もふもふの銀猫は公爵令嬢に恋をする

松石 愛弓

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想いを伝え合って  サファーロ視点

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 翌朝。
 空は曇っているが、雨は降りそうにない。
 町の人たちに、白竜の情報を聞き込みにまわる。

「すみません。このあたりで白竜を見ませんでしたか?」

「白竜なら、たまに見るよ。上空を飛んでいて、とても大きくて綺麗な竜だよ!」
 八百屋のおばさんが愛想良く答えてくれた。

「白竜の住む谷って、どこにあるか分かりますか?」
「竜の住処までは分からないねぇ…」

「そうですか…。ありがとう。この果物を4つ買います」
 リンゴのような赤い実を指さした。

「これ、今が食べごろで美味しいんだよ~。1個おまけしてあげるね」
「ありがとう」

 果物をアイテムボックスに入れて、道行く人にも手分けして聞いてみる。
 数時間いろんな人に聞いてまわったので、広場のベンチで休憩することにした。

 さっき八百屋で買った果物を皆に配る。おまけはモーリスにあげた。
 乾いた喉に、瑞々しく甘い果物は最高だ。

「どうだった?」
 僕が訊くと、モーリスが答えた。

「この町のほとんどの人が白竜を見ています。このあたりで数日待てば、白竜を見れる可能性は高い。しかし、白竜の住む谷について知ってる人はいませんでした」

「私たちも同じ意見です」シャルルがつぶやく。

「こんな曇り空では、もし白竜が上空で飛んでいても見つけられませんね」
 モーリスが空を仰いだ。

「では、晴天の日に白竜が飛んでいたら尾行しようか。住処に辿りつくまで」

 僕が提案すると、心配するシャルル。
「竜を尾行するなんて…怒らせて攻撃でもされたら危険ですわ!」

「では、透明人間になって空を飛ぶよ」
「サファーロ様! 俺も一緒に飛んで護衛します!」
「ありがとう、モーリス」

 シャルルはまだ、心配そうだ。

「では、今日はこれで解散にしよう。昨日も大変だったし、たまには休みもしないと。
 モーリス。エミリーさんとデートしてくるといい。夕方六時ごろには湖のほとりの家に帰ってくるんだよ」

「えっ。いいんですか? エミリー、行こう!」
「サファーロ様! お嬢様のこと、よろしくお願いしますね。行ってきます!」
 ふたりは仲良く手をつないで歩いていった。

 シャルルが頬を染めて、僕を見つめている。
 昨夜、僕の背中に手を回して、抱きしめてきたシャルル。
 僕は少し、自惚れてもいいだろうか…?

「もうすぐ白竜も見つかりそうだし、もし宝玉が見つかり、おばあさまに届けたら、その後シャルルはどうするのですか? 公爵家に戻って、新たな縁談を受けるのですか?」

 そうだと言われたら、身を引くしかない…。

「いいえ…。私は公爵家には戻らず、修道院へ入るつもりです」

 想像もしていなかった返事に、僕は驚く。
「…なぜです?」

「私は、サファーロが好き…。貴方が爵位の差を気にして私から離れていくのなら、貴方以外の人に嫁ぐくらいなら、修道女になったほうがましです!」

 シャルルの瞳から、真珠のような涙が零れる。

 彼女がそれほど僕を想ってくれていたなんて…!
 僕の胸は、感動で熱く燃えた。

「修道院へ行くくらいなら、僕と駆け落ちしてください! いつか陞爵してもらえるような手柄をあげて、貴女と夫婦になれるように頑張りますから。それまで、僕の傍で婚約者として待っていただけませんか? 
 公爵家ほどの暮らしではなくても、不自由はさせません! 狐の和み亭のサイコロステーキだって食べ飽きるほどごちそうします。あなたの望むことは何でも叶えるように努力しますから!」

「本当ですか?! 俺たちも是非、ご相伴に預かりたいです!!」
 デートに行ったはずのモーリスとエミリーが、僕らの座っていたベンチの後ろから現れた!

「また覗いていたのか!」

 早速、モーリスはシャルルに説得を始めた。
「サファーロ様は心の優しい良い人です。駆け落ちしたって、きっとシャルル様を幸せにしてくれます! 
 それに! 今、OKすれば、皆で狐の和み亭のサイコロステーキが食べ放題なんですよ!!」

 いつの間に、そんな話になってるんだ!!

「私、サファーロと駆け落ちします!」

「えぇっ!?」
 サイコロステーキ効果?!

「「やったぁ~~~♪」」
 踊りだすモーリス&エミリー。そんなに食べたかったのか!

「サファーロ様、おめでとうございます! では邪魔者は退散しますので、あとは若い二人でごゆっくり♪」
 仲人のような口ぶりで、モーリスとエミリーは仲良くどこかへ消えた。

「私、サイコロステーキに釣られたわけじゃありません。サファーロがこれからも私の傍にいてくれることが嬉しくて…」

「泣かないで…」
 シャルルの涙をハンカチでそっと拭う。
 
「これから、もっとシャルルを幸せに出来るように頑張るよ」
 やさしく抱き寄せると、安心したように体を預けてくるシャルル。

「あなたが傍に居てくれたら、それだけで充分幸せです…」

「シャルル…」
 
 今夜、僕はもふもふの銀猫になって、きみに存分にもふられるかもしれない。
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