異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

文字の大きさ
1 / 104

不思議な花に導かれ

しおりを挟む
 目覚めると、そこは異世界でした。

 可憐な花々が咲く美しい泉のほとりには、可愛らしい小動物が集っています。

 大きな尻尾を振りながらリスのような動物が豊かに実った木の実を食べ、鮮やかな赤や黄色の小鳥たちは森の中を楽しそうに飛び、金毛の子虎のような美しい獣が泉の澄んだ水を美味しそうに飲んでいました。

 太陽の光が降り注ぐ、まるで南国のようなカラフルで明るい森の中で、私は茫然と佇んでいました。

 こんな近距離に、虎? 肉食獣? 
 でもまだ子犬くらいの大きさだから、可愛いとしか思えない。
 金色に輝くモフモフ…まるで神の遣いのように美しい。

 丸いモフ耳、太いあんよ、ふわふわした虎模様の毛並み。
 なでなでしたいな。
 そんな可愛い顔でつぶらな瞳で見つめられると、もふもふしたくてたまらなくなってしまう~。
 
 はっ!
 可愛いベイビーに夢中になってる場合じゃない。

 なんで私、ここに居るんだっけ…?
 
 昨夜の記憶を辿ってみると…。
 

 
 確か、社畜OLでアラサーの私は、連日の残業で疲れて、さらに会社内での人間関係にも疲れて、食事もまともに摂らずに一人暮らしのアパートに帰宅するなり、玄関でぶっ倒れていたのよね…。

 そして、いろいろ辛かったこととか思い出してたら意識が遠くなってきて、「私の人生って、あまり楽しい思い出が無かったなぁ…」って、目を瞑りしんみりと呟いた時、

「それじゃあ、わしがおまえに楽しい思い出をやろうかの?」って、頭の中に、おじいさんのような声が聞こえてきたんだった。

 目を開けると、ベランダで育てていたはずの植物の蔓が玄関までにょろにょろと伸びてきていて。
 蔓の先の大きな丸い葉っぱの上には、黄色い花びらのような服を着た5㎝ほどの小さなおじいさんが立っていて、真剣な顔でじっと私を見つめていた。

 ひと月前に、露店で偶然見かけた不思議な植物。支柱に蔓が何重にも巻き付き、黄色い大きな花を咲かせていた。とても甘くて良い匂いがして、なんとなく買ってしまったのだった。

 今、思えば、売っている人は、どこの国の民族衣装なのか不思議な模様のローブを着ていたし、顔を見せなかったし、他に売っている物も、初めて見る不思議な形の物ばかりだった。武器や装飾品、観葉植物など、なんでも屋という感じだった。

 もしかして、この小さなおじいさんは、あの黄色い花の妖精か精霊か何かなの? 

 …そんなバカな。私、相当疲れてる。こんな幻影を見てしまうなんて。
 
 きっと夢だろうと思った私は、小さなおじいさんに言ってみた。
「本当? 私ね、6歳くらいの子供になって、自然いっぱいの綺麗な空気の田舎でのんびり楽しく暮らしてみたい。もう都会は疲れたの」と、冗談のつもりで。

「了解じゃ!」

「へっ?」

 小さなおじいさんは右手に持っていた杖を優雅に振り、私は虹色の光に包まれた。
 暖かくて気持ちいい、繭の中にでも居るような夢見心地で。
 次第に視界が暗くなってゆき、私は眠りに落ちていった。


―――そして、現在に至る。


 木漏れ日が眩しい異世界の森の中。小鳥たちの美しいさえずりが響き渡っている。

「どうじゃ、いいところじゃろう?」
 えっへん!と胸を張って、笑顔で自信満々にのたまう小さなおじいさん。
 
「おぬしの希望通り、6歳の可愛い女の子にしてやったぞい」

 そう言われて自分の手を見てみると、小さなつるすべ肌の子供の手だ。

「可愛いっていうのは、言ってなかったけど…」

「オプションじゃ♪」

「それはどうも。…で、元の私は?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

処理中です...