魔物の森に捨てられた侯爵令嬢の、その後。

松石 愛弓

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 オウムさんと毎日、旅をした。

 国内の名所と呼ばれる建物や景色を巡る。

 いつもオウムさんは優しかったし、私の話を何でも聞いてくれた。

 そんな旅が10日を過ぎる頃には、オウムさんとずっと離れたくないと思うようになっていた。



 ある夜。

 ひなびた洋館の真っ暗な寝室で眠っていると、夢の中に両親が現れた。

 いつか見た光景が、繰り返される。


 
 深い溜息をつきながら、お母様は言った。

『ルナリス。先日の試験の結果、満点ではなかったのね。未来の王太子妃が2位だなんて、恥ずかしくないの? 王太子妃になるのなら、誰よりも優秀であるべきでしょう? 努力が足りないのよ。こんなことでは王家に顔向けできないわ。次の試験では、必ず1位を取るのですよ』


 腕組みして、怒りながらお父様は言った。

『婚約破棄されるなんて、おまえにも原因があったのではないか? 長年、婚約していた王子様の心も掴めないのか、出来損ないめ』




 お父様、お母様、酷いわ。

 私は寝る間も惜しんで一生懸命努力していたのです。

 でも……お父様やお母様から見れば、私など、厄介者の出来損ないなのですね。

 私は……何の価値も無いのですね……。




 フラッシュバックに苦しむ私は、うなされていたようだ。

 ソファで寝ていたはずのオウムさんが、クチバシでつついて起こしてくれた。

「ルナリス、大丈夫?」

 心配そうに私を見つめるオウムさん。

「ツライノ? 元気ニナッテ?」

 私の頭を、オウムさんが大きな羽で優しく撫でてくれる。


 こんなふうに、慰められたことなんてなかったな……。

 おとなしく真面目にしてても、いつも両親に責められ、叱られ、プレッシャーを与えられ……。

 何でも出来て当たり前、出来なければ貶される。どんなに頑張っても、褒めてもらえることは無い。

 私の心を甘やかしてくれる人なんて、いなかった。



「……オウムさん。この旅が終わっても、ずっとそばにいて?」

 弱気な私の声を、心配するオウムさん。

「ルナリスが望ムナラ……ズット、一緒ニ居ルヨ。ルナリスヲ抱キシメテ慰メタイヨ」

「じゃあ、抱きしめて?」

「イイノ?」

「うん」

 おずおずとオウムさんは私のベッドの布団の中に入ってくると、私の上に乗り、翼を広げて抱きしめた。

 鼻をかすめる羽毛がくすぐったい。

「ルナリス。僕ガ悪夢カラ君ヲ守ルカラ。安心シテ眠ッテ」

 オウムさんにこんなに心配させるなんて、私って、どんだけ……。

「ありがとう……オウムさん」



『僕ガ守ルカラ』

 その言葉の優しい響きに心を救われ、私は久し振りにぐっすり眠ることができた。




 翌朝。

 窓のカーテンを開けると眼下に、青い海が太陽の光を浴びてキラキラ輝く景色が広がっていた。

「ルナリス! 今日ハ、クルル山ノ展望台ニ行コウ!」

 元気なオウムさんの声が、私に元気をくれる。


 洋館で簡単な朝食を食べて、クルル山頂上近くの展望台へ向かうと、

 そこはカップルの名所だったらしく、カップルがいっぱい。


「私たち、場違いだったみたいね~」

 オウムさんが歩いていたはずの右側を見ると、そこには銀髪の美しい青年が立っていた。

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