動物たちの昼下がり

松石 愛弓

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暖かなプレゼント

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 子熊ちゃんが散歩していると、
「ひったくりだ~! 捕まえてくれ~!」
 と、叫び声が聞こえてきました。

 子熊ちゃんが振り向くと、サングラスと帽子とマスクをした怪しさ満載のハイエナさんがカバンを抱えて走ってくるのが見えました。

「子熊キック!」
「うわぁ!」
 子熊ちゃんの飛び蹴りをくらったハイエナさんは後ろに吹っ飛び、追いかけてきた騎士団に取り押さえられました。

 騎士団の後ろから、白ヤギのおじさんが走ってきました。
「子熊ちゃん、捕まえてくれてありがとう!」
 白ヤギおじさんは子熊ちゃんの手を握り、感涙しています。

「このカバンですよね? お返ししますね」
「おお! まさしくこのカバンじゃ! もうわしの手には戻ってこないかと…」

 子熊ちゃんが白ヤギおじさんの背中をさすってあげていると、騎士団のひとりがおじさんに尋ねました。
「カバンには、何が入っていたのですか?」
「カバンには…妻の手編みのももひきが…。お花のアップリケも付いていて、とっても可愛いくてお気に入りのももひきなんです…」
 白ヤギおじさんは、ももひきを大事そうに握りしめながら言いました。

 そこへ、不思議の森新聞の記者たちがやってきました。
「犯人にお聞きします! 白ヤギおじさんの愛用ももひきを一体どうするつもりだったのですか?!」
「使用目的は?!」

 パシャッ! パシャッ! とカメラのフラッシュをたかれ、思わず顔を隠すハイエナさん。
「ももひきなんて知らなかったんだよ! 銀行から出てきたから大金が入ってるとばかり…」
 とっても恥ずかしそうです。

「うっかり白ヤギおじさんの愛用ももひきを盗む! よし、明日の1面はこれでいこう!」
 不思議の森新聞の記者たちは意気揚々と社に向かって歩いてゆきます。

「なんでだよ! 他に新聞の1面に載せるニュースがあるだろ? あるはずだ、普通!」
 ハイエナさんは新聞の1面を、自分の顔写真付きのももひき泥棒の記事で飾りたくないようです。

「最近、不思議の森は平和で載せる記事がなくて困っていたんだよ。他のページも埋めたいから10ページくらいの特集記事になると思うよ♪」
「特集組まなくていいから~!」

 叫ぶハイエナさんが連行されたあと、白ヤギおじさんは子熊ちゃんに『年中たくさんの実が成る木の苗』と『消えない炎が入った永遠に温かいカイロ』をくれました。

「冬の間、この実を食べて、カイロで温まっておくれ。カイロの中の消えない炎を暖炉に置くと、ずっと部屋が暖かいよ」
「おじさん、ありがとう! 冬は寒くて木の実が採れないから助かるよ」

 子熊ちゃんはお母さんに、白ヤギおじさんからのプレゼントを渡しました。
 子熊ちゃんのお母さんは感動して、白ヤギおじさんに手編みのももひきをプレゼントしました。
 白ヤギおじさんも暖かい冬を過ごせそうです♪















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読んでくださった全ての方に、感謝いたします。ありがとうございました。
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