異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

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ダンジョン1階

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 ダンジョンは石で出来た古城のようだった。
 壁や通路は、同じ大きさの石が綺麗に並べられ、無数に浮かぶ小さな炎が城内を照らしていた。

 重厚なドアを押し開け部屋に入ると、宝箱がいくつも置いてある。
 木製の綺麗な箱で、金の飾りが輝いていた。

「カイル。ダンジョンを攻略するのに、この箱を開けたほうがいいの?」
「う~ん…。こういう状況だと、開ける参加者は多いと思うけど…。なんか怖いよね?」
「開けたら、白い煙が出てきて…とか?」
「かも?」

 私とカイルがどうしようか悩んでいると、後から部屋に入ってきた参加者が躊躇なく宝箱を開けた。

「やった~! ポンポコ商店街の割引券だぁ~!」

 えっ? 森の中にある、このへん唯一の小型商店街の割引券が!?

 思わず詳細を尋ねてしまう。
「何割引きになるんですか?!」
「50%OFFだよ! 半額券!」
「え~~~っ!!」

 ポンポコ商店街で50%OFFになる割引券!
 ポンポココロッケも半額になっちゃうのね! ←ルカの小さな野望。
 レオンさんが欲しがってた車も半額に!

「カイル! 私たちが躊躇してる間に、商店街の半額券をもらい損ねてしまったわ!」
「まさかダンジョンの宝箱に、商店街の割引券が入ってるなんて思わなかったよ!」

「やっぱり、森の泉のダンジョンは普通ではなかったのよ」
「そのようだね」

 やっぱり宝箱を開けたほうがいいのかしら?

 その時、
「うぁ~~~…」という、気の抜けた声が聞こえた。

 振り向くと、全身マッサージチェアを宝箱から見つけた参加者が早速使っていた!
「全身ほぐれて気持ち良い~~。眠っちゃいそうだ~…」
 至福の表情で全身揉まれている。

「カイル!全身マッサージチェアをもらいそこねちゃったわ!」
「いや~。これはもらっても、パパとママもまだ若いし、僕たちも子供だから使わないんじゃない?」
「そう言われたら、そうね」

 石橋を叩いて渡るタイプのカイルは、まだ宝箱を開けようとはしなかった。

 他の参加者たちは次々と宝箱を開けてゆく。
「やった~!宝箱に薬草が入ってた!」

「回復の薬草ですか?」
 なんとなく気になってルカが尋ねてみると、

「いや。神経性胃炎に効くって書いてある」
 ダンジョン内で使う機会があるだろうか。微妙だ。


「ポンポコ温泉ご宿泊1泊2日券!」
「高級焼肉食べ放題券!」
 高額商品券を宝箱から見つけていく参加者たち。
 ルカも宝箱を開けたくなってきてしまった。
 
 そのとき、
「うわ~~っ!」
 宝箱を開けると手が伸びてきて箱の中へと参加者を誘った。
 箱の中にはダンジョンの外へと続くウォータースライダーが設置されており、乗せられてしまった参加者の叫び声だった。1度外に出ると戻れないルールなので、彼はダンジョン脱落となる。

「宝箱には、当たりはずれがあるんだ。やっぱり開けなくてよかったんだよ!」
「そうだね、カイル!」

 カイルの冷静で無欲なところがカッコイイと思ったルカだった。
 ふたりは2階への階段を探すため駆けだした。
 
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