄ちゃんみたいにって事かな?でも私は女の子なんだよね…?なんでだろ
「千華ももう色々わかるようになりはったと思うけどね、女の子は弱いんよ、力では敵わんし食い物にされる。男の子みたいでも構わん、ただ強く生きてほしいんよ。生きて…堪えて…いつかこの檻から抜け出して幸せになってほしいんよ」
 強く…幸せに…男の子みたいになったらここから出れるのかな?よくわかんないけど…それがお姉ちゃんとの約束なんだよね
「わかった。じゃあ…私…俺、お兄ちゃんみたいになる!強くなってお兄ちゃんみたいにカッコよくなってお姉ちゃんを守るよ!」
 泣きそうに微笑んだお姉ちゃんは私の頭を撫でてくれた。私は12歳になって、お姉ちゃんは18歳の冬だった
 聞けば良かったのかもしれない…涙を堪えるような目をした理由を

「一華…もう時間が…」
「そんな顔せんで?お父さんが決めたならどうしようもあらへんよ…千華を連れて逃げる力なんて私等にはあらへんわ」
「でも…せめてもう少し…」
「春也、千華を任せたで?多分…あの子のタイムリミットも私と同じ18前後やわ…売られたらもう帰ってこれん。マトモな人に辿り着くかもわからん。アンタがちゃんと助け出してやりぃ」
「いつか…一華の事も助けるから…」

 冬の寒さで足が凍えそうになる。でも…確か今日はお仕事だよな…前に来てから日数的にも…笑わないと
「今日は…殴ってくるお客さんじゃないといいな」
 玄関から音がする…お父さんが来たんだ…
「無名出ろ」
 お酒の…匂い…今日は特に…怒らせたら駄目だ…
「待ってや」
「あ?」
「お姉ちゃん…!?」
 なんで…勝手に檻を出た事がバレたら…お酒の入ってるお父さんじゃ危ない…!
「今日のお客さんあの人なんやろ?その子じゃ荷が重いわ。商品に傷がついたら治すのに時間かかってまうし私が行くわ」
「お前が口を挟むな」
 お姉ちゃん…何して…
「今まで相手しとったんも私よ。それに…」
 お姉ちゃんが何かお父さんに耳打ちしたあと…私は手を離された。お姉ちゃんがお父さんに連れられて歩いていく
「お姉ちゃん!」
「…約束…忘れんでな」
 震えた手が頭を撫でてくれた…止めないとなのに…止めたほうが良い気がするのに…お父さんに殴られるのが怖くて私はただその温もりに力が抜けた
 お姉ちゃんは…笑ってた

 長い時間…玄関に座り込んでた気がする。でも…きっと数秒…扉が閉まってお兄ちゃんが私を連れて部屋に戻ってくれた
「千華、大丈夫か?」
「なんで…今日…私のお仕事の日…なんでお姉ちゃんが行ったの…?」
「…今日の客ってな、前々から千華を呼ぼうとしてたんだ、中学生に欲情するゴミだよ。一華はもう年齢的に…だけどまぁ…加虐趣味があるやつで…」
「加虐…趣味?」
 また…初めて聞く言葉…私はまだまだ知らない事が多すぎるな
「人を傷付けるのが…好きなやつ…だよ。一華がたまに酷い怪我して帰ってくるだろ。今日の客が原因でさ…」
 今日の…?なら…
「ならなんで!?なんでお姉ちゃんが行ったの!」
 お客さんが求めてたのは私なんだよね、?お姉ちゃんが行ったらどうなるの?大丈夫…なんだよね?
「千華を守りたいからさ、俺と一華が千華を守るから」
 私は…守られるだけ…なのかな?お姉ちゃん…帰ってくるよね…?

 二時間…?五時間…?いったいどれくらい経ったんだろう…お兄ちゃんと何を話してたかなんて思い出せない。扉が開く音がしてお兄ちゃんと部屋の外に出たら、そこにはお姉ちゃんがいた
 お姉ちゃん…だったものが…
「名無し、それ片付けとけ」
「あ…わかり…ました」
 あれは何…?違う…私はあれを知ってる。でも…知らない
 お父さんが投げ捨てた赤い何かは…確かに…お姉ちゃんだった。扉が閉まる…月明かりだけが入る暗い部屋で…この日私は縛られた
「お姉…ちゃん?ね…ねぇ?お姉ちゃん、」
「千華、部屋に戻れ」
「お姉ちゃん…お姉ちゃん!」
 お兄ちゃんに手を引かれて私は部屋に入れられた、出れない…扉が開かない…嘘だ…嘘だ嘘だ…そんなわけ…
「一華…ごめん…やっぱり…」
 【一華】…あぁ…そんな…やっぱり…私が行くべきだったんだ
 扉を隔てて二人の泣き声だけが響いていた。最後に見たお姉ちゃんの顔は全てを覚悟した人の精一杯の笑顔だった。泣き疲れて眠った私が目覚めた時…玄関にはお姉ちゃんもお兄ちゃんも居なかった
 檻の中にいたら…いつもみたいに話しかけてくれる気がして…ただ…凍えそうな寒い中…お姉ちゃんの声が聞きたくて、私は眠りについた
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