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第1章 転生して女の子になりました。(小学校1年生)
第2話 さよなら前世
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前世で私は普通の男子高校生をしていました。
容姿は普通、学力は中の下、運動神経もまずまずでクラスでは大体読書をしているぼっち。
更に家族仲も悪い。
酒癖の悪い父親に、仕事漬けで家に帰ってこない母親。
これがネグレクトか。そうぼんやりと思っていながら憂鬱に家へと帰る日々。
唯一の味方であった兄も大学の入学と同時に逃げてしまいました。
学校ではいじめの標的にされ何処にも安心出来る居場所はありません。
クラスで一度だけ話しかけてくれた女の子に片思いを抱いて、当然伝える事もなく終わるのだろうと思って生きていました。
まさか終わるのが、人生そのものだとは思っていませんでしたが。
ある日の帰り道、片思いを抱いている女の子が前を歩いていることに気付きました。
いつも誰かといる彼女が俯きながら一人で歩いていることが気になって、不審がられない位に様子を伺うことに。
だからこそ彼女の前から走ってくる妙な男に気付くことが出来たのでしょう。
男の手に光る金属のようなものが見えた瞬間、ただ無我夢中で走っていました。
そしてこれが私が"俺"であった最後の記憶。
最後に見たのは彼女が私を呆然と見ている姿。
不思議と痛みを感じませんでした。
だけれど、その代わりに心を覆い尽くしたのは。
好きな女の子を助けられたというただ自己満足の達成感と。
暗く染まっていく視界への疑い知れぬ安心感でした。
「――起きなさい」
夢、だったのだろうか。
また目を覚ませば下らない朝が訪れてただひたすらに耐えるだけの一日が始まるのではないか。
それならいっそ、このまま眠ったままでいたい。
「いや、ある意味もう眠ったままなんだけど」
聞き覚えが無い声が頭に響く。
先程まで重く動かなかった身体が軽く感じる。
これが夢か。
すごいな夢。
やるじゃないか夢。
「いいから起きなさい!」
「いってぇ!!」
頭をパチンと叩かれた俺が目を開けると目の前には真っ白な人のシルエットが浮いていた。
周りは真っ暗な空間、前には人の形をした白い何か。
遂に頭がおかしくなったのか?
「はいそこまで。話が進まないじゃない全く」
どうやら話しかけてきているのはこの白い何からしい。
「白い何かって、あなた神様に向かってそれはないんじゃない?」
「神様? あんたが?」
「ええ、人間界を観察し調節し、時には手助けをする、皆が拝む神様よ!」
……嘘くさいな。
「嘘ちゃうわい! 全く、この子は人を信用しないんだから」
「信用とは無縁の生活でしたからね。あと思考を読まないでください」
「思考を読んでるって分かってる時点で神様って認めて欲しいところだけど」
「仮にもあんたが神様だったとしても、俺にとってはどうでもいいですからね」
「ほえ?」
「俺は神様なんてもの、信じてませんから」
神頼みはもうやめた。
どれだけ大変な状況でも、神様の助けなんてなかったのだから。
「あなたには、転生してほしいの」
あれから何時間話しただろうか。
数え切れないだけの長い時間この神様と話していたのだ、もうこれが夢じゃないってことも分かってる。
それにこれまでの説明も受けた。
やはり俺はナイフに刺されて死んだらしい。
神様が三途の川へ向かおうとしていた俺の魂を捕まえてこの場に連れてきたと。
「転生って?」
「言葉通りよ、あなたにはまた同じ世界で生まれてほしいの」
……やっと開放されたんだ、もう休ませてくれよ。
ずっとしんどかった日常が終わりを告げたんだ、またあの日常に帰るなんて選択肢、俺は取るつもりはない。
「ごめん、言葉が足りなかったね。私はあなたの人生を見ていた。辛かった。だから、ね。次こそはちゃんとした、満足できる人生を送ってほしいの」
「無理ですよ。俺はどうせ変われません」
「ううん、あなたが本当に優しい人だって知ってるから。あ! それにそのまま転生なんてさせないよ!」
「……え?」
「次の人生が最高のものになるように、私が条件をしっかり見定めておくから!」
「いや、どういうことです?」
「だーかーらー! 次の人生は君が頑張らなくても、楽しくて嬉しくて最高な人生になるように私が頑張るってこと!」
「……どうしてそこまで」
「償いよ。あなたは私に何万回も祈ってくれたのに、それに応えられなかった私の償い。だからお願い。絶対にあなたを苦しめたりしないから」
だからいないって思ってたんだよ、神様なんて。
でもこれだけ俺のことを考えてくれる神様なら後一回だけ。
信じてもいいのかもしれない。
「分かりました! 分かりましたから! どうせこれ以上話しても平行線上ですし、転生しますよ」
「やった! それじゃあ早速いってみよう!」
「えっ!? もう?」
「うん」
「まだ心の準備が」
「いってみよー!」
いつの間にか目の前まで来ていた神様に頭を一撫でされ俺の意識は再び暗転する。
次に目が覚めるときは一体どんな景色が見えるのだろうか。
今度こそは、愛されたいな。
そんなことを思いながら、俺は最後に口を開いた。
「――ありがとう、神様」
こうして俺は、私になって。
私は新しい人生を歩き始めるのでした。
「全く世話が焼けるなぁ。……次会うときは、あなたの笑顔を見れたらいいな」
容姿は普通、学力は中の下、運動神経もまずまずでクラスでは大体読書をしているぼっち。
更に家族仲も悪い。
酒癖の悪い父親に、仕事漬けで家に帰ってこない母親。
これがネグレクトか。そうぼんやりと思っていながら憂鬱に家へと帰る日々。
唯一の味方であった兄も大学の入学と同時に逃げてしまいました。
学校ではいじめの標的にされ何処にも安心出来る居場所はありません。
クラスで一度だけ話しかけてくれた女の子に片思いを抱いて、当然伝える事もなく終わるのだろうと思って生きていました。
まさか終わるのが、人生そのものだとは思っていませんでしたが。
ある日の帰り道、片思いを抱いている女の子が前を歩いていることに気付きました。
いつも誰かといる彼女が俯きながら一人で歩いていることが気になって、不審がられない位に様子を伺うことに。
だからこそ彼女の前から走ってくる妙な男に気付くことが出来たのでしょう。
男の手に光る金属のようなものが見えた瞬間、ただ無我夢中で走っていました。
そしてこれが私が"俺"であった最後の記憶。
最後に見たのは彼女が私を呆然と見ている姿。
不思議と痛みを感じませんでした。
だけれど、その代わりに心を覆い尽くしたのは。
好きな女の子を助けられたというただ自己満足の達成感と。
暗く染まっていく視界への疑い知れぬ安心感でした。
「――起きなさい」
夢、だったのだろうか。
また目を覚ませば下らない朝が訪れてただひたすらに耐えるだけの一日が始まるのではないか。
それならいっそ、このまま眠ったままでいたい。
「いや、ある意味もう眠ったままなんだけど」
聞き覚えが無い声が頭に響く。
先程まで重く動かなかった身体が軽く感じる。
これが夢か。
すごいな夢。
やるじゃないか夢。
「いいから起きなさい!」
「いってぇ!!」
頭をパチンと叩かれた俺が目を開けると目の前には真っ白な人のシルエットが浮いていた。
周りは真っ暗な空間、前には人の形をした白い何か。
遂に頭がおかしくなったのか?
「はいそこまで。話が進まないじゃない全く」
どうやら話しかけてきているのはこの白い何からしい。
「白い何かって、あなた神様に向かってそれはないんじゃない?」
「神様? あんたが?」
「ええ、人間界を観察し調節し、時には手助けをする、皆が拝む神様よ!」
……嘘くさいな。
「嘘ちゃうわい! 全く、この子は人を信用しないんだから」
「信用とは無縁の生活でしたからね。あと思考を読まないでください」
「思考を読んでるって分かってる時点で神様って認めて欲しいところだけど」
「仮にもあんたが神様だったとしても、俺にとってはどうでもいいですからね」
「ほえ?」
「俺は神様なんてもの、信じてませんから」
神頼みはもうやめた。
どれだけ大変な状況でも、神様の助けなんてなかったのだから。
「あなたには、転生してほしいの」
あれから何時間話しただろうか。
数え切れないだけの長い時間この神様と話していたのだ、もうこれが夢じゃないってことも分かってる。
それにこれまでの説明も受けた。
やはり俺はナイフに刺されて死んだらしい。
神様が三途の川へ向かおうとしていた俺の魂を捕まえてこの場に連れてきたと。
「転生って?」
「言葉通りよ、あなたにはまた同じ世界で生まれてほしいの」
……やっと開放されたんだ、もう休ませてくれよ。
ずっとしんどかった日常が終わりを告げたんだ、またあの日常に帰るなんて選択肢、俺は取るつもりはない。
「ごめん、言葉が足りなかったね。私はあなたの人生を見ていた。辛かった。だから、ね。次こそはちゃんとした、満足できる人生を送ってほしいの」
「無理ですよ。俺はどうせ変われません」
「ううん、あなたが本当に優しい人だって知ってるから。あ! それにそのまま転生なんてさせないよ!」
「……え?」
「次の人生が最高のものになるように、私が条件をしっかり見定めておくから!」
「いや、どういうことです?」
「だーかーらー! 次の人生は君が頑張らなくても、楽しくて嬉しくて最高な人生になるように私が頑張るってこと!」
「……どうしてそこまで」
「償いよ。あなたは私に何万回も祈ってくれたのに、それに応えられなかった私の償い。だからお願い。絶対にあなたを苦しめたりしないから」
だからいないって思ってたんだよ、神様なんて。
でもこれだけ俺のことを考えてくれる神様なら後一回だけ。
信じてもいいのかもしれない。
「分かりました! 分かりましたから! どうせこれ以上話しても平行線上ですし、転生しますよ」
「やった! それじゃあ早速いってみよう!」
「えっ!? もう?」
「うん」
「まだ心の準備が」
「いってみよー!」
いつの間にか目の前まで来ていた神様に頭を一撫でされ俺の意識は再び暗転する。
次に目が覚めるときは一体どんな景色が見えるのだろうか。
今度こそは、愛されたいな。
そんなことを思いながら、俺は最後に口を開いた。
「――ありがとう、神様」
こうして俺は、私になって。
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